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月刊『日本の進路』2002年9月号
昨年夏、愛媛県教育委員会は、県立養護学校とろう学校に「つくる会」主導の扶桑社版歴史教科書を採択した。そしてこの夏、再び「つくる会」の歴史教科書を、来春開設される愛媛県立中高一貫校三校(宇和島南、松山西、今治東、定員四百八十人)での採択を強行した。
全国的には「つくる会」歴史教科書の採択率は〇・〇三九%と良識派の市民の勝利と総括されたが、私たちは楽観的な思いは待っていなかった。全国の採択の実情が一歩間違えば「つくる会」教科書の採択がありえた地区が多かったからです。
「つくる会」「日本会議」など右翼団体、県知事・県教委が一体となった動きは予想以上だった。「つくる会」の藤岡信勝副会長が「愛媛問題対策本部長」として二週間前から愛媛に張りつき、県知事や県教育長支援の署名集め、地元愛媛新聞に全面広告、大量の宅配ビラなど全国動員による攻撃を繰り返した。
文部官僚出身の加戸県知事は、昨夏の採択直前には「扶桑社の教科書がベスト」と述べたり、今年五月には「扶桑社版中学歴史教科書採択を、外国の批判で取り下げるようでは主権国家とは言えない」「今後も教科書採択が県政最大の課題だ」と露骨な政治介入を繰り返した。
交代した教育委員長と新任の教育委員が全員一致で、「つくる会」歴史教科書を八月六日の食事会のときに内定し、文科省に報告期限の八月十五日に教育委員会を開催、しかも教科書採択の議事は秘密会にすることまで申し合わせていたという。採択の理由は「学習指導要領に最も添っている」というが、教育基本法の理念を否定する「つくる会」教科書が最適とはまさに詭弁である。
私たちは、養護学校・ろう学校への採択撤回運動と中高一貫校への採択阻止運動を結びつけ、侵略を美化しアジアを蔑視する「つくる会」教科書の危険性を訴え、知事の政治介入を追及しました。採択撤回署名運動、知事を相手にした損害賠償訴訟、地元紙へ意見広告、講演会やシンポなど取り組みました。
七月には、県下の政党、労働組合、宗教団体、個人による実行委員会を組織し、「戦争賛美の『つくる会』教科書NO!大集会」を開きました。大集会のあとデモ行進し、「人間の鎖」で県庁を包囲しました。
また八月十一日から教育委員会が開かれる八月十五日まで炎天の下、県庁前で「戦争賛美の『つくる会』教科書だけは渡せない」とリレーハンストに入り、のべ二十数名の人々がハンストを貫徹しました。
残念ながら、来春開設される県立中高一貫校で、「つくる会」歴史教科書採択が強行されました。しかし、運動を通じて多くの仲間と知り合い、韓国の「日本の教科書を正す会」や全国の人たちとも信頼と連帯が深まりました。貴重な経験を通じて一人ひとりが鍛えられました。
三年後の本採択では、昨年の養護学校・ろう学校、今年の中高一貫校での採択を布石に県下全域、そして全国各地で採択をめざしてくることは明らかです。愛媛の教訓を全国で生かしていただきたい。「つくる会」教科書の採択の撤回、そして三年後の本採択阻止にむけ、全国とアジアの人びとと力を合わせて共にがんばりましょう。