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『日本の進路』地方議員版15号(2002年5月発行)
法定合併協議会設置までのシナリオ
静岡市は人口約47万人の中核市です。1889年に市制施行以来、10回にわたる編入合併を繰り返し、市域面積は1,146kuといわき市に次ぐ全国第2位となっています。ただし、南アルプスを含む広大の中山間地域が面積の93%をしめます。従って大企業は進出せず、小売商業中心の県庁所在市です。
一方、清水市は人口約24万人の特例市です。港湾都市として発展し、重工業も立地をし、1924年の市制施行以降、周辺町村との合併を行い、現在市域面積は227kuです。
両市の合併話は50年代より何回となく起きその都度立ち消えとなりました。今回は95年合併特例法改正により創設された合併協議会設置にむけた住民の発議制度を契機に動きだしました。立役者は全国お馴染みの清水市“JC”です。
98年4月、法定合併協が設置され、両市職員、議員、市長推薦の8分野(地域、女性、福祉等)の学識経験者に県職員2名の総勢39人で船出をしました。
「平成の大合併」のルールの上を走って
静清合併の推進論者はきまって「両市の合併は政府の進める『平成の大合併』とは違い、自主合併だ」と主張します。
ところが、4年の協議を振り返ってみると、国の誘導策にピタリと照準をあわせたスキム通りの進展でした。99年の地方分権一括法(合併特例債の創設、合併算定替の期間延長)に始まり、00年は森内閣の下、11月に旧自治省合併推進本部が「指針」を示し、合併の数値目標を3,200を1,000にすると明示しました。昨年3月にさらにバージョンアップされた「新指針」が出され、小泉内閣になると「骨太の方針」に市町村合併推進と市町村の再編が盛り込まれました。
静清合併に弾みがついたのは、8月30日の政令市人口要件緩和(100万政令市から70万でも可)の入った「合併支援プラン」が総務省より発表されたことによります。「救済=吸収合併」の立場に立つ静岡市と「対等合併」の立場を主張する清水市との表面上の緊張緩和の始まりでした。
お定まりの新市建設計画
合併特例法に基づく財政上の特例措置や支援策が受けられる「新市建設計画」(合併後10年間の事業計画)は79事業、5,582億円の事業規模です。事業日の95%が充当され、かつ後年度70%が地方交付税で手当てされる合併特例債の適用事業が400億円見込まれているので、新庁舎やオペラハウス、合併記念公園といったハコモノ建設計画が乱立しているのが特徴です。
中心は、両市の中間(国鉄清算事業団から購入した6.8ha)に「中核経済圏の確立」を目指した新しい都市核を形成しようとする旧来パターンの新拠点重点投資です。この地区に合併新市の新庁舎も計画されています。
問題は合併推進のための財政措置は期間が限られています。多くの措置期間は3年から10年、一番長い「合併算定替」も11年目から15年目迄の激変緩和措置後は確実になくなります。総務省の合併財政メリット論は措置期間内の殺邦的な快楽主義を奨励しているにすぎません。
新市名「静岡市」誕生のカラクリ
合併の方式・期日・事務所の措置、財産の取り扱い、議員や農業委員会の委員の任期の最長特例延長が早い段階に決着したにもかかわらず、最終段階までもつれたのが「新市」の名称と事業税(30万以上の市に適用)の2つです。
何回かの合併協で両市の委員が激怒し相手方を罵倒する場面も生じました。対等合併とは名ばかり、実質、吸収=屈辱合併の本質が表面化し、すわ御破算の様相も呈しました。
ここで頭角を表したのが県です。石川静岡県知事は総務省出身、片山総務相とは上司部下の間柄、おまけに親類筋という深い縁、合併協2人の県職員に対する「天の一声」でわずか2票差で「静岡市」に決定という日本的官僚的政治決着をみせたのです。
頭に来たのは清水側委員、事業所税では譲らず、年間15億円の新規課税分を最長6年間課税免除を適用させてしまいました。すると「静岡市」名は90億円の価値というのでしょうか。市民がシラケルのはこういうことです。
市民合意は形成できずシラケムード
静清合併は情報の完全公開と多様な市民参加が推進側のうたい文句でした。合併協の傍聴、議事録はHPへ、タウンミーティング、終盤では両市46地区へ両市長と合併協委員が出席し、「新市建設計画」の地区説明会を開催、完ペキと胸を張るが、内実は旧来型の「聞き置く」形式の枠組みを出ていません。
本年1月には「静清合併の是非を住民投票で」という条例制定を求める直接請求が静岡市で2団体7万人、清水市で1団体3万人の署名をもって両議会にかけられました。
両市長共「すべきでない」、(静岡)「必要ない」(清水)、議会もこれを認める態度で、住民投票の実施には至りませんでした。
昨年末には「合併NO !静岡の会」が形成され、2月17日には、300名余で屋外市民集会を開催し、中心部でデモを行いました。中心になった中央商店街の商店主らはその後も商店街に「静清合併反対」の昇り旗を立ててアピールをしました。
しかし、合併協主導と推進のムード作りの中、3月20日、第29回合併協で賛成36、反対3「大方の賛同」(静清合併協の独自の決定手法)をもって、合併協における「合併すべき」が決定されました。
これを受けた4月18日の両市臨時議会最終日。静岡側反対8人、清水側同5人で賛成多数で合併の最終判断は下されたのです。傍聴者は50人、清水30人程度でした。直前のマスコミアンケートで「合併反対」7割、「合併期日を知らない」6割です。議会と民意の大きなズレが生じています。
70万政令市めざして混乱深まる今後
私は7点の理由を上げ「合併しない」選択を訴えました(45議員中、唯一人3年前の選挙戦で「合併反対」を公約した特権でもあります)。 (1)都市ビジョンの無い合併。合併は時代の遅れの都市論である (2)国、県主導の「平成の大合併」そのもの (3)今後の市財政悪化が確実 (4)政令指定都市の甘い幻想 (5)市民合意は形成できていない (6)合併は地方自治に逆行 (7)議員の在任特例は市民の選挙権・立候補権の侵害、原則通り市長選と同時に選挙を実施すべし、との内容です。
来年4月1日の合併日にむけて動きはじめました。困難、危惧は山積みです。1つは合併準備経費が定まっていません。住民基本台帳等電算システムです。静岡はNTT、清水はNEC、この統一だけで数十億円といいます。国保料、ごみ、上下水道等すりあわせが必要な事務事業の一元化項目2130、合併時統一が782項目、これをどう統一するのか。
次にまずは、中核市と特例市の合併=中核市、2年後05年4月1日の政令市を目指す合併ですが、政令市制度については議論も討論も行われずに「現行都市制度において最大の権能と財政力を持つ」を念仏のように唱えながら目標にしてきました。これからが正念場、悩ましい日々が待ち受けています。
「合併NO!静岡の会」は「議員任期延長取り消し」訴訟と8月「合併反対」市長選を準備中です。
*私の議案質疑及び討論は、静岡市議会HP
(http://www.city.shizuoka.shizuoka.jp/city/gikai/gikai.htm)でご覧下さい。