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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2002年10月号

中小企業を殺すな!
貸しはがしをやめろ!


 不良債権処理、銀行による貸し渋り・貸しはがし、信金信組の破たんなど小泉改革で、中小企業の営業は危機的な状況に追い込まれている。こうした政治に怒りが高まっている。九月三日、東京中央区の中小商工業者が、「景気振興アップ大会」を開催、予想をはるかにこえる千三百五十人が集会とデモに参加した。この大会を中心的に準備した経営者に話を聞いた。


本業黒字でも貸しはがし

 うちは創業数百年の老舗です。老舗は土地もっている。バブルの時代、地価が高騰し、もし親が死んだら相続税が払えない。相続税が払えなくて店をたたんだ所もでてきた。だから相続税や固定資産税の対策になると銀行にいわれ、借金してビルを建てた。ところがバブルが崩壊し、地価がすごい勢いで下落した。担保価値が八三%下落し、一七%になった。担保価値が借り入れを下回り、債務超過になった。本業の商売は黒字なのに、債務超過。
 以前銀行は、ビルの賃貸収入で返済する言っても、一切受け取らなかった。返してもらっても困る、借りて下さいと。それが去年の八月頃からごろっと変わった。金融庁が不良債権処理を強めたので貸しはがしが激しくなった。銀行は「債務超過を三年で解消しろ。そのための再建計画書を作れ」という。給料から従業員の交際費まで全部制限された。破たん懸念先にはならないかわりに貸しはがしを受ける。この町内の店はほとんどが大手銀行とのつきあいでアンケートをとってみると貸しはがしを受けている人が多い。

 自殺に追い込まれる経営者

 企業の九九・七%を占める中小零細企業の苦しみを行政や政治家は知らない。不景気よりも深刻なのは金融ひっ迫です。銀行でお金を借りるというのはまず無理です。自治体の制度融資も信用保証協会が担保や保証人がなければダメだという。お金がほしい人には絶対に貸さない。
 貸し渋りどころか、私などは債務超過だから貸しはがしを受ける。銀行に回収を指導しているのは金融庁、その金融庁に命じている人が悪いとしかいいようがない。
 政府はデフレ対策と言いながら、実際にやっているのはデフレ促進策ばかり。政府はアメリカに何度も「不良債権処理」を約束してきた。不良債権処理の動きがデフレを促進させている。医療費の値上げや福祉の国民負担を増やすこともデフレを促進する。また公共事業の財政支出を減せば当然デフレ効果が促進する。いまのやり方すると優良債権がどんどん不良債権になる。
 金融庁は永代をはじめ多くの信金・信組が破たんさせた。取り引き金融機関を失った中小零細企業に対して、都銀が借り換えに一切応じない。受け皿がないままに、信金・信組をぶっつぶした。破たん懸念先でもない中小企業が破たん懸念先にされる。そういう人たちが増えている。
 破たん懸念先になると整理回収機構(RCC)に回される。RCCに回されると負債を五年以内に返せと迫られる。RCCに回された人を何人も知っていますが、まったくひどい。RCCは金貸しではなく「血も涙もない」回収機構だ。
 例えば一億円で工場を建てた人がいる。それがRCCに回されて、工場が競売にかけられた。千六百万円なら落札できるという情報が入ったので千六百万円で入札した。ところが別の業者が千六百五十万円で落札した。たったの五十万円違い。ぬけぬけと次の日に落札業者が「二千五百万円で買わないか」とやってくる。これではまるでRCCと組んだ詐欺だとしか思えない。十万円の違いというのもある。どう考えても新手の詐欺だとしか思えない。
 この地域に多い印刷や製本関係は、ここ二〜三年前が一番つらかったそうです。返済を早めてくれとか、利息を上げてくれなど、やはり資金繰りです。魚河岸の仲買の人たちは信金の合併で受け皿がなくなって放り出された。本当に悲惨だ。
 ある経営者が首をつった。おかみさんが「銀行の支店長に見せたいから降ろさないでくれ」と言ったそうだ。それほど悲惨です。
 年間に三万人以上が自殺しているが、そのうち七千人が中小企業の経営者だという。しかし、交通事故を装った自殺がかなりあると聞いた。だから厳密にやると経営者の自殺は大変な数になる。保険金をかけて会社と家族を助けるために自分の命をすてる。涙ぐましいというか、本当に悲惨だ。
 一方、大企業には産業再生法などという法律をつくり、債務免除をして助けている。大きなダイエーは助け、小さいマイカルや青木建設などはつぶした。救わなければならないのはまわりの中小企業だ。
 マイカルの倒産で、うちも被害を受けた。保証協会が五千万までは融資するというので申し込んだら、保証協会は「債務超過だから貸せません」と。本当に頭にくる。担保があって保証人がいる人しか貸さないんだよ。そのために、マイカル倒産で店をたたんだ友だちが三人いる。困っている中小零細に直接融資すべきです。
 大企業の社長は失敗しても頭下げるだけですむ。大企業の社長は個人保証がない。しかし、われわれ中小零細は個人保証をしているから無限に責任を負わされる。RCCに回されて競売にかけられる。それでも債務が残れば、「あと何億円残っているよ」と一生涯おっかけられる。こんな制度は世界に例がない。あわせて連帯保証人の制度もひどい。個人保証制度をなくすために運動していきたい。
 昔は利息だけ払っておれば不良債権じゃなかった。都銀は「われわれは中小零細を相手にしたくない」「かりに優良貸出先でもいらない」「早く返してくれ、終わりにしたい」とはっきりいう。そして都銀はなにしているかというと、サラ金に金を回している。最近は自分でもサラ金を始めた。この十年で増えたのはサラ金、長者番付の上位は武富士とかプロミスとかサラ金業者ばかり。

