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米国のランド研究所は、米空軍の委託を受けて「米国とアジア」と題する報告を作成し、今年五月十五日に公表した。
報告責任者の政権入り、軍の委託報告であることを考えると、この報告がブッシュ政権の対アジア政策に反映されると見てよい。
米国は五〇年代以来、アジアにおける軍事態勢をソ連と北朝鮮に向けてきたが、台湾海峡における中国との武力衝突にそなえて軍事態勢を南へシフトすべきだ。報告はこう述べて、日本が自国の領土防衛の範囲を超えて軍事作戦に参加できるような憲法改定、沖縄南部の下地島空港の米軍基地化に言及している。
米国の危険な戦略、それに追随する日本政府の安保・外交政策が、もっと国民の知るところとならねばならない。そのために、報告の全体像がわかる「要約」と「第四章」の沖縄にかかわる部分を紹介する。あわせて、月刊「日本の進路」6月号の「米軍機、下地島・波照間に着陸強行」をお読みいただきたい。
(資料)米ランド研究所報告の抄訳(文責・訳 編集部)
【要約】
アジアはこの二十年間、著しい変化をとげてきた。米国による安全保障と米軍プレゼンスの下で、巨大な経済成長、民主制度の拡大、相対的平和を享受してきた。アジアは一九九七〜九八年の深刻な景気後退で打撃を受けたが、インドネシアを除くほとんどの国が立ち直った。
米国はアジアが経済発展、民主化、地域平和の道を歩み続けることに大きな利害を持っている。しかし、アジアは平和と繁栄の構造を乱しかねない重大な問題に直面している。インドそして特に中国は世界に地位を占めようと台頭しつつある国家であり、地域秩序を瓦解させる可能性がある。同時に、インドはパキスタンと係争中で、双方は核兵器をもっている。パキスタンは深刻な統治危機にも直面している。北京は貪欲に台湾をにらみ、言行ともに台湾に威嚇的姿勢をとっている。東南アジア最大のインドネシアは、民族的宗教的な緊張に引き裂かれ、分解の可能性もある。マレーシアとフィリピンは国内に政治不安がある。好ましい政治傾向にもかかわらず、朝鮮半島の軍事対立は六十年目に入った。
米国はアジアの平和と安定を確実にするため、数々の重大な挑戦に首尾よく対処しなければならない。中でも、目前の課題は朝鮮だ。北東アジアで、北朝鮮に対する抑制と防御の態勢を続けなければならない。しかし、長期的には朝鮮半島の政治的統一、南北和解、あるいは北朝鮮の体制崩壊により、北朝鮮の脅威は消滅し得る。金大中と金成日による二〇〇〇年六月の首脳会談は、アジアの政治軍事情勢が予想以上に急速に変化することを証明している。
朝鮮の脅威が続くとしても、他のアジアは米国の戦略と軍事態勢の大きな修正を必要とする方向で変化している。最も重要な変化の一つは、中国の台頭、その軍事力現代化計画、東アジアにおける役割増大である。その結果、中国による対台湾武力行使の可能性にどう対応するかが、短期的問題として浮かび上がってくる。長期的には、特に中国が地域大国の政策を追求すれば、中国の力の増大が地域および米国の戦略と軍事力に重大な意味をもってくる。
だが、この地域で重要な変化が起こっているのは、朝鮮と中国だけではない。インドも地域の政治軍事面で大きな役割を担い始めた。しかも、パキスタンが支援するカシミール反乱に直面しており、状況は双方が一九九八年に実行した核実験で一層危険になった。東南アジアでは、スハルト体制崩壊による混乱、分離運動や市民紛争により、インドネシアの領土保全と安定が不確実さを増している。インドネシアは東南アジア最大の国として、地域全体に大きな衝撃を与えかねない。さらに、日本とロシアは政治・軍事的地位の向上に意欲的だ。統一朝鮮が実現すれば、地域でより大きな政治・軍事的役割を演ずるだろう。統一しなくても、韓国はより活発な地域政策を行うために経済的、技術的、軍事的資源を発展させるだろう。
米国の目標
米国はこれらすべての潜在的挑戦に対処するため、包括的な地域戦略の形成を始めなければならない。この地域における米国の全般的・長期的目標は、戦争につながりかねない対立、疑心暗鬼、不安定の増大を阻止することだ。そのために、三つの二次的目標が必要となる。
