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月刊『日本の進路』2000年11月号
輸入急増で野菜価格下落
11県議会で緊急輸入制限措置を求める請願を採択
食管制度を廃止し、市場原理を導入した新食糧法の施行以降、米価は下落し稲作農家を直撃しているが、価格下落に苦しんでいるのは稲作農家だけではない。生鮮野菜の輸入が急増し、野菜の産地では深刻な問題になっている。
関東農政局管内(一都九県)は農業粗生産額で、全国の野菜生産の約三六%を占める。巨大な消費地を抱える「一大食料供給基地」で、野菜の大産地も多い。
今年の生鮮野菜の輸入量は史上最大の百万トンに迫る勢いで、東京中央卸売市場の野菜相場は総崩れしている。九月までの平均価格は一キロ百九十九円で生鮮野菜の輸入量が過去最大だった昨年に比べ、一キロ二十円も下落している。例えば、ネギの産地である埼玉県深谷市では、中国産の輸入で相場は暴落、昨年は半値、今年はその半値という状況だ。
九月に入り、野菜の産地である十一県議会(福島、群馬、埼玉、千葉、愛知、岐阜、高知、福岡、佐賀、宮崎、鹿児島)が相次いで一般セーフガード(緊急輸入制限措置)の発動を求める制限を採択し、政府に意見書を出すことを決めた。
一般セーフガードとは、輸入の急増で国内産業に重大な損害を与える恐れがあり、国民の経済上、緊急の必要があると認められる時に発動できる。一時的に関税を引き上げたり、輸入数量を制限できる措置である。。対象は鉱工業品と農林水産物全品目で、発動期間は原則四年以内となっている。農産物に関する一般セーフガードは、ガット時代に十二ヵ国・四十二件、WTO発足後は六ヵ国・八件発動されている。
しかし、日本では発動実績はなく、政府は輸出国側の反発を恐れてセーフガード発動をためらっている。工業製品の輸出環境が悪くなるという判断から、とくに通産省には拒否感が強い。十月十六日の記者会見で、農水省の高木勇樹事務次官は、一般セーフガードについて「現在までのところ発動すべきとの認識に至っていない」と述べた。これに対して、野菜生産地では「野菜農家の苦境が分かっていない」「政府は『価格暴落時にはセーフガードでくい止める』と説明してきたのに肝心なときに発動しない」など怒りが高まっている。
農業後継者不足に拍車がかかる懸念も広がっている。首都圏では新規就農者の多くが野菜生産をめざしている。しかし、輸入が急増し、価格が下落すれば後継者が育たないのは当然である。
日本はガット農業合意によって、ミニマムアクセス(MA=最低輸入義務量)米を強いられている。稲作農家は過剰米を理由に四〇%もの大幅な生産調整をしているのに、MA米はは年々増加し、国内消費量の七・二%にも達している。これが米価下落の一因である。いくら国が日本農業の持続的発展を唱えても、制限もなく輸入量が増え農産物価格が下落しては担い手の生産意欲が減退し自給率向上につながらない。(編集部)