国民連合とは月刊「日本の進路」地方議員版討論の広場集会案内出版物案内トップ  

自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2000年7月号
 
講演要旨
規制緩和誰のため、日本経済のあり方を問う

日本はアメリカの属国ではない

潟Aシスト社長 ビル・トッテン

アメリカに利用される日本

 アメリカが「規制を緩和しろ」と命令し、臆病な日本人がアメリカの言うとおりにしている。橋本龍太郎がアメリカに委員会をつくって、日本の官僚がわざわざワシントンまででかけて、ワシントンで日本国内の規制緩和について交渉している。なぜ日本人は日本国内の規制問題を日本人で決められないのか。四月にアメリカの要求で高速道路でのオートバイの最高速度を引き上げた。世界中をみてもアメリカが日本以外に、これほど内政干渉をしているケースがあったら教えていただきたい。日本はアメリカの属国か、植民地のように見えます。皆さんは感じいてないかも知れませんが、よくみると独立国の国民ではなくて、日本人はアメリカの奴隷になっています。
 昭和四十八年(一九七三年)からアメリカはずっと貿易赤字、日本は貿易黒字になっています。アメリカの貿易赤字は、統計が発表されるたびに拡大している。毎年貿易赤字が続けば普通の国は弱くなります。ところが、アメリカは横柄で、世界のあちこちの国に、「人権を無視している」とか「民主主義ではない」と口を出している。アメリカ本土だけ見ると赤字だが、植民地の日本を含めると黒字になる。アメリカの貯蓄率はゼロですが、それでもやれるのは日本から百兆円借りているからです。ビックバン以降、日本国民が銀行に貯金すると、日本の銀行はアメリカに金を貸してくれる。だから日本人の千三百兆円の貯金を、アメリカ人は自分のものとして利用できるから貯金する必要がない。これは十九世紀のイギリスの考え方と同じです。十九世紀のイギリスは貿易赤字だった。しかし、南アフリカ、インド、ローデシアなど植民地も含めた全体で見ると黒字になった。十九世紀のイギリスとその植民地、二十世紀のアメリカと植民地の日本、この違いは何か。十九世紀のイギリスは暴力で植民地を抑えていた。二十世紀のアメリカはマインドコントロールで日本を抑えている。日本人はマインドコントロールで抑えられているので奴隷になっていることも気がつかない。私はそう解釈しています。
 日本は毎年貿易黒字があります。例えばトヨタ自動車は黒字をドルで受け取る。日本国内の税金や賃金などを払うためにドルを日銀にもっていって円に交換する。日銀はドルをそのままアメリカに貸している。一般的に独立国が他国に金を貸すときは自国通貨で貸しますが、日本はドルで貸す。具体的にはアメリカの国債を買う。三十年ものの国債の場合、三十年前に三百六十円の価値があった一ドルは、満期になった現在は百七円の価値しかない。つまり、日本国民はアメリカに一ドルにつき二百五十三円をおごってあげたことになる。日本はアメリカに輸出してもうけていると思っているが、実際は国民の税金を付け加えてアメリカに渡している。日本は、他の国との貿易黒字もドルでアメリカに貸している。毎年、アメリカのドルは価値が下がっているので、日本は高い価値のドルをアメリカに貸して、安い価値のドルを受け取っている。その差額分は日本人が働いている分です。結局、日本人はアメリカに一方的に利用されている。