●地域覇権国の台頭を阻止する。アジアのどんな潜在的覇権国もアジアにおける米国の役割を掘り崩そうとし、要求実現に武力を行使する可能性がある。敵対勢力がアジアの人的、技術的、経済的資源を得て地域を支配すれば、グローバルな挑戦に乗りだし、国際秩序を脅かすだろう。
●安定を維持する。安定はアジア繁栄の基盤となってきた。アジアがもっと繁栄し、まとまりたいならば、各国は平和的発展のために自由を重視しなければならない。
●アジアの変化を管理する。米国はアジアの全ての論争に積極的に関われないかもしれないが、事態がコントロール不能とならぬように影響力を行使することはできる。
さらに、米国はこの地域全体への経済的アクセスの維持・拡大を望んでいる。これは、この数十年間、地域の繁栄を支えてきた自由貿易に好ましい政策の継続を意味する。
米国の戦略
新たな均衡をめざして
以上の目標達成には、政治、軍事、経済の総合的戦略が要求される。その前提条件は米国のグローバルなリーダーシップの継続である。だから、米国がグローバルな優越性を確保するため、必要な政治的、技術的、軍事的投資を行うのは当然だ。経済的には自由貿易政策の拡大、中国を含むWTOの拡大を引き続き支持して、アジアの発展を促進すべきだ。
政治・軍事的な意味では、四つの部分からなる戦略が求められる。
第一に、包括的なパートナーシップを創設するため、二国間の安全保障同盟を深め、拡大すべきだ。多国間化は二国間同盟を補完し、最終的には米国、日本、韓国、オーストラリア、そしておそらくシンガポール、フィリピン、タイが含まれる。だが、まず初めは同盟国間の信頼を促し、同盟国が地域の危機に連合して対処し得る軍事力を創るよう奨励する必要がある。例えば、日韓関係の改善は、両国が将来、安全保障問題で協力するのを促進することになる。さらに米国は、日本が領土防衛を超えて安全保障範囲を拡大し、共同作戦支援の適切な能力を獲得できるよう改憲努力を支持すべきだ。
第二に、アジアの主な台頭国またはカギを握る国家(中国、インド、最近は弱体化したロシア)の間の力の均衡戦略を追求すべきだ。これらの国は米国の同盟国ではない。この戦略の目的は、これらの国のいずれかが地域の安全保障を脅かしたり優位に立つことを妨げ、同時にこれらの国が手を組んでアジアにおける米国の戦略的利益を損なうのを阻止することにある。アジアの主要国の間で安定した力の均衡を発展させるには、政治的、戦略的な機敏さが要求される。ワシントンは、米国の戦略的利益に挑戦しそうもない国以外の全ての国との、政治的、経済的、軍対軍の関係強化を追求すべきだ。
第三に、米国は武力行使を誘発するような状況に対し、態度を明らかにすべきだ。例えば、中国の対台湾武力行使(同様に台湾の独立宣言)への反対を明確に表明すべきだ。同時に南シナ海における領土紛争の解決に努め、武力行使に反対し、航行の自由と運営規則厳守に関与することを強調すべきだ。米国はまた、インドネシアおよび他の東南アジア諸国の結束、安定、領土保全を推進し、安全保障協力と相互運用性を助長すべきだ。同様にカシミール紛争の平和的解決を促し、地域核戦争の勃発阻止に影響力を行使すべきだ。さらに、ロシアが北方領土での日本との紛争を解決するよう促すべきだ。
(原注)米国が台湾などの問題で中国と紛争になれば、米軍は戦域弾道ミサイル、情報などの作戦能力、 核兵器で米国を攻撃する能力を持つ相手に直面することになる。米国の重要な目標は中国を敵にまわさないことだが、将来のある時点で中国の敵対行動に直面して軍事力を東アジアに投入しなければならない場合に、米空軍はこの軍事能力にどう対抗するのか、よく考えておかねばならない。
第四に、米国は全アジア諸国の包括的な安全保障対話を推進すべきだ。この対話は地域紛争について討議の場を提供し、信頼を醸成するだけでなく、これらの国がいつか多国間の枠組みに入るのを促す。米国はまた、米国や同盟国だけでなく地域の多くの国にも関わる挑戦に対処する一時的連合のため、できるだけ多くの国と柔軟な関係を保つべきだ。
(原注)この安全保障対話は、嫌がるアジア諸国を説得して、中国を怒らせるような協力にもたずさわらせる上で重要だ。
新軍事態勢をめざして
