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月刊『日本の進路』2005年2月号
世界的な米軍再編問題に関連して、キャンプ座間(神奈川県)への米陸軍第一軍団司令部移転が検討されている。相模原市の企画部渉外課の小林課長に、行政、市議会、市民が一体となった基地の整理縮小・返還運動の取り組みや移転問題についてお話を伺った(文責編集部)。
米軍基地の整理縮小・返還は市是
人口六十二万人の相模原市には現在、相模総合補給廠、キャンプ座間、米軍相模原住宅地区の三カ所の米軍基地・施設があります。この三カ所の基地が相模原市の面積の約五%を占め、様々な支障をきたしています。
市民生活の面では、最近は少なくなりましたが米軍人による事件・事故など。一九六〇年から六五年にかけて米軍機の墜落が三回発生しました。また米軍施設の中に有害物質が野ざらしにされていたり、河川に垂れ流しにされる環境汚染問題。最近では一件落着しましたが相模補給廠のPCB問題。さらにキャンプ座間のヘリポートから、相模補給廠や厚木基地に向かうヘリによる騒音の苦情が昨年夏頃から増えています。
基地による市街地の分断も深刻です。例えばキャンプ座間によって、地区が分断されて迂回交通を余儀なくされています。これは補給廠や相模原住宅でも同様です。補給廠は西側が一九四九年に追加接収され、南北の県道がなくなり、迂回せざるをえません。
また基地が市の計画的な街づくりの障害になっています。とくに相模総合補給廠は、市の玄関口の一つであるJR相模原駅の北側に位置し、中心市街地を形成していく上で大きな障害です。しかも北に隣接する町田市方面(東京都)からの小田急多摩線の相模原市内への乗り入れ構想がありますが、補給廠のために止まっています。
さらに、厚木基地(大和市、綾瀬市)の米軍機による騒音問題も深刻です。直線距離で五キロにある相模原市も飛行コースに入ります。厚木基地で夜間離着陸訓練(NLP)や、直前の集中訓練が行われれば、相模原の南部から中央部は相当の騒音被害です。とくに夏だと一日数十件の苦情が寄せられ、電話が鳴りっぱなしです。昼夜を問わず、低空で飛ぶため、騒音のみならず、墜落の恐怖など市民に耐え難い苦痛を与えています。市に年間八百件から千件近くの苦情が来ます。県内では平成十五年度で約五千五百件の苦情です。
相模原市は、相模原市米軍基地返還促進等市民協議会(行政、市議会、自治会などで構成)で、市民総ぐるみで長い間、基地の返還運動あるいは基地に起因する問題の解決に関する運動を進めてきました。基地の返還は市民の願い、市の重要な方針であり、市是です。長い間、政府や米軍に対して要請活動を行ってきました。
基地が現にある以上は、協力や交流は必要です。例えば、災害時の市の広域避難場所の一つとしてキャンプ座間や相模補給廠を指定しています。また昨年四月からは、消防車と救急車の緊急出動時には相模補給廠とキャンプ座間内を通過することができる体制になりました。市民レベルの親善交流も活発です。そういうことと、基地の整理縮小・返還問題は切り離して取り組んでいます。
司令部移転問題
昨年三月、米軍再編にからんで米ワシントン州にある米陸軍第一軍団司令部のキャンプ座間移転問題を新聞報道で知りました。さっそく県や座間市の職員と外務省などに事実確認に出向きましたが、何度確認しても「そういう話は出ていない」という返事です。
国から正式な情報がなく、われわれの情報源は新聞・テレビ・雑誌など以外にありません。現在のキャンプ座間は後方支援機能を果たしているわけですが、もし司令部が移転されれば基地の役割・機能は格段に強化されます。米陸軍第一軍団司令部はアジア太平洋地域だけでなく、中東やアフリカの一部までをターゲットにしているので、戦略的重要性が高まる、と専門家は指摘しています。基地の強化、永久基地化につながります。また米軍ヘリや車両が増え、訓練の増加など市民生活への影響も懸念されます。もし移転が事実とすれば、市民の神経を逆なでし、市の方針にも逆行するもので、到底容認できません。
そういう立場から市長が先頭になって、一貫して国や米国に対して強く申し入れてきました。座間市との連携で政府への事実確認、移転計画が事実なら絶対に容認できないことを繰り返し要請しています。市議会も八月に司令部移転反対の意見書を全会一致で決議しています。また、市の担当部局である渉外課が市のホームページでこの問題を取り上げています。市としての要請の内容、さらに昨年十一月からはEメール、手紙、電話などによる市民の声を「市民の意見」としてホームページに掲載しています。航空機騒音とからめた意見が多く、八〜九割は移転反対の意見です。さらに、市の明確な意思をアピールするために移転反対の横断幕を市内の主要駅と市庁舎に掲げています。
市民総ぐるみで反対
司令部移転など容認できません。今後も行政、市議会、市民総ぐるみで取り組みたい。米軍再編問題で三月頃に外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2+2)が開かれ、秋には日米政府が合意をめざすというスケジュールが報道されています。市としては当面、2+2の前に相模原市と座間市が連携して、移転反対の意思を再度政府にお伝えしようと考えています。
市民の中にこの問題が十分には浸透していないと感じています。市の広報紙でも三度取り上げていますが、スペースに限りがあり、不十分だと思っています。もっと啓発とPRに力を入れたい。市民運動サイドでは、二月十九日に司令部包囲の行動が企画されているようです。
神奈川県は、米空母を母港とする米軍横須賀基地、その艦載機の基地である厚木基地、相模補給廠、キャンプ座間、池子米軍住宅など米軍住宅…。沖縄に次ぐ米軍基地が集中しており、神奈川県の自治体にとって米軍基地問題は重要課題であり、基地の整理縮小、返還が基本方針です。県と九市による協議会があり、国に対する要請活動を定期的に行っています。
米軍再編をめぐって、「沖縄の基地の負担軽減」が言われています。沖縄は戦後、六十年間にわたる米軍基地の重圧があり、基地の軽減を私どもも願っています。だからといって相模原市がこれ以上の基地を受け入れるという話ではありません。沖縄ほどではないにせよ、相模原は戦前の旧陸軍施設から数えれば七十年間も軍事基地を抱えてきました。同様の痛みを抱えてきた自治体の方々も含めて、基地の整理縮小・返還は当然だと思います。米軍再編をめぐる「沖縄の基地の負担軽減」は、国内の基地の負担軽減・国外への移転を視野に入れた解決がされるべきだと考えています。 (談・文責編集部)
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