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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版13号(2001年11月発行)
合併に「ノー」を示した住民意向割査
福岡県遠賀郡4町(岡垣町・遠賀町・芦屋町・水巻町)の合併は、芦屋町が行った住民意向調査結果で合併反対が賛成を上回った。
住民意向調査の往復ハガキ郵送=12,841人
ハガキ回収=7,695人(回収率59,93%)
有効回答=7,609人
合併反対=4,187人(有効回答の55.03%)
合併賛成=2,031人(有効回答の26.69%)
どちらともいえない=1,391人(有効回答の18,28%)
芦屋町議会(定数18)でも6:11で合併を否決したことによって、事実上遠賀郡4町合併は立ち消えになった。
遠賀郡4町合併は1988年10月、4町議会が「遠賀郡の将来を考える調査委員会」でスタートしているが、当時そのような計画についてはほとんどの4町住民は知らない。当然、住民の要求に基づいて盛り上がった合併ではない。うわさでは県会議員や一部の町会議員が「国策に乗り遅れるな」と言って始まった4町合併構想だという。
バラ色の夢ばかり宣伝
合併問題が4町の住民に現実問題となったのは99年8月、合併を前提に任意協議会が設置された頃からであろう。
任意協議会が発行する広報誌は、地方分権や少子高齢化時代を迎え合併の必要性などを訴えるとともに、合併によるバラ色の構想が並べられていた。皮肉なもので、芦屋町民からは逆に「こんなバラ色の夢ばかりであるはずがない」という声もあった。
だが既にその頃、合併について4町の間に考え方の差が出ていた。芦屋町を除く3町はそれぞれのスタンスの違いはあるものの、4町合併について積極的であった。しかし、芦屋町は合併には始めから消極的だった。任意協議会参加についても芦屋町は意見が分かれ、芦屋町議会は「合併が良いか悪いかを判断するために」協議会へ参加している。
不便だが住みよい芦屋町
芦屋町が合併に消極的な理由の概要は次の通りである。
(1)恵まれた自然環境と歴史と文化を生かした個性のある町づくりには行政単位は小さい方が行き届く。
(2)芦屋競艇場がこれまで芦屋町の財政などに果たしてきた役割は大きく、芦屋町の基金は200億円近くもある(平成12年3月31日現在)。さらにこれまでの競艇場収益金によって下水道の普及率は99.9%。町立の病院など医療や福祉の面でも他町よりすすんでいる。
(3)他の3町は国道3号線や鹿児島本線の沿線にある。芦屋町は鹿児島本線から遠賀川沿いに約5q離れた海沿いに位置している。4町が合併すれば、市庁舎が置かれる中心地は当然鹿児島本線の沿線になり、今でも“陸の孤島”といわれている芦屋町の場末傾向にさらに拍車がかかる。
民主的な住民意向調査
すぐにでも法定協議会へ移行したい他の3町の中で芦屋町は、
(1)任意協議会後、芦屋町独自の遠賀郡4町合併特集号を全所帯に配布。
(2)町内3カ所で住民説明会を開催、さらに要望があれば諸団体の説明にも出向く。
(3)住民意向調査を行い、その調査結果を最大限尊重する。
ことになった。他の3町がほとんど議会議決により法定協議会へ移行しようとしている中で芦屋町は民主的な取り組みである。
積極的な反対運動
今年5月、合併に反対する芦屋町民11人で“芦屋町をなくさない実行委員会”がつくられ、
(1)学習会および「芦屋町をなくさない会」の発会式を行う。
(2)他2カ所で、町民との学習座談会の開催。
(3)合併反対の街頭宣伝や署名活動。
(4)町長や議長への申し入れ。
(5)町が主催する住民説明会に参加し、合併の問題点を訴える。
(6)住民意向調査に向けて、芦屋町全戸配布のチラシ入れ。
などの方針を決めた。
「芦屋町をなくさない会」の発会式“4町合併と芦屋町の将来を考える学習会”は、「余分に作っておこう」と印刷した100部の資料は全て会場で配布し終えた。翌日の新聞記事には、「合併推進の住民グル−プは多いが、反対のグループが結成された例は聞いたことがない」という総務省行政体制整備室のコメントが掲載されていた。
その後、街頭宣伝や署名活動。町が行う住民意向調査の回収率を上げるためのチラシの町内全戸配布。又、区長会・婦人会・老人金・町職労・漁協・商工会などの各種団体回りで(1)合併反対、(2)町主催の説明会への参加、(3)住宅意向調査の提出を訴えて回った。
小さいからこそ出来る町づくり
遠賀4町合併は住民の要望から出た合併ではなく、合併特例債などの借金を伴うアメ玉付きで国や県の強力な働きかけで進められた合併である。合併特例債による新しい市庁舎や道路などの公共事業は一部の事業者にはよだれの出るような話でも、負債と膨大なハコモノの維持管理費、10年後からの地方交付税の減額のツケは住民にハネ返ってくる。
遠賀郡4町合併は一応御破算になった。「芦屋町をなくさない会」は、これからは“個性ある町づくりの会”(仮称)に切り替え、小さいからこそ出来る町づくりに取り組み始めている。
これまでの基金を取り崩さなければやっていけない厳しい財政状況の中で、恵まれた自然環境を生かし、どのような個性ある町づくりをするか。
運動は今始まったばかりである。