中小企業の怒りの声を行動に

 苦しんでいる中小企業の声がなかなか政治に届かない。われわれも最初は一人ひとり悩んでいた。まして老舗が多く、体面や商売にひびくのでみんな黙っている。黙って静かに銀行のいわれっぱなしで死んでいく。私たちもご多分にもれず悩んでいた。ある時、仲間たちと話し合った時に、なんだ俺だけじゃないんだ、お前もかとなった。じゃやろうとはじめた四人がたまたま三、四百年続いた老舗ばかりだった。ほかに声をかけたら、じゃおれんとこもと集まったんですよ。中小企業は生きるのが必死で、「この指とまれ」をやる勇気ある人がなかなかいないのが現状だと思う。
 準備を始めたのは春先からで、デモやろうといったのは七月頃。そこにいくまで、金融庁や日銀など直談判もした。結局、金融政策と景気対策を変えるしかない。また個別に当たっても、それほど効果がない。それじゃ老舗の旦那方が銀座の真ん中で千人規模でデモして歩いたら、ちったあ効果があるんじゃないかということでやった。
 集会のスローガンは、「デフレ対策」「景気回復」「金融政策の変更」「雇用拡大」。デフレというのコインの表側で、裏側を見れば遊んでいる人と設備がある。人を無駄にするのはけしからん、需要を拡大して皆が働けるようにしろというのがわれわれの要求だ。
 事前に出席の返事をもらったのは六百人だったので、九百人集めるのも無理ではと思った。中央区の商店街連合会や工業団体連合会、町会などに声をかけたり、街宣車でも回った。それで千三百五十人も集まった。いかに中小企業が苦しんでいるか、声を上げたいという方がいかに多いかを実感した。大会には区長も参加し、十月から景気回復対策本部をつくると約束してくれた。千三百五十人の効果だと思う。
 終わった後、都内だけでなく他の県からもずいぶんいろいろな問い合わせがくる。今度やるときは三十人で参加するから知らせてくれなど、毎日のように連絡がある。

力をあわせて政策変更を

 ふだん組織活動をしていないから、組織化がものすごく難しい。連絡するにしても費用や手間がかかる。それぞれの経営に追われ、人を集めたり会合をすることもなかなかできない。それが悩みなんだ。
 今後、われわれは組織がないから、東京全域に声をかける。いろいろ束ねているところにお願いするしかない。今回、一生懸命やってくれた商工会議所をはじめ、商店街連合会や各種団体連合会など、全都、全国に波及させながら同志を探していきたい。
 ちゃんと経営指導をします、資金繰りもみます、利益さえ出していれば貸しはがしはしません、というのであればみんな我慢します。ちゃんと返済もしているのに不良債権で飛ばす。いまのようなやり方をするなら債務免除、つまり借金棒引き以外に方法はない。
 アメリカもバブルだから、いずれ崩壊する。やたら戦争が好きな大統領いるし、アメリカに投資する人はだんだん減る。ドイツの法務大臣のブッシュ批判発言は、その通りだと思う。アメリカはエンロンなどのほころびが出てくるので外に敵を作りたがっている。
 十年も不況を続けたら国家的犯罪だよ。その犠牲になって、中小企業の経営者が首をつっている。きちんと総括をして、何をすべきか明らかにして責任者を処罰すべきだ。
 金融ひっ迫は、どんどんひどくなっている。不良債権とされている人たちは、毎日毎日首を絞められている。「デフレ対策」「景気回復」「金融政策の変更」「雇用拡大」の声を大きくして、何としても政策変更を実現したい。(文責編集部)