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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2002年9月号

農協が各地で緊急集会

財界主導の農業改革に怒りの声


 小泉内閣の下で、日本農業を崩壊に招く財界主導の「農業改革」が進んでいる。政府は昨年十一月、「米政策の見直し」を発表。これにもとづき食糧庁に「生産調整に関する研究会」を発足させ、今年六月に中間報告を発表した。また今年五月には「食と農の再生プラン」を発表。その内容は「規制緩和と市場原理」「売れる米づくり」「余剰米処理の自己責任強化」「副業的農家の切り捨て」「株式会社の農業参入」など食料を確保する国の責任を放棄する財界主導の「改革」である。これに対し、全国各地で農民の怒りの声があがり、生産者の声を反映する農政を求める集会が相次いで開かれた。(文責編集部)


 八月二十八日、東京・日比谷公会堂で「農業政策確立緊急全国代表者集会」が開かれた。JA全中と全国農政協主催の集会には全国のJA組合員代表の二千人と、消費者団体らが参加した。
 主催者あいさつで宮田勇全中会長は、「小泉内閣は厳しい財政運営を行っているが国民生活における食と農の関係は大切さは変わらない。WTO農業交渉では米国などの大幅な関税引き下げ要求には断固反対し、米のミニマムアクセスの改善など実現させるため国民各層と連帯したい。米政策については国と役割と責任を明確にしていきたい。株式会社の農業参入は家族農業を破壊するものであり反対だ」と呼びかけた。
 JA全中の山田俊男専務理事は情勢報告の中で、WTO農業交渉については「関税の大幅削減など米国提案は断じて認められない。米のミニマムアクセスの改善など日本提案を消費者や各界各層、アジアやEUと連携して取り組む」と述べた。
 連帯あいさつで、全国消費者団体連絡会の神田敏子事務局長は「食の安全をめぐる問題が出てきているが、それ以上に食料の安全確保が大切だ。二、三の大国に食料を頼っている現状はもろい。自給率向上など日本の食料問題のためJAと連携を強めたい」と訴えた。全国森林連のの木下紀喜代表専務は「日本の材木は八〇%以上が輸入で、国土の八〇%を占める森林と農地が危機にひんしている。農と林が団結し、豊かな国土をつくろう」と訴えた。全国漁協連の宮原邦之常務は「行きすぎた食料の輸入で水産物の自給率も低下している。消費者との連携を強めたい」と呼びかけた。
 JA全青協の門傳英慈会長が「この一年、BSE発生、偽装問題、米改革、食と農の再生プランなど生産意欲をそがれる話ばかり。しかし、われわれには国の礎である農業を発展させる義務がある。『土健やかなれば農健やかなり、農健やかなれば食健やかなり』という、農の心を次代につなぐためにも幅広く連携して展開しよう」と決意表明を行った。
 最後に「WTO農業交渉は、米のミニマムアクセス制度改善と総合的国境措置の堅持する」「食の安全・安心確保の取り組み強化」「米政策は国の役割と責任を明確化、生産者全員の負担による過剰米処理」「農業否定につながる株式会社の農業経営参入は認めない」などの決議を採択した。


現場生産者の叫びを反映させる農政に
  JA栗っこ稲作生産者協議会会長 千葉義信

 稲作四ヘクタールと畜産の複合経営をやっています。昔の稲作は五〜十ヘクタールあれば専業でやっていけたが、いまでは二十ヘクタールなければやっていけない。それほど米価が下落した。厳しい経営の中で農家の生活状態も危機的です。
 生産現場からみると、今の農政は国が負うべき責任を放棄し、農家個人に責任転嫁している。米政策では、「余剰米処理は自己責任」だとか、副業農家を切り捨てるような政策が打ち出されている。兼業農家だけでなく、専業農家の経営も成り立たず、これではますます後継者がいなくなる。
 余剰米があるからと減反(生産調整)をやっていますが、「日本の水田を減反させておきながら外国から毎年、何十万トンものミニマムアクセス米を輸入するとはどういうことか」と国の政策に対して非常に怒りが強い。
 七月三十一日、宮城県築館町で「農業危機突破『米を守る』緊急JA栗っこ大会」が開かれた。千人が参加した農家の声が反映した熱気ある集会だった(写真上)。昔の米価闘争の意気込みを復活させて、現場や末端の叫びを政治に反映させようという声が上がっている。
 私たち農家は、先祖が残した美しい田圃を守っていかなければならない。また、消費者に喜ばれる安全で安心な食料をつくろうと考えている。安全で安心な国民の食料を安定的に確保するためにも、農地を維持し環境を守るためにも、農家が安定的に経営できる国の農業政策が必要だ。消費者の皆さんとも連携してがんばりたい。


◆宮城県農協中央会は八月二十一日、仙台市で「宮城県農業者総決起集会」を開き、約千人が参加。大堀会長は「国が進めている米政策は過度の産地間競争を招き、日本農業を崩壊させるものだ」と政府の農業政策を厳しく批判した。大会では(1)国が責任をもつ生産地調整(2)稲作経営の安定化対策の維持などの決議を採択した。
◆みやぎ登米農協は八月四日、「農業危機突破『米を守る』緊急JAみやぎ登米大会」を開き、約千四百人が参加。大会では農水省の進める「財界主導の米改革」を批判する決議が採択された。また、同農協青年部が武部農相の退陣を求める緊急動議を提案し満場一致で可決された。緊急動議では武部農相について(1)BSE発生に対する国の責任を「生産者重視の農政の結果」と責任転嫁した発言(2)農業への企業参入と農協解体を主張(3)財界主導の論理による農民不在の農政推進、などを指摘。