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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2002年2月号
深刻な現状
牛海綿状脳症(BSE)発生から四カ月。畜産農家は価格下落で大変です。さらに、乳牛を扱っている酪農家の方がパニックなんです。乳牛の場合、四歳か五歳になって、乳量や乳質が落ちたら売るんです。搾乳をやめてエサを与えて肉を付け、肉牛として出荷する。この問題が起きる前は一頭十万円くらい、いい牛なら二十万円だった。ところが、三頭ともそういう牛からBSE感染が出た。そのため老廃牛を持っている酪農家はパニック状態です。売っても一万円以下。自分の牛舎からBSEを出したくないし、老齢の牛は危険だということで買ってもくれない。本来なら、老廃牛は肉として出すことで新しい牛と五十〜六十カ月のサイクルで交代する。ところが出すに出せない老廃牛がどんどんふえていく、牛舎も一杯。費用もかかりますから、ますます経営を悪化させているわけでしょ。九月の発生段階よりむしろ、深刻な状況ですね。
北海道にとって農業の役割は大きく、農業生産は一兆千億円ちかくあり、北海道の基幹産業として地域経済を支えています。それだけでなく肥料・飼料・農業機械等の生産資材や加工・流通業など幅広いすそ野があります。農業生産のうち、三五%が肉用牛と乳用牛生産ですが、とくに比重の大きい乳牛がこけると、北海道の経済全体がとんでもないことになります。赤字になって所得が落ちれば、農業資材・加工・流通なども含めて北海道の地域経済は大変な影響を受けます。いつまで価格と消費低迷が続くのかという不安が広がっています。この状態が長く続くと本当に危機的状況です。
感染原因の徹底究明と情報公開
日本でBSEが発生したのは偶然ではありません。イギリスやヨーロッパの教訓をきちんと生かしていれば阻止できたはずです。九六年のWHOの勧告やEUの警告を無視し、肉骨粉を法的規制しなかったことなど行政の不手際の結果であり、国の責任は重大です。農政上の歴史的事件だと思います。
全部の牛を検査する体制(全頭検査)になって政府による「安全宣言」が出されましたが、消費はなかなか回復しません。消費者に不安があるからです。感染源がきちんと究明されないから、国民の不安がなくならず、消費も回復しない。国の対策に対する不信も相当ある。昨年末の「感染源が解明されないことは、そんなに大きな問題か」という武部農水大臣の発言は、不信をあおる無責任な発言です。輸入肉骨粉など国内での流通経路や飼料原料などを徹底的に調査して、BSE感染原因を究明することが大事です。原因はこうだったと情報を公開しなければ、国民はいつまでたっても信用しないわけでしょ。
原因究明が終わってない段階での「安全宣言」は、消費者に対する欺まんだと思います。私は北海道のBSE対策会議で「消費者を安心させるために、国や道が徹底して原因を特定して発表してほしい。それが解決しない段階での安全宣言はまだ早い」と発言しました。原因究明をしてこそ、全頭検査が生きてくると思います。国民誰もが納得する「安全宣言」をやってほしい。
私たちは昨年十二月、イギリスのBSEの権威であるリチャード・ノース博士を招いて研修会を開きました。ノース氏によると、イギリス政府の対応が後手に回ったため感染が拡大した。原因究明があいまいな段階で当局や政治家が「安全だ」と宣伝するほど牛肉の消費は落ちていったそうです。原因が肉骨粉だと分かり、大量の牛を処分しました。最終的には消費者も納得して、イギリスでの牛肉の消費量は回復したそうです。しかしそれはBSEの少ない国からの輸入牛肉による消費回復で、イギリスの酪農家は壊滅的な打撃を受けた。三十万のイギリスの酪農家のうち、六万人が離農し、残りの酪農家も全部赤字で、いまだに危機的状況だそうです。
私どもは、原因究明が尻すぼみになって迷宮入りになってしまうのではと心配しています。そうなったら、国民の不安が解消せず、消費も回復しない。徹底した原因究明と対策をとらなければ、結果的には、安全だと宣伝されている輸入牛肉にシェアを奪われ、国内の酪農・畜産はイギリスのように壊滅的になるのではという不安があります。地域経済も含めて日本全体の損失です。
生産者・消費者などが
力を合わせて安全な食料を
BSE問題で、経営悪化など経済的な打撃を受けている農家に対する補償や支援は切実な問題です。しかし、それでBSEのすべての問題が解決するわけではないのです。信頼回復まで長くかかるほど、農家はじり貧になってイギリスと同じになるでしょ。だから、飼料メーカーの人たちも感染源究明のため、安全な食料を守るために、もっと積極的に取り組んでほしい。消費者の信頼が回復すれば消費は回復すると思います。そうすることが財政的にも一番安上がりになると思います。
一刻も早く感染源を含めて原因を究明して、二度とこのようなことは起こらない対策をたてることが必要です。安全・安心な食料という消費者の信頼を回復することこそが、この問題の解決への道です。そのために、生産者や食肉関連業界だけでなく、消費者、学者、行政など含めて、原因究明をはじめ問題の解決のために一丸となって取り組むことが大事だと思います。
そういう趣旨で、一月二十一日、「牛海綿状脳症(BSE)農業危機突破全道集会」を帯広市で開きました。生産者、消費者、焼き肉店など食肉関連業界の方々も含めて千五百人が結集しました。
生産農家や焼き肉店は深刻な現状を訴え、消費者は国の対策の遅れや不安を訴えました。そして、(1)感染原因の早期究明、(2)農家の経営損失補償対策の充実、(3)安全・安心な酪農畜産業の確立の三点を柱にした決議を採択し、協力しあって解決していこうと確認しました。(文責編集部)
雪印問題の緊急提言(要旨)
同様な不正が二度と起きないよう、牛肉など農畜産物及び食料品に対する表示制度の厳格化及び安全・安心の指導・監督機能の強化などを図るよう、下記事項を添えて提言します。
記
1.今回の雪印食品(株)による偽装事件の企業責任を告発するとともに、併せて、政府の責任も明確化すること。
2.国民の命である食料の安全性を保証するため、複数の省庁間にまたがる食品等の安全・表示制度の指導・監督機能の一元化を図るとともに、罰則規定の強化など法制整備を早急に行なうこと。
3.食品の安全と保健衛生を一元管理し、また、不正な行為を取り締まるため、新たな監督庁を速やかに設置すること。
2002年2月
北海道農民連盟委員長 信田 邦雄