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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2002年8月号

シンポジウム「21世紀の日本の進路」

日米安保条約を日米平和友好条約に

「21世紀・日本の進路」研究会が提言発表


 隅谷三喜男・東京大学名誉教授を座長に十五人で構成する「二十一世紀・日本の進路」研究会は七月五日、提言「二十一世紀の日本の進路―日米安保条約を日米平和友好条約に―」を発表した(提言要約)。七月八日には東京でシンポジウムを開き、研究会のメンバー五人がパネリストとして発言。それぞれの立場から日米安保の終了を訴えた。シンポジウムでの発言要旨を紹介する(文責編集部)。

提言を全国へ  開会あいさつ
槙枝元文(元総評議長)

 安保体制下に置かれて半世紀、軍事のみならず政治も経済も日本自ら決定することができないことに対して疑問の声がほとんど出てこない。
 安保条約ができた当時は冷戦下で日本を守ってもらうためだった。しかし冷戦は崩壊し、安保条約の必要性は終わった。しかし九六年には安保共同宣言が出され、日本を守るためからアジア太平洋地域の平和・安全のためへと大きく変質した。問題の本質は米国の世界戦略の一環として、日本を従属下に置いたことにあり、安保を友好条約にという結論に達した。この提言を国民に広めたい。


米国に生命を握られた日本
竹岡勝美(元防衛庁官房長)

 今も都心部に米軍のヘリポートがある。これは国家の恥であり米軍の撤収は、日本の名誉と正義のためだ。
 敗戦後、日本が経済大国になった点は米国に感謝しているが、この関係は軍事同盟であり、日本は米国に「守ってもらってきた」という負い目がある。これは米国に生命を握られているのと同じ事。しかし今や米国に守ってもらうべき脅威はない。防衛庁当時、ソ連が攻めてきたと想定した自衛隊と米軍の共同演習がないことに疑問を持った。海上幕僚幹部が言うには、「西にNATO、南に中国軍、東に米軍と対峙している中で、ソ連が日本に上陸侵攻してくるなんて有事シナリオはあり得ない」。冷戦下のソ連ですらそうだったのに、中国や南北朝鮮が日本の仮想敵国になり得るはずはない。


自然死すべき日米安保
野田英二郎(元インド大使)

 冷戦が終結しソ連はなくなったわけで、仮想敵国のない同盟条約は必要ない。しかし九六年に日米安保共同宣言が出され、自然死すべき日米安保に生命維持装置がつけられた。
 朝鮮半島では南北共同宣言が出され、大きな軍事衝突はあり得ないと思う。中台関係は経済面で切っても切れない相互依存関係ができている。朝鮮半島や台湾海峡を、安保条約の理由にはできなくなった。
 米国は「対テロ戦争」としてアフガンに対する空爆を行い、イラクを攻撃するといっているがテロとの関係について説明がない。米国のやっていることは一極支配。しかし軍事力に頼っても問題を難しくするだけで、泥沼に入ってしまう。
 憲法の精神の原点に戻り、そこから安保条約の問題も考えるべきだ。


全国化された日米安保
吉元政矩(前沖縄県副知事)

 沖縄が復帰した七二年以降、日本全土が沖縄化された。その後の日米安保の運用の実態を見れば、日本全国を米軍が好き勝手に使っている。
 九〇年代に大田知事を誕生させ、二十年かけて米軍基地をゼロにするアクションプログラムを作った。それは今日も消えていない。しかし今の県政は普天間代替基地を作ろうとしている。環境アセスに三年、建設に十年、そして十五年は米軍に使わすという。単純に計算して二十七、八年。二〇三〇年まで基地を認めるのか。海兵隊が撤退すれば沖縄本島の七五%の米軍基地が減る。凶悪犯罪の九〇数%が海兵隊。少なくとも海兵隊には撤退してもらう。安保条約を破棄して平和友好条約を作り、在日米軍基地はなくす方向で考えていくべきだ。


これからはアジアの時代
竹田四郎(元参議院議員)

 経済問題と安保条約とは関係が薄いように考えられているが、第二条に「締約国はその国際経済政策における食い違いを除くことにつとめ、また両国の間の経済的協力を促進する」とあり、日本経済は米国の意向に従わされている。グローバルスタンダードは米国の市場原理主義という経済思想。その結果、貧富の格差が拡大し、テロが起きた。グローバルスタンダードが人間生活における緊張関係を生み出している。
 米国の株が暴落している。逆に日本の景気は大企業では少し良くなったといわれ、世界銀行などの調査ではアジアの景気が良くなったためとされている。歴史は変わり、アジアの時代に入ってきた。日本はアジアを基盤としていくと態度を決めなければ、二十一世紀の日本はない。


非核地帯で信頼醸成を
櫛渕万里(ピースボート共同代表)

 安保はとんでもないと最初に思ったのは沖縄に行った時。憲法で保障されている基本的人権よりも、日米安保条約に書かれていることが優先されている事実に驚いた。
 北朝鮮が敵国扱いされる中で私たちが北朝鮮へ行き続ける理由は、信頼醸成こそが安全保障、平和の基本だから。信頼醸成とは「友好」と言い合うことではなく、お互いの意見をいえる関係を築くこと。それには共通目標が必要で、東北アジアの非核地帯を作ることを提案している。日本は原爆を落とされ、朝鮮半島は朝鮮戦争時に原爆を落とされる可能性があった。日本は敗戦後米軍基地が置かれ、朝鮮半島も韓国に米軍基地がある。共通の目標を持つことができれば、安保条約のない、私たち独自の提案を出すきっかけにもなる。


途上国の意見反映される国連に
コーディネーター  吉田康彦(大阪経済法科大学教授)

 私は国連職員を十年間やり、帰国後、いろんな国際問題、外交問題で発言してきた。
 貧困と差別からくる絶望的な反抗が昨年九月のテロ事件をよんだ。その根本的な問題と取り組んでいかなければいけない。具体的には国連改革が必要で、安保理構成国を拡大し途上国の意向が反映される形に改める必要がある。
 アジアの共生について、まず北朝鮮との国交を早急に正常化すべき。拉ち疑惑を妨げにしてはならないし、拉ち疑惑を政治運動に利用している勢力に負けてはならない。

「21世紀・日本の進路」研究会
座 長
 隅谷 三喜男(東京大学名誉教授)
メンバー
 伊藤  茂(元衆議院議員)
 大槻 勲子(日本婦人有権者同盟副会長)
 加藤 毅(広範な国民連合事務局長)
 櫛渕 万里(ピースボート共同代表)
 鈴木 保(厚木爆音防止同盟委員長)
 竹岡 勝美(元防衛庁官房長)
 竹田 四郎(元参議院議員)
 野田 英二郎(元インド大使)
 針生 一郎(和光大学名誉教授)
 前田 哲男(東京国際大学教授)
 槙枝 元文(元総評議長)
 武者小路 公秀(中部大学教授)
 吉田 康彦(大阪経済法科大学教授)
 吉元 政矩(前沖縄県副知事)