アジアにおいてこのように広範囲で柔軟な戦略を実行するために、米国の軍事態勢を大きく修正する必要がある。五〇年代以来、米国はアジアにおいてソ連と北朝鮮に焦点をあててきた。この態勢を大きく南へシフトする必要がある。もちろん、これは北東アジアにおける現存の安全保障諸協定の放棄を意味しない。朝鮮半島の対立が終わっても、韓国と日本に基地を維持することは米国の利益になるからだ。日本での基地態勢を修正し、琉球諸島南部に米空軍戦闘機の前方作戦基地を確立すれば、中国との戦闘で台湾を支援する場合、非常に役立つ。だが、これは日本で政治問題となるかもしれない。
米国はアジアの他の所でも現存の協定を固め、新たな協定を追求すべきだ。例えば、マニラは米国との関係改善に関心をよせており、フィリピンへの配備は同国を魅力的なパートナーにする。長期的には、ベトナムがシンガポールやタイ以上の便宜を米軍に提供する可能性がある。
南アジアには多くの違った挑戦がある。南アジア自体が危機的で、世界で最も核戦場になりそうな地域だが、アジア本体と中東・中央アジアを結ぶ重要な地域でもある。しかし、米国は近年この亜大陸への信頼できるアクセスを持っていない。軍政下にあり、内部崩壊の危機にあるパキスタンは信頼できるパートナーになり得ない。米国とインドの関係はポスト冷戦初期の段階で、過去の遺産である違いや躊躇を克服しなければならない。基地の可能性という点では、オマーンはインド・パキスタン国境まで五百海里で、最も近い国の一つである。オマーンは米国との関係が良好で、同盟国である上に基地インフラがよく発達している。
米国とアジアの中核的パートナー(日本、オーストラリア、韓国)の間で首尾一貫した安全保障協定の網を形成するには、政治的ステップと共に軍事的ステップが必要だ。これらの国をすべて含む演習の拡大、計画立案フォーラムの確立、そして要員や技術の相互運用性を高める装備標準化が必要となる。特に効果的なのは、米国とこれらの国が戦略、作戦、戦術のレベルで情報を共有する手順や機構を確立することだ。
西太平洋における米国の全軍事態勢にとって、次の三つの措置は有益だ。
第一に、アジア全域に軍事力を投入する主要なハブ基地として、グアムの基地を構築する。…略…。
第二に、米国の空軍と海軍は、将来の太平洋危機において、統合軍として統一司令部に最良の手段を提供できるように、新たな作戦概念の発展に努力すべきである。…略…。
第三に、米空軍は将来の戦力構成を見直すべきである。…略…。
【台湾(第四章の抜粋)】
朝鮮戦争に比べて、台湾有事のシナリオになれば、米空軍はあまり試されていない多くの問題、このシナリオに迅速に対応するため急いで解決しなければならない問題に直面することになる。しかし、可能性のあるこの軍事的任務の考察は、政治的に敏感な問題だというだけでなく、衝突のシナリオの態様がはっきりしないために複雑である。
短期的には、中国が台湾侵略を俎上にのせる能力があるとは見えない。中国が台湾への武力行使を決断するとすれば、台湾が何らかの和解を求めるようにさせる政治的・心理的効果を計算したもの、というのが最もありそうなことだ。その方法は様々なので、米軍が中国の攻撃から台湾を防衛するのを援助する任務を与えられれば、中国がどんな方法を選択しようとその効果を無にするように考えなければならない。
侵略以下の行動として、中国がとる可能性のある行動には次のものが含まれよう。
●挑発的な演習や実験(例えば、台湾の主要港近辺海域への、一九九六年のミサイル実験)
●台湾近辺あるいは上空での挑発的な空軍活動
●台湾への小規模なミサイル攻撃
●台湾経済の損傷、台湾の自衛能力の低下、及び住民の士気喪失を企図する大規模なミサイル攻撃
●機雷敷設によるシーレーン妨害、商船への潜水艦攻撃、及び港湾封鎖
●離島、ペスカドール諸島(台湾海峡)の一つまたはそれ以上の島、あるいはタイピン島(南シナ海に台湾が領有)等の占領
●台湾の軍事能力破壊を企図するミサイル攻撃と空襲