日本の経営理念が変わった

 私は日本で商売が成功し、いい生活をしています。子供もいい環境で生活しています。日本のすばらしい通信設備や交通設備を使っている。治安もいいし、教育内容は少し欠けている点はあるが勤勉に働く教育制度になっている。この日本以外では私は今の商売や生活は実現できない。自分が作っているより国からもらっているほうが圧倒的に多い。だから日本に非常に感謝している。だから税金を喜んで払っている。成功するほど日本に感謝すべきだと思うが、成功している人ほど税金を払いたがらない。
 私は考えていることを文書にして、五年前から文書を公開し、最近はインターネットのホームページに掲載しています。今日もってきた資料は、そのホームページに載っている資料の一部です。最初の資料は「日本人を幸せにするための経営理念」です。私は三十年間、日本にいますが、平成になってからの日本は特別だと思います。私は日本に来たときに、人とはお互いに頼っており、共存共栄だと教えられました。商売は人のためと経営者は言っていた。例えば、松下幸之助は、国の目標は国民の幸福で、国民の幸福に役立つためにサービスと待遇を提供するのが企業の役割だと。継続的に国民の幸福に役立つために企業は研究開発や設備投資は必要だが、それ以上の余裕が出たら国民に利益を提供するか、いい待遇を提供すべきと言っていた。ところが、最近の経営者は人ではなく人材という。いまの経営者は、国民は搾取するもの、自分の利益を増やすために首切り・リストラすればいいと考える。国民をだまして不要な商品を買わせれば賢い広告となる。国民の幸福のために物を提供するよりも、国民のお金をねらっているやり方です。この三十年間で日本はそこが変わったと思います。

アメリカ社会の実態

 次に日本とアメリカの比較をした資料。一九四五年当時、日本は敗戦で食べ物もなかったし建物も破壊されていた。一方、アメリカは世界中の経済の半分くらいを占めていた。けれども戦後、日本は高度成長に成功し、アメリカは一九七三年から他の国と比較して沈んだ。日本の経済成長はその後も続いたが、平成元年頃から大幅に沈んだ。日本の失業率は過去最悪の記録。企業の倒産件数と負債総額、国家財政の赤字、さらに自殺者や犯罪数も最悪。どうしてこうなったのか。私の分析では、七三年から大幅に沈んだアメリカの言うとおりにやってきたので沈んだ。
 メディアはアメリカは成功していると言っている。日本の政府や新聞は、アメリカは成功しているのでアメリカと同じようにしなければならないという。日本人を馬鹿にしていると思う。国の目標が国民の幸福であるならアメリカは一九七三年以降沈み放しです。人を幸福にするという意味ではアメリカより日本の方が成功している。日本の新聞は、どういう基準でアメリカは成功していると言っているか。
 一つはアメリカの株価が上がり、日本の株価は下がっていると。そのことは私も認めます。しかし、働かずに株でもうけている人がいるでしょうか。賃金で生活している人が大部分でしょう。アメリカ人だって同じでしょう。確かにアメリカの株価は上がっていますが、一般の人の生活に関係ない。
 もう一つのデータはアメリカのGDPが伸びている。GDPは日本より伸びている。しかしGDPの意味、分かりますか。GDPはその国の一年間の金銭取引の合計です。例えば、ある母親が子供を産んで子供に母乳を飲ませても金銭的取引がないのでGDPは増えない。母乳の代わりにミルクを買えば金銭取引になる。親が子供を家で育てるより、有料の民間保育園にあずける方がGDPが増える。離婚のための弁護士代はGDPになる。つまり離婚するほどGDPは増える。阪神大震災は十兆円の損害を受け、復興のために十兆円分のGDPが増えた。タバコを吸うほどガンになる確率が高く医療費がかかる。そうするとGDPは増える。GDPとはそういうことです。ですからGDPが増えることと国が成功しているかどうかは関係ないことです。問題はその内容です。
 それだけではありません。アメリカの実質賃金は一九七三年頃からずっと下がっています。しかしGDPは増えている。例えば五人だけの国だと仮定します。一九九九年のAさん、Bさん、Cさん、Dさんの四人の年収が二で、Eさんの年収が十とすると、その国のGDPは十八です。一年後、A〜Dさんの四人の年収は一になり、Eさんの年収は十五になったとするとGDPの合計は十九です。GDPの合計は増えたが、八割の人たちの生活は悪くなった。これがアメリカの事情です。日本の政府、自民党、新聞などはそのことを言わない。
 次の資料は、アメリカの二極化をあらわしている。アメリカでは人口の一%の人たちは雲の上の生活をしている。次の九%の人たちも結構いい生活をしている。しかし、残りの九〇%のアメリカ人の生活は貧しくなっている。私は昭和十六年(一九三九年)生まれ、子供の時に一般のアメリカの家族は四〜五人でした。四〜五人の家族の中で一人が働けば、家や車を買うことができて、しかも二〜三人の子供を大学までの学費を払うことができた。健康保険にも入れたし、年収の八%を貯金できた。今のアメリカの平均家族は四人で、二人が働いても家や車を買うには借金しなければならない。その上、四千万人の人たちは健康保険に入れない。したがって大きな病気をすると死ぬか、家を売るか、借金するしかない。アメリカの社会は一世代でこうなってしまった。これが日本が真似ているアメリカ社会の姿です。
 私はコンピュータのソフトウェアの会社をやっています。マイクロソフト社の会長のビル・ゲイツの総資産は、アメリカ人の四五%、つまり一億千二百五十万人のアメリカ人の資産合計より多い。ビル・ゲイツを含む上位三人の総資産は、アメリカ人の七割、つまり一億七千万人の資産合計より多い。まさに弱肉強食、これがアメリカ社会の実際です。

