国民連合とは月刊「日本の進路」地方議員版討論の広場 集会案内 出版物案内トップ


自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版18号(2003年2月発行)

地方制度調査会「西尾私案」の再考を求める
意見書全会一致で採択!

長野県南信濃村議会議員 佐藤光弘


 昨年11月1日付の「西尾私案」は全国の小規模町村に少なからぬ衝撃を与えた。住民の自主的判断に基づく市町村合併論議の最中、いきなり強権発動による強制的合併論が前面に出てきたからである。これは正に地方自治・住民自治の原則を踏みにじる小規模町村の切り捨てである。
 「段階補正の見直し」による地方交付税の大幅減額により、どうすればこの財政問題を克服できるかが最大の焦点となっている今この時に、それに追い討ちをかける形での小規模町村切り捨て論は、住民自治の原点までをも奪ってしまい断じて許されるべきものではない。
 この3月には地方制度調査会の中間報告がなされることになっている。「西尾私案」の内容のままに報告がなされ、それがそのまま国の方針になってしまってはえらいことになる、その前に末端の小規模町村議会として何らかの意思表示をするべきとの考え方から、昨年12月12日、「西尾私案」の再考を求める意見書案を議会に提出した。事前に全員協議会において意見書案提出の意向を伝えていたこともあり、「高度経済成長は、過疎と高齢化・環境破壊を招いた。地域文化を育て守る、環境を守り山を守る小規模町村に人口規模のみによらず面積をも考慮に入れた理解を望む」とする他議員の賛成討論もあって、本意見書は全会一致で採択された。
 当たり前のこととはいえ、この意見書採択は長野県下での口火を切ることになった。その後、郡議長会・県議長会をも動かし、県内各地の町村議会でも同様の意見書が数多く採択されることとなった。もっと踏み込んだものとしては、「聖域なき構造改革」と銘打って進める政府の施策は、要するに地方への負担転嫁にすぎない、もっと国自身が身を削る努力をせよ、という泰阜村議会の意見書も出てきた。「国民に見えるかたちでの改革をするべきであり、その上で地方にも痛みを分かち合えというべきである」。
 自主財源に乏しい当村では、残念ながら議会が全会一致で「合併しない宣言」をする状況にはない。数年後には確実に赤字に転落するという行政予測の中で、いかにしてこの財政難を克服していくかが最大の課題である。想定される一郡一市の合併も、財政的にも住民自治の観点から見ても、寄らば大樹の陰という幻想でしかないとすればなおさらのことである。


地方制度調査会「西尾私案」の再考を求める意見書

  平成14年12月12日


内閣総理大臣     小泉純一郎 様
総務大臣       片山虎之助 様
地方制度調査会会長  諸井 虔  様
地方制度調査会副会長 西尾 勝  様

                       長野県南信濃村議会議長 後藤修三

地方自治法第99条の規定により、下記のとおり意見書を提出する。

                    記

 11月1日付の地方制度調査会西尾勝副会長による「今後の基礎的自治体のあり方について」と題するいわゆる「西尾私案」は、合併特例法期限までに合併できなかった地域については、強力に合併を推進し目指すべき基礎的自治体への再編を図る、それでも再編成できない小規模団体については更に一定の条件のもとに強制的に合併を推進するか、窓口サービス等に限定した謂わば有名無実の状態での旧町村の存続を図るという内容になっている。
 この「西尾私案」の問題なところは、従来の住民の自主的判断による合併推進という建前から、強権発動による強制的合併へ移行せんとする意図・本音が見えてきたところにある。数字では明記されていないが、自民党の地方自治に関する検討プロジェクトチームの中間報告をも勘案すると、最低人口規模は1万人と考えているものと窺われ、中山間地域の小規模町村を問答無用と切り捨て強引に会併させようとするものである。これは、合併を否定するものではないが、合併せずに何とか自立の道を探ろうとする小規模町村の自主的・主体的意思を阻害するばかりでなく、地方自治行政の基本原則を根本から覆し、地方自治・住民自治の原則を容赦なく踏みにじるものである。
 そこで、特に下記事項に留意され、「西尾私案」の再考を求めるものである。

1.人口規模のみをもって合併最低ラインを設定するのではなく、中山間地域の果たしている役割を重視し、その特殊な地理的立地条件をも鑑み、中山間地域小規模町村の自立の道を考慮すること。

2.小規模町村の過疎と衰退に拍車をかける強制的な合併推進は、地方自治行政の基本原則を根本から覆すものゆえ排除すること。

3.合併は、強制によってではなく、あくまでも住民の自主的判断によるべきであり、地方自治・住民自治の原則はどこまでも貫くべきであること。