この選択肢のどの一つも、中華民国政府を降伏させるには不十分で、おそらく降伏をねらうものでもないだろう。むしろ、その目的は、台湾住民の士気を喪失させ、金融・経済を荒廃させ、「一国二制度」に対する中華民国の抵抗を崩すことにあろう。したがって、米軍の行動の要点は、第一義的に中国が加える心理的圧力に対抗する軍事行動であり、台湾の二主要港近辺の水域を目標にした中国のミサイル実験に対抗して、一九九六年に行った二空母群の急派のような行動である。台湾に圧力をかける中国の攻撃戦に対して、米国の対抗措置は次のことを企図すべきだ。つまり、中国が軍事力行使をエスカレートして台湾を軍事的に敗北させることはできないと台湾を安心させること、台湾の経済その他の資産防衛を援助すること、そしてより一般的には台湾の士気を強化してパニックを防ぐことである。
それゆえ、米国の軍事支援は、台湾の抵抗意志がなえ始める前に、中国の軍事行動によるショックを急速に中和するために有効でなければならない。米国がどんな軍事的対抗措置をとっても、台湾を悩ます中国の能力に影響を与えることはほとんどできないが、その心理的効果を打ち消すことはできるし、少なくとも部分的には可能だ。
将来、中国との衝突で台湾支援の選択肢を確保するため、米空軍の計画立案者は東シナ海に投入すべき軍事力の作戦要件を把握しておかなければならない。どんな台湾有事のシナリオでも米空軍が直面する決定的な問題は基地である。台湾海峡の中央から半径五百海里の円内は広大な大洋域で、陸地は中国本土を除けばほんのわずかしかない。短期的には、基地を台湾か日本におく二つの選択肢がある。
(原注)五百海里は、F15、F16、F22のような米国の戦闘機が燃料補給なしに戦闘できる半径。在韓 米軍基地は台湾海峡から八百海里以上、三沢は千四百海里以上、グアムは千五百海里以上の距離にある。戦闘機はこれらの範囲から作戦できるが、十分な空中給油機や追加要員が配備されなければ、出撃率は重大な低下をこうむる。
台湾に米軍基地をおくことについて、台湾は肯定的だから、決定的な問題は台湾が米国の基地使用を認めるかどうかではない。大陸と危機的になった時、米空軍機が台湾に駐留することほど台北にとって幸せなことは考えられない。しかし、そのような時期に、米軍が台湾に到着するのを眼前にすることほど北京を怒らせることも同様に考えられない。台湾への外国軍配備は、爆発寸前の危機を公然たる衝突へ転化する引き金となる。だから、台湾に米軍基地をおくことは、政治的に危険で非現実的な選択肢である。
作戦上の見通しからも、台湾に基地をおくことは同じように問題がある。悲劇的な政治的結果を避けるため、実際の敵対行動が始まるまではいかなる配備もすべきではない。なぜなら、そのような配備は、中国のミサイルや航空機による重爆撃、特殊作戦部隊の強襲の下にある航空基地に米空軍機を駐留させることを意味するからだ。空軍はそのような条件下で作戦を開始し継続する実践的な経験はほとんどない。たとえ米軍機の到着時に作戦基地が攻撃下になかったとしても、配備部隊は中国のあらゆる攻撃の標的になる。
また、台湾基地のインフラも限られ、高速戦闘機の活動を支えるように設計されているのは六〜八基地にすぎない。もちろん、中華民国の空軍部隊が基地のほとんどを占めて使用している。その基地を訪ねて台湾の将校と議論した経験によれば、これらの基地は外国の遠征軍を収容できるように建設されていないし、予定もされていない。サウジアラビアと違い、米軍機が簡単に移動して利用できる臨時の設備はない。
さらに、これらの基地は大規模な攻撃に対する運用性や持続性は限定的だ。例えば、基地は地上の燃料貯蔵所やタンク車による燃料補給に依存し、NATO基地で使われている埋設パイプラインやシェルター内の給油栓のように攻撃に耐えられるシステムではない。我々は訪ねた基地でミサイル攻撃に弱い修理や管制の設備を見た。台湾基地は迅速に滑走路を修復する点でもほとんど限られた能力しかない。中国の短距離弾道ミサイルの数が増え精度も良くなっている時に、台湾基地は生存に必要な改善がなされておらず、攻撃に対してますます脆弱になるだろう。
台湾に基地をおくことが政治的、軍事的に軽率だとすると、日本はどうだろうか。中国が侵略者として明白ならば(すなわち、台北が独立宣言のような挑発的行動をとらないならば)、日本は台湾防衛の一定の作戦のために米国が基地を使用するのを許可するだろう。しかし、日本の基地からの軍事力投入には厳しい制約がある。例えば、日本の領域から発進する中国本土攻撃について、東京は許可の決断をなし得ないだろう。それでも、我々の判断では、公海上空あるいは台湾領空での中国軍に対する作戦ならば、日本が施設の使用を許可する可能性はある。
