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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2000年11月号
那覇市長選挙と米軍基地問題
新生・なは市民の会事務局長、那覇市議会議員 高里
鈴代
十一月十二日、沖縄県の那覇市長選挙の投開票が行われる。社民党や社会大衆党、連合沖縄は「新生・なは市民の会」を結成し前那覇市健康福祉部長の堀川美智子候補を擁立。一方、自民党と公明党は前自民党県議を擁立した。沖縄の米軍基地問題にも影響を与える市長選について高里鈴代・那覇市議に聞いた。
那覇市は平良四期、親泊四期と三十二年間、革新市政が続いています。
親泊市政の特徴の一つは、市民が主人公の開かれた民主政治、情報公開による透明性です。全国的には川崎市が最初だったと思いますが、那覇市の情報公開条例は早かっただけでなく質の高い情報公開でした。市長の交際費はもとより、市民が求める情報の公開を徹底して実行してきました。その情報公開条例に基づいて、例えば自衛隊基地内に建設している建物の建築許可の公開を求める市民に対して、情報公開しようとしました。これを差し止めようとする国との間で裁判になったこともありました。それほど徹底した情報公開を実施してきました。財政についても公開しています。透明性のある市政運営というのが基本的姿勢です。
二つ目は平和行政です。那覇や沖縄は地上戦という特異な戦争体験をもっています。那覇市は一九四四年の十月十日に大空襲を受けて壊滅状態になりました。そして四五年四月からの地上戦。人口も沖縄全体で四分の一が犠牲になりました。そういう壊滅状態の中で、戦後は米軍基地が建設され、那覇市全体の三分の一が基地として接収されるという中で戦後がスタートしました。
那覇市は県庁所在地の市であり、かつてはアジアの交易で栄えた琉球王朝の中心でした。現在も沖縄の玄関口です。政治と商業の中心都市であり、市民の物づくりの場でもある複合的な都市です。その那覇市の市政の中心に平和行政があるのは、戦争体験があり、基地を抱えた沖縄の状況があるからです。保守県政の時代も、那覇市の三十二年間の革新市政は基地問題を訴えていく上でリーダー的な役割を担ってきました。
四年前と八年前の選挙では、自民党は候補を立てることができませんでした。それは親泊市政が平和行政だけでなく、沖縄の建設業をはじめとして地元産業の育成に力を入れてきたからです。基地に大きく依存した構造を変えるため沖縄の経済的自立をめざしてやってきました。様々な公共事業についても分離・分割発注というやり方を明確に実施してきました。本土の大企業ではなく、地元企業に対して分離・分割発注する。ですから地元の経済界にとっても、親泊市政は高く評価されています。平和の問題をしっかり打ち出しながら、また憲法をしっかり堅持するという姿勢を明確にしながら、さらに経済の側面でも地元の信頼をえていました。その結果、三十二年間革新市政が続いてきました。
市政の中で野党であった自民党は市長奪還を願ってきました。親泊市政の与党であった公明党が今回、自民党と一緒になって翁長・前自民党県議を擁立しました。中央政府の政治構造に対応したもので、すでに県議会でも自民党と一緒に稲嶺県政の与党になっています。自民党那覇市議の中では別の候補を擁立する動きがありましたが、結果的には翁長氏擁立が決まりました。公明党の力が大きく働いています。
親泊市政を継承する候補として私たちは堀川美智子さんを擁立しました。堀川さんは那覇市役所に三十七年勤務し、女性室長や健康福祉部長などを歴任してきました。堀川さんは、平和、市民に開かれた民主市政、地元経済の自立など親泊市政の継承を掲げています。
相手の翁長氏は自民党の県議だった人です。市民の会と名乗り、市民本位といい、似たような街づくりや福祉の政策を出していますが明確な違いがあります。堀川さんは生活者の視点から市民本位の市政を訴えており、翁長氏は国や県との強いパイプを強調しています。
また米軍基地問題での違いは明確です。那覇軍港は一九七四年に返還合意がされ、那覇市はずっと全面返還を主張してきました。堀川さんも自分たちが受け続けてきた痛みを他の市に押しつけるような政策は取りません。全面返還を主張しています。一方、翁長氏は那覇軍港を隣の浦添市に移設して跡地利用をすべきだという姿勢です。那覇軍港問題だけでなく、翁長氏の姿勢は基地の容認、基地の県内移設容認、国や県の方針を受け入れ推進するという立場です。県議会で自民党が中心になって普天間基地の名護移設を採択した時の自民党幹事長が翁長氏です。ですから那覇軍港問題にとどまらず、沖縄全体の基地問題に影響があります。
今回、公明党が相手側に移り市議の数の上ではこちらは少なくなるわけです。しかし、堀川さんへの支持は従来の革新という枠を大きくこえて広がりつつあります。親泊市政を継承してほしいという期待だけでなく、いままで政治にあまり関心のなかった人、とくに女性たちの期待が高まっています。優れた行政手腕に加えて、福祉など堀川さんがこれまで培ってきた関係の中から県内初の女性市長誕生への期待が高まっています。
那覇市長選は単なる市長選ではなく、沖縄の米軍基地問題に影響を与えると思います。沖縄の基地返還を願う私たちにとって、朝鮮半島情勢をはじめいくつかの好条件も出ています。サミット時の嘉手納基地包囲行動も成功し、地元新聞社の世論調査でも県内移設に反対する声が多数です。一方では、国は県や名護市を含めた協議会を開いて、普天間基地の名護移設の既成事実を作ろうとしています。親泊市政を受け継ぎ発展させようとしている堀川さんの勝利は沖縄全体の希望となると思います。
全国の皆さんのご支援をお願いします。(文責編集部)
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