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『日本の進路』地方議員版13号(2001年11月発行)
介護保険がスタートして1年半になります。佐原市というローカルな自治体の実態から5点にわたって報告と問題提起をします。
財政的に大きな負担
第1点は、財政についてです。佐原市の平成13年度の一般会計予算は、137億円です。その構成比は、民生費24.6%、衛生費13.3%、土木費12.9%、教育費12.6%、総務費12.1%等々となっております。つまり、福祉関連の予算が全予算の約4分の1を占めております。何故このような予算構成になっているのかという事ですけれども、ローカル都市であるが故にこれまで民間の福祉が育ってきませんでした。したがって、福祉施策の多くは行政が直接担わざるを得ないわけです。ホームヘルプも社協へ委託されましたが、事実上は直営と変わりません。2カ所のデイサービスも直営です。児童福祉でいえば、5万都市で公立保育所が10カ所あります。2つある知的障害者の福祉作業所も直営です。そして、福祉施策等を実施すれば、必ずといっていいほど超過負担の問題が出てきます。例えば、2カ所のデイサービスの運営費は約1億7千万円ですけれども、利用料と保険給付費は7千万円で、1億円が市の負担となっています(配置されている職員の年齢構成にも原因はあるが)。また、国からの補助金や交付税の削減が一層進められようとしている中で、財政力の弱いローカル自治体での福祉施策の充実はますます困難になっているのではないかと思います。
利用状況が低い原因は何か
第2点は、介護保険の認定申請等についての状況です。佐原市は人口約5万人で65才以上の高齢者は約1万人、高齢化率では22.1%であります。介護保険では、要支援等の対象者を千人と見込んでおりましたけれども、3月末の認定申請者数は831人であり、自立判定者が33人、認定者数は798人であります。認定者のうち在宅介護サービスを受けている人は421人、施設入所が201人となっております。つまり、介護認定されながらサービスを利用していない人が176人もいるという事であり、実に介護認定を受けた人の22%がサービスを利用していないことになります。このように介護保険の利用状況は、非常に低い状況にあります。利用状況が低い原因について、よく『地域性』という事がいわれます。しかし、最大の原因は意識の問題であり、その意識はこれまでの福祉施策によって作られたものであると思います。これまでの福祉施策は、必ずといっていいほど所得制限があります。所得制限を設ける事によって、『福祉を世話になるのは所得の少ない人』、『福祉の世話になるのは恥ずかしい事』という意識が植えつけられた結果であると思います。いずれにしても、介護保険よって意識は変わりつつあると思いますが、この制度の利用をどう高めていくのかという事が一つの課題ではないかと考えております。
基盤整備をどう充実させるのか
第3点は、サービスの需要と基盤整備の状況であります。
在宅サ一ビスの利用状況でありますが、ホームヘルプでは計画上は週513回の派遣となっておりますが、272回の利用しかありません。また、デイサービス・デイケアは、週586人を見込んでおりましたけれども、整備状況は市直営の2カ所のデイサービスも含めて7カ所が設置され、週745人の受け入れが可能になっております。このように在宅サービスの場合は、一定程度のサービス基盤の整備は進んできているのではないかと感じておりますが、それでも各施設の状況はほぼ一杯という状況にあります。そして、問題なのは入所施設であります。介護保険の出発時点では施設等の待機者の存在は表に表れなくなってしまいました。それは、ケアプランは受けられるサービスを前提にして作られますから、不足している施設の状況が表に出なくなってしまったわけです。したがって、正確な数は把握できておりません。それでも佐原市では、特別養護老人ホームの待機者が22人もあります。全県では、6879人の特養待機者が存在しております。保険料が取られているにもかかわらず、サービスは受けられないということであり、保険制度の根幹にかかわる問題であると思います。したがって、基盤整備をどう充実させるのかという事が現実的な課題であると思います。
個々の困難ケースに具体的処遇方策の確立を
第4点は、保険料、利用料の問題であります。
低所得者に対する保険料を減免している市町村は、県内18市町ということでした。10区の市部では、成田、旭、八日市場、銚子で「生活保護基準に準ずる。又は以下の人」という事で、減免制度がありますけれど、佐原市はありません。
一般論としての低所得者に対する介護保険利用料の減免という事では理解できるわけですけれども、生活に困窮している方が10人いれば、その10人の状況はすべて違うわけであります。したがって、一般論としての減免では、生活に困窮している個々の高齢者を救済する事は困難なのではないかと考えるわけであります。その1例を申し上げます。この世帯の場合、大正生まれの母親と息子の二人暮しであり、息子は昨年までは就業しておりました。したがって、課税世帯であります。母親は要支援か要介護1だったと思います。そして、週1回のデイサービスとホームヘルプを利用しています。ところがその後、息子が借金を作って行方不明になってしまいました。したがって現在は、課税世帯でありながら本人の月額3万円に満たない年金で生活し、その中からディサービスとホームヘルプの利用料を負担しているという事であります。こういった方の場合、一般論としての低所得者に対する利用料の減免という事では救済できません。こういった個々のケース、困難ケースについて、健康状況、経済状況、家庭環境等を踏まえた具体的処遇方策の確立を行う場が必要ではないか。そして、個々の困難ケースについて、保険料や利用料の減免も含めてキチンと対応できる体制を確立する事が必要であると思います。
市町村で独自の横だしサ−ビス等も必要
第5点は、介護保険会計の現状についてです。
佐原市の場合、保険料は基準額が2307円であり、県下31市の中では30番目ですから他市との比較では決して高いほうではありません。そして、平成12年度の介護保険会計の総額は16億8500万円であり、そのうち保険給付費は15億3700万円です。ところが、実際に給付された金額は、9億6800万円であり、7億1700万円が未執行になっております。そして、この約7億円のうち9200万円が繰越金として13年度へ繰り越されております。いうまでもなく、この繰越金の圧倒的部分は1号被保険者の保険料です。介護保険の利用状況も高くないし、利用できる施設も少ないという中で保険料が余っているのが現状ではないかと思います。このような中で、現に保険料を払っている被保険者にこそ還元されるべきであり、市町村が独自の横だしサ−ビス等を実施する事も必要なのではないかと思います。