アメリカを真似るとだめになる

 そんな状況を日本にもってこようとしている。経済企画庁の堺屋太一長官が今年の一月、日本の規制緩和や金融の国際化が大いに成功していると発表した。十年間の規制緩和によって日本人は八兆六千億円節約したと発表した。日本人一人当たりで六万八千円くらいの節約。一年間で六千八百円の節約というのが政府の発表です。
 十年前、消費税が導入された。消費税の一人当たりの負担は毎年六万六百十二円。またこの十年間に国債費は三・四倍に増えた。国債費の増えた分を一人当たりで計算すると四万二千円の損害になる。さらに失業者数に平均賃金をかけて、一人当たりで計算すると六万二千円の損害となる。この十年間の倒産企業の負債総額と、それ以前の十年間の分との差額を一人当たりで計算すると、四万二千円の損害になる。規制緩和や金融の国際化のために、政府は一人当たり毎年六千八百円節約できたと自慢している。しかし、消費税、国債費の増加、失業、倒産などによる負担を合計すると毎年二十一万二千円の損害がある。この損害は政府の自慢する節約額の実に三十倍です。
 もっとひどいのは、一億二千五百万人の日本人が気がつかず、怒っていないことです。もっと具体的にいうと、日本は最近、めめしい男しかつくれない国になってきた。最近の犯罪、例えば少年のバス・ジャック事件、愛知での少年による老女殺人、新潟での九年間の監禁事件、神戸の殺人事件、愛知での五千万円恐喝事件…。めめしい犯罪。男同士ではなく弱い女の人や子供に暴力をふるう。そこまで腐っている民族とみえる。
 どうしてか。最近の日本人の育ち方は、日本人が自分を守る必要がない。日米安保があるから、自分は男にならなくていい。アメリカ人が日本のオスの機能を果たす。だからオスの機能を育てていない。
 しかし、日米安保はいんきちです。安保条約の中でアメリカは何を約束しているか。もし日本が侵略されたらアメリカはアメリカの憲法どおりに動く。アメリカの大統領が日本を守るべきだと判断したら議会にかけ、議会が承認すればできる。しかし、大統領が守ると判断しなかったり、また議会が承認しなければ日本を守らない。アメリカは日本を守るとは約束していない。
 日本はアメリカの方が圧倒的に悪かったと言えないから、自分の罪である南京大虐殺や慰安婦問題に冷たい態度をとる。日本政府が大国にへつらい、弱い国をいじめていることが、子供社会にも反映している。
 私は死ぬまで日本で暮らすつもりです。いろいろ批判しましたが、同じ市民として日本を少しでも良くしたいと思っています。
         (文責編集部)