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代表世話人からの新年メッセージ

世界の日本化に反抗する年に

武者小路 公秀


 昨年九月の自爆テロ事件は、世界を震撼させたが、意外な副産物もあった。世界が日本化したのである。二〇〇二年、日本外交の課題は(多分できないことだろうが)、これに反対することである。日本は明治以来、文明国の仲間入りして、尊敬される文明国になることを志した。文明大国に不平等条約を改正させるのにやむをえない妥協であった。その後も、日本は文明諸国の最強国の同盟国であることを国家目標にして、日英同盟、日独伊枢軸を選び、敗戦後は日米機軸主義をとってきた。いまも対米ベッタリ外交で、米国に一刻も早く同調して誉められるためテロ特措法を通した。
 しかし、いまや反テロ戦争に、イスラーム教国など疑問をもつ非西欧諸国に、「文明につくか、テロにつくか」と、ブッシュ大統領は乱暴な脅迫をしてきた。その結果、いまやイラクなどを除く世界の非西欧諸国は、イスラーム諸国も社会主義キューバも、日本のように文明国に認められたいばかりに、文明つまり米国に協力することを外交方針にしてしまっている。世界が日本化してしまったのである。
 日本化してくれた世界諸国のおかげで、対米ベッタリなのは日本だけでなくなった。しかし、日本がこれで普通の国になったといって安心してはならない。ブッシュの米国だけが文明なのではない。米国以外の諸文明の存在を否定した「文明間の衝突」という奇妙な現実を前にして、せめて日本だけでも、世界の日本化に反対する必要がある。
 世界貿易センターに続いて沢山の死者がアフガニスタンでもでている。この無益な争いはさらに日本などでもテロ戦争を名目とする「不法」外国人の締め出し、治安維持法なき「合法的」国内治安強化の人権無視体制を造りだしている。総力戦文明国家同盟に日本がはいっている代償である。その背景になっているネオリベラル・グローバル化も、多数の企業の倒産で多くの自殺者まで出している。このようなグローバル資本主義文明に対して、世界の人間を大切にする諸文明が対話を深めて対抗するほかに、今日の危機を乗り越える道はない。いろいろ違った文明に属する世界の諸国民は、恐怖と欠乏を免れ平和に生きる権利がある。
 このことをその憲法で主張している日本こそ、おろかな「文明対テロ衝突」を否定して、人間の安全を脅かす米国と袂を分かち、日本化してしまった世界の非西欧諸国に翻意をせまって、平和・自主・民主の諸国民連合をつくっていくべきである。その第一歩として、二〇〇二年こそ、日本が、世界の日本化に単身反対して、対米ベッタリ外交をキッパリやめるべき年である。