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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2001年5月号
二〇〇二年度から使用される中学校の教科書問題で文部科学省は、「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史と公民の教科書を合格とした。国内だけでなく、アジアからも反発が高まっている。アジアの共生・日本の進路にかかわる課題である。各地で、つくる会の教科書を採択させない取り組みが重要になっている。文責編集部。
・憲法・教育基本法にそった教科書の採択を求める緊急集会
・愛媛「いま、教科書があぶない」緊急講演会
憲法・教育基本法にそった教科書の採択を求める緊急集会
四月十四日、東京で「市民の力で憲法・教育基本法の理念にそった教科書の採択を求める四・一四緊急集会」が開かれた。主催は、教科書問題を考える実行委員会(代表委員は日高六郎、大田堯、山住正己、槙枝元文、榊原長一、江橋崇の各氏)で、百五十名が参加した。
主催者を代表して山住氏が「一九八〇年八月十五日の教科書問題の緊急集会が契機で『教科書問題を考える市民の会』を発足し、十数年間活動を続けた。この実行委員会を大きな市民運動のきっかけにしよう」とあいさつ。
琉球大学の高嶋伸欣教授が「『あぶない』教科書の『あぶない』内容」と題して基調報告を行った。
高嶋氏は、「日の丸・君が代法制化のときアジアでは『日本軍国主義が戻ってきた』と警戒心を強めていた」「八二年の教科書問題の時、『政府の責任で記述を訂正する』との官房長官談話で『近隣諸国条項』が入れられた。これは国際公約であり、『日本の教科書は検定制で民間が出した教科書に口出しはできない』という弁明は通用しない。日本人の自浄能力が問われている」と指摘した。
高嶋氏は、「つくる会」の歴史教科書の問題について「神話から始まり昭和天皇で終わる。神話と歴史的事実のごちゃ混ぜ。敗戦を受け入れる経過の小見出しは『聖断下る』で、そのまま検定を通った。沖縄戦の記述では『鉄血勤皇隊の少年やひめゆり部隊の少女たちまでが勇敢に戦って』となっている。ひめゆり部隊は看護婦の助手として野戦病院に派遣されただけで、武器を取って戦ったわけではない。これもそのまま検定を通った。沖縄タイムスや琉球新報では、一面トップで『ひめゆり部隊勇敢に戦った』『つくる会』執筆本合格、戦争美化の表現残る、と掲載され、連日のように県民からの怒りと批判の声を掲載している。二頁を使った昭和天皇のコラムも含めて、日本の軍隊のやったこと、その頂点に立つ天皇を美化する内容だ」と指摘し、「今年の四月二十九日は昭和天皇生誕百年目。憲法改正も含めて、日本国民を統治の絶対的存在であった天皇を神格化し、学校教育を通じて再び子供たちを思想コントロールし、天皇の名前で軍隊を海外に出したいという保守派のねらいが露骨に出てきている」と批判した。
公民教科書については、「阪神・淡路大震災と自衛隊、緊急医療援助隊等これでもかと自衛隊の写真が出てくる。政治分野を扱っている百十八頁の中に十枚も。他の教科書はせいぜい一、二枚。解説文は『懸命の救助作業にあたり、多くの被災者の力になったのは、まぎれもなく自衛隊員だった』と。彼らが何を強調したいのかがよく分かる」と指摘。憲法問題では、「『重要なのは国家に対する忠誠心と国防の義務。日本国憲法にはない』という記述が訂正されたため別の頁に『外国憲法では国民の崇高な義務として国防の義務が定められている」という一文を入れ、検定を合格した。この検定は意図的だと思う」と批判。
さらに「マッカーサーは、天皇の戦争責任を追及しない占領政策をとった。冷戦が終わり、再度昭和天皇の戦争責任について日本が自浄能力を発揮するのをアジアは待っている。ところが、逆に昭和天皇を神格化するような動きが教科書問題を通じて出てきた」と指摘し、「当面は彼らの教科書を採択させないことだが、あの教科書がなぜ出てきたかという背景も考えながら取り組む必要がある」と訴えた。
続いて福島県教組郡山支部の代表が、四年前に郡山市議会で「従軍慰安婦の記述の削除を求める陳情」が採択された取り組みを教訓に、「今回のつくる会の陳情に対しては県教組や市民団体の対抗請願、議会傍聴など様々な取り組みを展開し、対抗請願は採択、つくる会の請願は不採択に追い込んだ」「福島県九十市町村中、二十市町村でつくる会側の請願が提案されているが、現在のところ三市町村の採択にとどめている」と報告。さらに「つくる会の教科書が学校現場に一冊たりとも持ち込まれないよう全力で取り組む」と決意が述べられた。
最後に、佐藤康英・平和フォーラム事務局長が「市民の力で憲法、教育基本法を尊重した教科書を選ぶため、教科書問題を考えるネットワークを早急に作りたい。教宣物の作成、各地域での集会、ホームページ等を通じて世論を喚起し運動を広める。地方議会や教育委員会に対する取り組みも強化する。各地での教科書の展示に対しては、教科書センターに行こうという運動を展開したい」と今後の行動提起を行い、アピールを採択した。
愛媛
「いま、教科書があぶない」緊急講演会
去る四月二十二日〜二十四日にかけて、愛媛県下で「子どもと教科書全国ネット21」事務局長の俵義文さんを講師に、「いま、教科書が危ない」緊急講演会を開催しました。
二月下旬あたりから県下の市民運動、教職員組合、退職教師の会、OBGの会などに呼びかけて「新しい教科書と教育を考える市民ネットワーク・えひめ」を組織し、県下各地の連絡体制を整え、今回、松山、今治、新居浜、西条の四地区で講演会を持つことができました。参加者は松山五十名、今治三十五名、新居浜三十名、西条十五名とまずまずでした。
講演の内容は、「日本の進路」地方議員版・教科書問題特別号でも述べられているような事態が進行している、教科書を通じて戦争のできる国へしようと「つくる会」が自民党の意を受けて九六年頃から準備を進めてきたことなどが指摘され、「あぶない教科書、汚れた教科書を持ち込ませない、子供たちに使わせないようにしよう」と呼びかけるものでした。
この講演会を契機に広範な国民連合・愛媛も県下各地の運動体が作られていくよう努力したいと思っています。早速、四月二十六に今治市で、二十七日に愛媛県と松山市で教育長交渉を行い、テレビのローカルニュースでも流され、県内世論に一定の影響を与えました。
今後、各地区の教育委員会への申し入れや、抗議のハガキ作戦、現場の先生への働きかけを通じて、あぶない教科書を採択させない、教育現場に持ち込ませない運動を盛り上げ、「つくる会」の邪悪な意図を打ち砕きたいと思っています。全国のみなさんと共に愛媛も頑張りたいと思います。