しかし、嘉手納基地は台湾海峡から約五百海里離れている。その結果、嘉手納基地から作戦に出るF15、F16戦闘機は、中国機の台湾攻撃の警報に応じた発進や飛行ができないから、台湾近辺の戦闘パトロール路を確保する必要がある。これは台湾東岸五十海里沖の空母とは対照的で、空母の艦載機は海峡の中心までわずか百七十五海里飛ぶだけでよく、攻撃にもっと敏速に対応できる。
嘉手納は、戦闘機の大部隊による速いテンポの作戦を支える能力が限られている。嘉手納は現在、総数四十八機からなるF15C戦闘機の二飛行部隊、特別作戦群、空中給油機部隊、偵察機部隊、AWACS部隊、それに捜索救難機部隊の基地である。さらに、西太平洋における航空作戦の重要な輸送拠点である。つまり、嘉手納は連日多忙な基地で、戦闘中はどれだけ多くの航空機が作戦に飛び立つかわからない。
偵察機や重爆撃機のように航続距離の長い航空機は、グアムから台湾の防衛を支援することができる。ハプーン対潜ミサイルを装備したB52は台湾海峡における中国の海洋作戦を打ち破る上で重要な役割をはたせる。しかし、効果的な戦闘機作戦を支援しようとすると、日本に代わる選択肢はほとんどない。
創造的な空海軍統合作戦は短期的な選択肢の一つになる。例えば、空軍は遠方の基地からの長距離機を使って情報、監視、偵察、戦闘管理、支援機能(例えば給油機)を提供し、海軍は空母艦載機を制空権や防空施設鎮圧のために使う。そのような取り決めにより、外国基地へのアクセスを促進しながら(外国基地は戦闘機のためよりもむしろ支援のために使われるので)、公海における空母の作戦の自由を活用する。重爆撃機はグアムの米国領から作戦できる。
長期的に、空軍はより強力な台湾支援の態勢を発展させる努力をすべきだ。一つの措置はフィリピンとの協力を拡大することだろう。マニラは台湾海峡から約六百五十海里だが、ルソン島北部の基地は約四百五十海里で、嘉手納よりも台湾海峡に近い。バターン島は約三百海里でもっと近い。米国がフィリピンで恒久的な基地を獲得するのは難しいが、最近のワシントンとマニラの関係改善によってアクセスが増大する可能性はある。中長期的な米空軍の目標は、現在シンガポールと結んでいるのと同じような取り決めをフィリピンと結ぶことだ。それは米国の恒久的プレゼンスを意味するものでないが、頻繁な交替配備が認められる。そうした配備でインフラは改善され、施設はいつでも使える状態に保たれ、有事に迅速な作戦を開始できる。
北の方では、日本との緊密な安全保障関係を活用する選択肢がある。海兵隊の削減ないし廃止を条件に、普天間の海兵隊基地を空軍戦闘機の共用作戦基地にできないものか、その可能性を調査すべきだ。この基地は平時は暫定的な基地だが、有事には戦闘機や支援機の急速な流入を受け入れられるようにする。伊江島の海兵隊補助空港も利用できる。空軍は那覇の航空自衛隊基地に装備を配備することもできるだろう。
沖縄本島は琉球諸島の真ん中に位置し、さらに南西の台湾近辺に多くの島がある。例えば、下地島は台北から二百五十海里未満の距離にあり、一万フィートの滑走路をもつ商用空港がある。この島には日本の巡視船基地に使われているかなり大きな港もある。琉球諸島南部に基地をおけば明らかに台湾防衛に都合がよい。しかし、滑走路の拡張、装備貯蔵施設の設置など、十分な施設にどれだけの投資が必要かは定かでない。
(原注)フル装備のF15Cには七〜八千フィートの滑走路が必要。
空軍の基地態勢の拡張、少なくとも南方へのシフトが東京の観点から可能かどうかは、今後の判断に待たなければならない。米軍基地は長い間、日本の政治で論争の的になってきた。新基地を建設する試みは間違いなく論争を引き起こす。特に沖縄県が環境に優しい休養地として推進しようとしている琉球諸島南部で空港使用を求めればなおさらだ。
琉球諸島南部に米国のアクセスを許可することに対する抵抗を克服する一つの方法は、日本政府とくに沖縄の人々にその代償を提案することである。海兵隊撤退など在沖米軍の撤退ないし削減は、台湾海峡という紛争水域周辺の重要な地域に足場を得るために、ワシントンが払ってもよい代価となり得よう。