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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2002年3月号
長期不況の中で中小企業の倒産が相次いでいるが、「貸し渋り」「貸しはがし」など金融機関の悪らつなやり方が大きく影響している。その代表的なものとして新生銀行を指摘したい。
新生銀行は、かつて長銀と呼ばれた日本長期信用銀行です。長銀は、一九九八年に破たんした。前年の北海道拓殖銀行や山一証券など相次ぐ金融機関の破たんを背景に、九八年に七十兆円の銀行救済システム(金融再生法と金融健全化法)がつくられました。これらの法律によって、長銀の破たん処理には国民の税金は実に四兆円も使われた。破たんして国有化された旧長銀をアメリカの投資会社リップルウッド社が買収しました。リップルウッド社は、機関投資家から集めた資金で経営不振の企業を買収、再建後に高値で売却して利益を上げてきた会社です。リップルウッド社は、日本コロンビア、宮崎の破たんした大型リゾート施設のシーガイヤ、自動車部品のナイルスなども買収し、いまも次々と手を出している。このリップルウッド社がたった十億円で旧長銀を買収してできたのが新生銀行です。
新生銀行は、日本政府と瑕疵(かし)担保契約を結んでいます。瑕疵担保契約とは、譲渡後三年以内(来年の三月末まで)に貸出債権が二割以上劣化した場合は国が買い戻すという特別の契約です。つまり新生銀行が企業に貸している債権が二割以上下がったら、日本政府が買い上げるというものです。あおぞら銀行も同じ瑕疵担保契約を結んでいます。
実際に新生銀行がどれほど瑕疵担保の請求権を行使したか。昨年三月末決算時には四十一件で二千百二億円、九月末の中間決算の時には百十二件で五千五百八十億円。これだけ政府に買い上げさせた。ですから、新生銀行が貸している企業がつぶれるほど、リスクの高い貸付金が減って、回収確実なものだけになるし、多額の貸倒引当金を積まなくていい。その結果、自分の銀行が抱えているいやな借金が消えて健全な借金だけになる。その結果、昨年三月末の新生銀行の決算は、業務純益が三百八十四億円、経常利益が九百五十五億円と予想をこえる収益をあげた。破たん処理の四兆円にせよ、瑕疵担保契約による買い戻しにせよ、莫大な国民の税金が使われた結果です。
政府からも、中小企業をいじめるなと指導を受けているにもかかわらず、貸しはがし=企業つぶしをやっている。例えば、不動産会社に金を貸すファースト・クレジットという会社の経営が傾いた。ファースト・クレジットは取引の三十七行の金融機関に再建計画を示し、大部分から承諾を得た。ところが約千三百億円近く貸している新生銀行が計画を拒否し、昨年十二月末にファーストクレジットに連絡もしないで一方的に東京地裁に会社更生法を申請した。融資先企業に対して会社更生法を申請するのは異例のやり方です。この間、そごうやマイカルの倒産、ダイエーの破たんと続きましたが、その裏には必ず新生銀行の名前が出てくる。
新生銀行のような企業つぶしは徹底して追及すべきです。中小企業家同友会が提唱している金融アセス法ができれば、こういうものを通じて文句がいえる。中小企業にとって金融機関の問題は重大です。
今後も日本の金融機関がつぶれるたびに、アメリカ資本が入ってくる。これに対して文句をつけたり、税金をかけたりする必要がある。国会でも追及すべきだと思う。昨年四月、小泉首相が訪米したとき、ブッシュ大統領は「日本は不良債権処理が必要だ。アメリカにはいつでも専門家を送る」と言った。すでに五人くらい来ています。日本の金融機関の不良債権処理にからんで、その裏で日本の金融機関を買い占めようというねらいがあると思います。