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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2002年10月号
去る九月十七日、小泉首相と朝鮮民主主義人民共和国(以下「朝鮮」)の最高指導者である金正日朝鮮労働党総書記との劇的な首脳会談が開かれ、十月中に日朝国交正常化交渉を再開することが合意され「日朝平壌宣言」に両首脳が調印されたことは、これまで長く先が見えなかった日朝関係に一縷(いちる)の光明が見い出し得たものとして歓迎し期待を寄せるものである。
会談のなかでは、両国の懸案事項である過去の植民地支配に対する謝罪と補償の問題や、財産権の問題、また朝鮮の核・ミサイル問題を含む安全保障の問題などについては大筋で合意が見られた模様であり、なかでも日本国民の関心事である拉致疑惑や日本近海に出没する不審船の問題について、金正日総書記自らが拉致の事実を認めて謝罪し、今後かかる事態を引き起こさないことを約束するとともに、とくに日本側が提起していた被拉致者については八名の死亡と五名の生存が伝えられた。
このことは、これまで長年にわたって拉致などあり得ないと信じて、日朝友好の旗を掲げて日朝国交正常化と朝鮮統一支持の運動に情熱を傾けてきた私を含めて多くの人びとにとっては大きな衝撃であったことは間違いない。
とくにいまだ未確認とはいえ、十三名の拉致の事実とその生死が伝えられたご家族のことに思いを致すとき、過去二十年或いは三十年の長きにわたって肉親の身を憂い、不安を抱きながらもその生存を信じて再会の日を待ち望んでおられた方々の心中はまさに察するに余りあるものがある。
したがって拉致の問題については、その生死を問わず、すべての人について拉致された状況から現在に至るまでの事実経過とその真相を可能な限り究明し、補償を含めて今後の課題とすべきである。
しかしこの問題を会談の入口に置いて、拉致問題が片付かない限りは国交正常化の話し合いには入るべきではないといった発想はとるべきではない。何故なら、話し合いのないところに国交正常化はもとより、拉致そのものの真相究明もなし得ないからである。話し合いを重ね、お互いを知り、相互に信頼を醸成するなかでこそすべての問題の解決はなし得るものである。
冷静に、そして大局的に日朝両国の将来を考えるとき、戦後五十有余年、敵対関係に置かれてきた朝鮮へ、日本の首相が歴史上はじめて足を踏み入れるという英断があったからこそ閉ざされていた門戸が開かれ、これまで闇のなかにあった諸問題が明るみに出され、話し合いの糸口が開かれたのである。また同時に金正日総書記も、これまでの経緯にとらわれず、思い切って拉致の事実を認め謝罪されたことは、苦汁の決断であったであろうし、今回の首脳会談こそが、両国の相互信頼をつくりだす出発点となることを念願するものである。
ただここで私が指摘しておきたいことは、ここ二十数年にわたって日本の被害の面、すなわち拉致疑惑の問題を強烈かつ広範に訴えつづけてきただけに、日本の朝鮮に対する負の面、すなわち加害者の立場を忘却してはならないということである。
かつて日本が朝鮮半島を植民地支配下に置いていた当時、戦前・戦中を通じて百五十万人ともいわれる朝鮮人民を強制連行(拉致)して炭鉱や鉱山・土木現場などへ送り込み、過酷かつ危険な労働を強制し、また戦争中二十万人ともいわれる朝鮮女性を徴用し、従軍慰安婦として戦地に送り出すという人権蹂躙も甚だしい罪悪を犯し、これらの人びとの中には多くの死亡者、行方不明者があり、これらの人びとをそのままにして何等の捜索も補償もしないまま放置しているという事実に目をふさいではならないということである。
日朝両国の過去の歴史を顧みるとき、本来は日本が戦後処理の一環として、いち早く謝罪し、話し合いを通じて諸問題を解決し、国交正常化を図るべき間柄である。にもかかわらず今日まで、国連加盟国中ただ一国、朝鮮民主主義人民共和国とのみ国交がないという現実を一日も早く解消し、北東アジアの平和と安定を図ることは日本の責務とさえいわなければならない。
一方、一昨年の南北朝鮮首脳による六・一五の共同声明いらい、紆余曲折はありながらも和解から親善そして協力へと歩を進めており、他方、昨年九月のアメリカに対する同時多発テロに対しては、多くの国々を巻き込んでテロ撲滅の名のもとにアフガニスタンを焼土と化したブッシュ政権も、露骨な国益中心の経済政策をはじめ、次の攻撃目標をイラクと定めてそのための戦争準備を着々と進めていることにみられるように、軍事力による世界制覇というアメリカの世界政略が顕著になるにつれ、すでにEU諸国やアラブ諸国などから、アメリカからの同盟離脱の傾向が現れつつある。
したがって、日朝国交正常化や南北朝鮮の協力関係が進めば進むほど、「悪の枢軸国」よばわりをしていた朝鮮に対しても、最近の米朝高官協議の再開の動きにみられるように、対朝鮮政策の転換をも余儀なくさせることであろう。
私たちは、これら大きく変わりつつある情勢をふまえて、今回の日朝首脳会談、日朝平壌宣言を契機として、日朝間も対立から和解へ、そして協力へと大きく歩を進めなければならない。