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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2001年7月号
米原潜の「えひめ丸」沈没事件、
二家族の弁護団が米と補償交渉
米原潜と実習船えひめ丸の衝突事故で、行方不明者二人の家族が委任しているえひめ丸被害者弁護団(豊田誠団長)は六月十八日、神奈川県横須賀市の在日米海軍太平洋地区法務局で米海軍側との初交渉に臨み、事故に関する資料の全面公開などを求める要請書を渡した。同弁護団の代理人弁護士は「真相の究明と補償交渉は切り離せないもの。米側は、ワシントンの担当者に伝えると話していた」と語った。事件の真相究明は日本政府も追及して、ぜひとも解明してほしいところだ。
ところで、アメリカ側の事故処分に対して、地方新聞には批判的な社説がある。中でも、山陰中央新報の四月二十三日付け論説は米原潜に同乗していた民間人の役割について触れ、次のように書いている。「最大の問題は、この航海自体が民間人を搭乗させた体験航海のためだった事実である。この航海がなければ事故は起きなかったし、不注意なミスもなかった。搭乗した民間人ら十六人はほとんどが戦艦ミズーリを記念博物館として保存する資金集めに積極的に参加した人たちだった。保存事業を進める『戦艦ミズーリ記念協会』の名誉会長はブッシュ元大統領。米海軍は、軍法会議でこうした軍隊をサポートする構造が公に論議されることを避けたのではないか。ブレア米太平洋軍司令官は先に訪日した際『説明責任を尽くし、結論を急がない』と言明した。今後、処分決定に至る過程を情報開示、家族らに十分な補償をしてほしい」。
中国新聞は四月二十二日の社説で「事故の決着として多くの疑問が残り、腑に落ちない」「これほどの重大事件は統一軍法典による軍法会議にかけられるのが通例で、なぜ避けたのか合点がいかない」「日本の刑事事件に置き換えれば起訴猶予、依願退職の扱いだ。過失なら程度の大小にかかわらず刑事責任を一切問わないというのは、人権を重んじる国と言えるだろうか」「底流にある軍事優先、軍人保護の体質を問う方法が求められる」と不満をぶちまけ、「米メディアの多くが『事故調査は中途半端、不満足』『前艦長をスケープゴート』『説明責任を果たさない海軍体質』などと社説などで批判していることに、米政府はこたえるべきだ」「日本政府は被害関係者や国民が納得できる説明を米国に求めるときだ」と日米両政府に要求している。
神戸新聞(四月二十五日)も多くの疑問と不満を投げつけ、日本政府の態度を「日米の同盟関係をおもんばかりすぎた」と非難している。「この処分内容では、事故はだれの責任で起きたのか判然としない」「提督裁決では過失致死罪を問わなかった。なにゆえだろうか」「事故は潜水艦の一方的な過失で起きた。にもかかわらず過失致死罪が問われないのでは納得できない」「前艦長の処分にも、危険の多い体験航海を容認してきたことにも、責任の所在をぼやかした印象がぬぐい切れない。やはり軍法会議を開き、責任の所在を徹底的に追及すべきだった」「日本政府は日米の同盟関係をおもんばかりすぎたのではないか。米軍に言うべきを言い、被害者が納得できる解決を目指しただろうか。後味の悪い結末が、そんな疑問を抱かせる」。
琉球新報(四月二十六日)は「軍の処分は、行方不明の高校生らの肉親、関係者には到底、納得できないものだ。軍の論理が大手を振ってまかり通ることは、将来の日米関係に決してプラスにならない」「復帰前の沖縄で私たちも同じ経験をしたことがある」「加害者が米軍関係者、被害者が沖縄住民の事件が米軍当局によってあいまいに処理されたり、軍法会議が開かれても、そこで一方的に加害者の米軍関係者に無罪判決が言い渡されたケースもよくあった」「民間なら業務上過失致死罪にも当たる事故である。米軍統治時代の事件処理を想起させた」と、沖縄の経験を引き合いに出して、現在の日本が「米軍統治時代」とあまり変わっていないことを示している。