国民連合とは月刊「日本の進路」地方議員版討論の広場集会案内出版物案内トップ


自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2002年9月号

許せぬ干拓工事
「宝の海・有明海」の再生を

佐賀県東部漁協青年部長 田村和之


 農水大臣は、諫早干拓工事について矛盾した態度を取っています。三県漁連(福岡、佐賀、熊本)には潮受け堤防の短期開門調査を約束しながら、長崎県側には「二〇〇六年度の完成をめざす」と約束している。また三県漁連と「漁連が容認しないと工事はできない」と約束していたのに、農水省は三県漁連側に説明もせず、「八月から前面堤防の工事を始める」と発表した。さらに工事の入札も始めることになった。
 潮受け堤防内部の干拓地と調整池を仕切る前面堤防が作られると諫早の干潟を再生させることが困難になります。「佐賀有明の会」の漁民四百人が七月一日、中長期の開門調査の早期実施と、調査結果が明らかになるまで工事の中止を求めて、九州農政局(熊本県)に抗議行動を行いました。熊本や長崎の漁民も参加しました。農政局側が、約束を無視し門を閉ざし話し合いを拒否したため、やむをえず建物内に突入。二十二時間にわたって敷地内に座り込みました。
 短期開門調査は二カ月間の約束でしたが、実際の開門は一カ月弱(四月二十四日〜五月二十一日)だけ。とにかく開門させたことには意味があったと思いますが、有明海汚染の原因を調査する意味からは納得できないものでした。
 漁民の工事反対の抗議行動にもかかわらず、農水省側は、「二〇〇六年完成をめざす」「工事の中止はできない」という姿勢です。私たちは八月二十九日に抗議行動を計画しています。福岡漁連は前面堤防工事の差し止めを求める仮処分の申請を決めました。
 昨年、一昨年と比べると今年のノリは豊作でした。「諫早干拓は関係ないのでは」と思われる方がおられるかも知れませんが、それは違います。第一は漁民の努力です。佐賀県全体でノリ網を二割減らして潮の通りをよくしました。また、干潟の浄化作用を復活させるため海底をかき混ぜ、海底の泥に酸素を送り込みました。さらに大量のアサリ貝や赤貝の稚貝の放流も行いました。第二はノリ養殖にとって天候に恵まれました。第三は、諫早湾の排水の仕方が変わり昨年の十月二十六日以降、北部水門からは排水していません。その結果、北部排水門の外側にタイラギなどが復活しています。昨年は諫早干拓工事がストップしていましたのでセメントのあくなど流れなかった。
 安心してノリ養殖の漁期を迎えたい。だから工事に反対しています。昔の干潟、「宝の海・有明海」に戻してほしいというのが有明海の漁民の願いです。漁民の願いを無視して進む干拓工事の現場を見るたびに絶望的な思いも感じますが、将来のためにも徹底的にたたかわなければと思います。(文責編集部)