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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2001年8月号

「つくる会」教科書、不採択相次ぐ

広範な運動でアジアの共生を勝ちとろう


「つくる会」策動に反撃

 来年度から中学校で使用される教科書の採択をめぐり、「つくる会」教科書への反撃が広がっている。
 栃木県の下都賀地区の教科書採択協議会は七月十一日、扶桑社の教科書を採択する方針を決めた。これに対し全国から抗議の電話やFAXなどが相次ぎ、地区内の十市町には一万件を超える意見が寄せられた。
 地区内の二市八町の教育委員会も協議会の方針を次々と否決、不採択を決定。異例の再協議となり、その結果、扶桑社の教科書は不採択と決定された。
 「『つくる会』教科書を選べば地方議会で追及されるという程度のことは予測していたが、これほど全国的に問題になるとは思わなかった」(協議会関係者)というコメントが示しているように、「つくる会」の策動に対し国民の運動は大きく反撃し、「つくる会」勢力に大きな打撃を与えている。
 扶桑社教科書の採択が心配されていた東京・杉並区では、採択期間中に区の教育委員会に五百件の意見・要望が寄せられた。市民団体などが審議会場を取り囲む中、扶桑社教科書の不採択が決定された。
 子どもと教科書全国ネット21のまとめによると、全国五百四十二地区のうち約三〇%ですでに扶桑社教科書の不採択が決定している(七月二十七日現在)。また、北海道、栃木、群馬、新潟、静岡、徳島、佐賀、沖縄の八道県では全地区で不採択となった。つくる会は当初、「シェア一〇%」を目標としていたが、すでに目標は破綻、「つくる会」のホームページにもこの目標は掲げられなくなっている。

歴史の歪曲に批判高まる

 歴史の事実を歪曲した歴史教科書を日本政府が検定に合格させたことで、アジアだけでなく世界中から批判が高まっている。
 百五十五カ国の教職員組合が参加する国際組織「教育インターナショナル」は七月二十八日、タイで開かれた総会で日本の歴史教科書問題に関する緊急決議を採択した。決議では日本政府に対し「戦争や植民地支配を賛美する教科書の修正」などを求めている。
 また七月十日には、アメリカをはじめ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、ニュージーランド、オーストラリア、アイスランド、ベルギー、ルクセンブルグ、インド、香港、中国、韓国、台湾などの学者による「二〇〇二年度版日本の歴史教科書に関する国際研究者声明」が発表された(七月十日現在、百九名の連名、その後も連名者は増加)。
 声明では「日本の文部科学省が、平和、正義、真実といった価値を踏みにじる教科書を、検定合格させたことに抗議」し、「『新しい歴史教科書』は、教育の道具として不適切です…植民地主義と戦争における日本の過去についての真実の記録を否定し、…盲目的で好戦的な拝外愛国主義に立ち、著者たちが言うところの自国の『明るい』部分を過度に強調し、『暗い』部分を無視することによって、日本とアジアの歴史を根本的にゆがめるものとなっています。…この教科書が生徒を誤った方向に教育し、日本と日本の侵略支配を経験した近隣諸国との関係を害する結果となること」への憂慮を示している。
 この声明が憂慮したとおり、日本とアジア諸国、特に韓国との関係は悪化している。
 韓国政府は七月十二日、防衛交流中断や大衆文化開放の中止などを発表。また十三日には日本との教員・学生交流事業の全面的な再検討を行うことなどを発表した。これを受けて、全国で日韓交流の中止・延期が相次いでいる。毎日新聞によると、中止・延期した事業は七月二十日現在、三十九都道府県で百二十五件に上った。そのうち約八割が学校関係で、ホームステイや相互訪問、修学旅行などが中止されるケースが目立っている(詳しくは「日本の進路・地方議員版」十二号参照)
 姫路市では十七日、友好姉妹都市の韓国・馬山市への中学生派遣が中止された。二十五日の出発予定で、参加する生徒らはハングルのあいさつをマスターし、韓国の風習を本で勉強したり、現地の受け入れ家庭に、自己紹介の手紙を送ったりしていたという。
 次代を担う若い世代が、近隣諸国の人びとと交流し、理解を深めることは、将来にとても重要な意味があるだろう。アジアに位置する日本は、きちんとアジア人びとと向き合い、また日本とアジア諸国の間にある過去の事実についても向き合わなければならない。そして誠実に対応すること、これなしにアジア諸国と信頼関係を築くことはできない。

真のアジアの共生をめざして

 「つくる会」が主導する歴史教科書は、過去の事実を歪曲し、日本とアジア諸国との関係を壊すものである。それは、今後の日本の進路を誤らせるものである。
 韓国・中央日報の社説(七月十九日)は、日本国内の運動について、「『つくる会』の教科書に反対する講演会を全国二百九十六地域で開くなど、日本市民運動史上、前例のない大規模な運動を繰り広げた。…数多くの知識人らも、声明と寄稿、講演会などを通じて歪曲教科書反対運動を行なった。その結果が全国的な『つくる会』教科書拒否の波として現れているものとみられる。生きている日本市民の良識に拍手を送りたい」と評価。
 「相互理解の幅を広めながら良識ある日本市民を鼓舞させ声援する民間レベルの韓日交流は、むしろ拡大・奨励されなければならない」(同社説)とあるように、アジアとの交流を通じて相互理解を深め、「つくる会」のような反動勢力の策動を許さない国民運動をつくろう。


韓国の学生のアンケート
日韓のつどいから(和訳、抜粋)

 私は独立運動の偉人伝や歴史の本を読み、日本人がわが民族とわが国に対して行った蛮行について知り、幼い頃から日本に対する強い敵愾心を持っていた。自分の過ちを認めず、正当化する彼らが限りなく憎かった。そして、昔のわが先祖たちがいなければ、今の日本が存在もしなかっただろうという考えを持っていた。しかし日本文化に接しながら、過去にのみ執着して現実をまっすぐに見れない自分を知るようになった。今の日本は経済大国で、文化先進国だ。日本と私たちは過去の歴史を整理して、ともに歩まなければならない。過去にのみ執着して日本の文化を拒否するよりは、彼らの文化を学んで自分たちの物にし、日本とともに発展していくべきだ。しかし、過去の歴史にフタをして通り過ぎようというのではない。日本は私たちに謝罪と被害者に対する補償をしなければならない。そして、これ以上この問題を時間に任せてはいけない。…昔から日本の極右勢力は、韓国に対する植民地支配を正当化しようとした。これは日本に対するわが民族の反感を買い、二国間の摩擦を生みもする。…日本国民とわが政府、わが民族は知りながらも傍観してきたのではないのか。このような事件が起こるたびに無関心で、若干の関心も時間がすぎれば忘れ去るということを日本の極右勢力が狙っていたのではないのか。…昔は、一般的に日本全体に対する強い敵愾心を持っていたが、日本でも一般市民と市民団体が、「つくる会」の教科書は良くないと批判していたと知った。このような人びとがもっと現れれば日本も変化するのになと思った。…今の歴史教科書歪曲問題をどのように解決するかによって、二十一世紀の韓国と日本の関係が決定される。どうか二十一世紀には、今のような韓国と日本の対立がなければと思う。