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都立養護学校の扶桑社版歴史教科書使用決定について

撤回の申し入れ

東京都知事       石原 慎太郎 殿
東京都教育委員会委員長 清水 司   殿
東京都教育長      横山 洋吉  殿 

     申 入 書


 八月七日の教育委員会において、東京都立養護学校のうち、二校一分教室で来年度から使用される教科書として、扶桑社版「新しい歴史教科書」を使用することを決定したそうですが、私たちは、都民として、この決定に対し、怒りをもって厳重に抗議し、この決定を撤回されることを要求します。
 扶桑社版教科書は、検定中から、さまざまな問題を引き起こしてきました。内容的には、太平洋戦争における日本軍の行為を美化し、かつての日本の犯した過ちを隠蔽する一方、人権や民主主義を軽んじるものであり、今日の社会の流れに逆行するものです。
 また、ぜがひでも採択してもらおうと、採択関係者に対する見本本の贈呈や、他社教科書の誹謗・中傷など、不公正な、なりふりかまわぬ活動を繰り広げてきたことも問題になっています。
 現在全国の各自治体において、教科書選定の作業が進行していますが、現在のところ、「扶桑社版」を採択した自治体は一つもありません。このような教科書が公教育の現場で採用されるべきでないとした、各地の教育委員会の判断はきわめてバランスのとれた良識的なものであると思います。
 都内においても、各自治体が次々と、扶桑社版教科書の不採択を決定しています。健常児の通う公立中学校では使用に適さないとの判断が下されているのです。それなのに、なぜ、都立の養護学校でのみ、扶桑社版をあえて使用しなくてはならないのでしょうか。
 人権尊重について率先して都民に啓蒙すべき立場にある東京都教育委員会が、人権についての記述が最も少なく内容的にも問題のある教科書を、特に障害児に対してのみ使用する意図は何でしょうか。
 東京都教育委員会が、このたび、養護学校での「扶桑社版」の使用を決定したことは、日本全国に大きな影響を与えるばかりでなく、国際的にも批判を浴び、わが国外交に取り返しのつかない打撃を与えることになります。
 知事ならびに教育委員会が、こうした問題についてもう一度熟慮され、今回の決定を撤回されることを要望いたします。

   二〇〇一年八月八日
        自主・平和・民主のための広範な国民連合・東京世話人一同