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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2002年2月号
アメリカのNGO「グローバル・エクスチェンジ」が、同時多発テロ被害者遺族とアフガン空爆被害者をつなぐ使節団を組織した。この取り組みを紹介する。(編集部)
アメリカの九月十一日同時多発テロの犠牲者遺族が、悲しみをいやし、平和の願いを込めて、アフガン戦争の被害者と交流するために、アフガニスタンへ旅立つ予定である。被害者遺族同士の歴史的な交流は、ささやかではあるが、意義深い、真の平和のための人間の絆を築く足がかりになるだろう。
九月十一日同時多発テロの遺族四人が、一月十二日アフガニスタンへ出発する。まず、一月十四日パキスタンのイスラマバード入りし、十五日にアフガニスタンのカブールへ到着する。遺族は八日間アフガニスタンに滞在し、同じように悲しみにくれるアフガニスタンの遺族と対面する。アフガニスタン滞在中、使節団は、最近の空爆で両親を失ったストリートチルドレンと会ったり、カブール市内の病院を訪ねたり、家を失った家族の手助けをしたりする予定。
「私にとってこの旅は、人種国籍を問わず、人類の尊厳と愛について、考える旅になるでしょう」。カリフォルニア州ストックトンで音楽を教える大学教授、デリル・ボドリー氏は言う。彼の娘であるドーラさんはユナイテッド航空93便に搭乗して犠牲になった。「旅行中に、アフガニスタンで亡くなったり、苦しんでいる罪のないアフガニスタン人に、哀悼を示すつもりです。命の価値や、家族を失う悲しみを共有するすることで、将来このような犠牲を避けることができるはずです」。
サンフランシスコの国際人権団体のグローバル・エクスチェンジが、犠牲者をつなぐ使節団を組織している。グローバル・エクスチェンジのモットーは、人と人との絆を通じて、草の根のネットワークを築くことである。グローバル・エクスチェンジでは、アフガニスタンとアメリカの遺族が、個人として、苦しみを分かち合うことが、両国に大きな意味を持つと考えている。アフガニスタンの人々も、アメリカの人々が命の犠牲に対して懸念を示していることに、気づくであろうし、アメリカ人の渡航者もアフガニスタン人を、同じように大事な生身の人間として、深く理解するだろう。そして、世界中の人々もこうした交流があったということを通じて、人類共通の命の大切さを目のあたりにするだろう。
〈アフガニスタンに出発する四人〉
◇デリル・ボドレー氏は、カリフォルニア州のサクラメント私立大学、ストックトン太平洋大学で音楽を教える五十六歳の大学教授。ペンシルバニアに墜落したユナイテッド93便で、娘のドーラを失った。悲報を聞いて最初に彼がやったことは、九月十三日、ピアノの前に座り、浮かんだメロディーを「平和へステップ―ドーラのために―」という曲としてまとめることだった。実際、彼はホワイトハウスの追悼会でこの曲を演奏し、ブッシュ大統領にCDを渡している。
◇リタ・レーザー氏は、ニューヨーク市在住の七十歳の元会社員。兄、アベ・ゼルマノヴィッチを世界貿易センターで亡くした。アベ氏は、一機目の航空機が激突した際、貿易センタービルの二十七階にいた。彼はビルから脱出できたにもかかわらず、肢体不自由のために脱出できない友人とビルにとどまることを選んだ。ブッシュ大統領は、国立教会での犠牲者を悼む演説で彼の勇気ある行動を称えた。
◇ケリー・キャンベル氏は、カリフォルニア州オークランドの二十九歳の環境運動家。義理の兄、クレイグ・アムンドソン氏(二十八歳)をペンタゴンへの航空機激突で亡くした。クレイグ氏には、若い妻と二人の小さな子がいた。ケリー氏は、妻、アンバー・アムンドソンの代理で渡航する。妻、アンバーは以前から報復攻撃に懸念する発言をしてきた。テロ攻撃の数週間後、アンバーさんはシカゴ・トリビューン紙にこのように投稿している。「(クレイグ・夫の)死が、さらに罪のない人たちへの攻撃を正当化する理由に使われるのではないかと考えると、ますます心が痛みます。」
◇エバ・ラップ氏は、ワシントンの商務省、海洋大気部門に勤務する二十八歳の女性。エバは、ドーラ・ボドレーの継姉妹にあたり、ドーラが五歳のときから一緒に育ったという。
アメリカ軍の空爆による市民の犠牲者数は、完全には把握されていないが、人権団体、研究者によると、罪のない市民の犠牲者は二千人から四千人とされている。少なく見積もっても、数千人がアメリカの空爆により死傷していることは明らかである。
「米国はもちろん、世界中の人々が、九月十一日の犠牲者に大きな哀悼の意を表してきました。九月十一日の犠牲者と同様に、罪のないアフガニスタンの犠牲者に対しても、哀悼の意と援助を差し伸べるべきではないでしょうか」。グローバル・エクスチェンジの創設者、メディア・ベンジャミン氏は言う。ベンジャミン氏は遺族の旅に同行する。「アフガニスタンに対して酷い攻撃を始めた、豊かな国の市民として、アフガニスタンの無実の犠牲者を助ける責任はないのでしょうか」。(一月九日)