(自主・平和・民主のための広範な国民連合
「日本の進路・地方議員版」第7号2000年5月号に関連記事)
上越市食料・農業・農村基本条例
平成十二年三月二日提出 上越市長 宮越 馨
議案第二十一号
上越市食料・農業・農村基本条例の制定について
上越市食料・農業・農村基本条例を次のように制定する。
平成十二年三月二日提出
上越市食料・農業・農村基本条例
目次
前文
第一章 総則(第一条―第六条)
第二章 基本的な施策
第一節 施策の基本方針(第七条・第八条)
第二節 食料に関する施策(第九条―第十一条)
第三節 農業に関する施策(第十二条―第十七条)
第四節 農村に関する施策(第十八条―第二十一条)
第五節 農業に関する団体への支援(第二十二条)
第三章 上越市食料・農業・農村政策審議会(第二十三条―第二十六条)
附則
前文
農業は、私たちのいのちとくらしの原点であり、農村は、人と自然が豊かな触れ合いを保ちながら共生することができるかけがえのない場である。
私たちのまち上越市は、北と南の植生が交わり、ほとんどの作物が生育可能な広大な農地を有している。しかし、その農地が有効に活用されておらず、私たちが消費する食料の多くは他の地域に依存し、さらには、本来、自然の循環機能をいかした環境にやさしい産業である農業において、稲わら、家畜糞尿、食物残さなどの有機物資源が十分に活用されていない。
人口、食料、そして環境問題が地球的規模で課題となっているこんにち、私たちは、いま一度、地域の農業を見つめ直し、農業を魅力あるものとして、将来の世代に継承していかなければならない。
今こそ私たちは、有機栽培を中心とした環境にやさしい循環型の、持続的に発展する農業を確立し、地域内での自給を基本とした安全な食料の安定的な供給の下、都市機能と農村の持つ自然環境が調和する「みどりの生活快適都市」にふさわしいまち、いわば農都市の形成を図ることを決意し、新たな理念の下に、この条例を制定する。
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、食料、農業及び農村のあり方についての基本理念 を定め、並びに市、農業者等、市民及び事業者の責務を明らかにする とともに、食料、農業及び農村に関する基本的な施策等を定めること により、豊かで住みよい、環境の保全に配慮し持続的に発展する地域 社会の実現に寄与することを目的とする。
(食料、農業及び農村のあり方についての基本理念)
第二条 食料は、人の生命の維持に欠くことができないものであり、か つ、健康で充実した生活の基礎となるものであることにかんがみ、地 域内での自給を基本とし、全国的な食料自給率の向上及び不測の事態 への対応にも貢献することを目標に、安全な食料を安定的に供給する ことにより、将来にわたって消費者及び生産者の安心を保障するもの でなければならない。
2 農業は、農地、農業用水その他の農業資源及び担い手が確保される とともに、地球環境保全(上越市環境基本条例(平成八年上越市条例 第四十一号)第二条第二項に規定する地球環境保全をいう。)に配慮 した農業の自然循環機能(食料・農業・農村基本法(平成十一年法律 第百六号。以下「法」という。)第四条に規定する自然循環機能をい う。以下同じ。)が維持増進され、かつ、持続的な発展が図られなけ ればならない。
3 農村は、市の将来都市像とするみどりの生活快適都市にふさわしい ものとなるよう、農村の持つ多面的機能(法第三条に規定する多面的 機能をいう。以下同じ。)を活用した生産、生活及び定住の場として 調和のとれた空間とならなければならない。
(市の責務)
第三条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)に のっとり、食料、農業及び農村に関する基本的かつ総合的な施策を策 定し、及び実施しなければならない。
2 市は、食料、農業及び農村に関する施策を講ずるときは、国及び県 と連携するとともに、国及び県に対して施策の提言を積極的に行うよ うに努めるものとする。
(農業者等の責務)
第四条 農業者及び農業に関する団体は、自らが安全な食料の安定的な 供給及び農村におけるまちづくりの主体であることを認識し、基本理 念の実現に積極的に取り組むように努めるとともに、市が実施する施 策に協力するものとする。
(市民の責務)
第五条 市民は、農都市の形成を目指すまちの住民であることを認識し、 日常生活において地域で生産された食料を中心として消費するように 努めるとともに、市が実施する施策に協力するものとする。
(事業者の責務)
第六条 事業者は、農都市の形成を目指すまちにおいて事業活動を行っ ていることを認識し、食料を使用するときは、地域で生産された食料 を中心として使用するように努めるとともに、市が実施する施策に協 力するものとする。
第二章 基本的な施策
第一節 施策の基本方針
(施策の策定等に係る指針)
第七条 市は、食料、農業及び農村に関する施策の策定及び実施に当た っては、基本理念にのっとり、次に掲げる事項を基本として、各種の 施策相互の有機的な連携を図りつつ、総合的かつ計画的に行わなけれ ばならない。
一 安全な食料を安定的に供給すること。
二 地域で生産された食料による健康的な食生活の推進を図ること。
三 農地、農業用水その他の農業資源を確保し、及び整備すること。
四 農業の担い手を育成し、及び確保すること。
五 農業の自然循環機能を維持増進すること。
六 契約栽培の推進等により生産者と消費者の連携を図ること。
七 農村における計画的な土地利用の促進及び農村の住環境の整備を図 ること。
八 都市と農村との交流を促進すること。
九 農村における国際交流及び農業による国際協力の推進を図ること。
十 森林及び水産資源の保全に関する施策との連携を図ること。
十一 隣接する地方公共団体等と連携し、一体的な産地の形成及び地域 間の交流を図ること。
(基本計画)
第八条 市長は、食料、農業及び農村に関する施策の総合的かつ計画的 な推進を図るため、食料・農業・農村基本計画(以下「基本計画」と いう。)を定めなければならない。
2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 食料、農業及び農村に関する施策についての基本的な方針
二 食料自給率の目標
三 農地の有効利用に関する目標
四 食料、農業及び農村に関し総合的かつ計画的に講ずべき施策
五 その他市長が必要と認める事項
3 基本計画は、施策の効果を評価できるように定めるものとする。
4 第二項第二号に掲げる食料自給率の目標は、その向上を図ることを 旨とし、市内における農産物の自給率をおおむね七割以上とするとと もに、市内の農業生産及び食料消費に関する指針となるように、可能 な限り品目別の目標値を定めるものとする。
5 第二項第三号に掲げる農地の有効利用に関する目標は、まちづくり の観点からの計画的かつ効率的な土地利用の促進に資することを旨と し、前項に規定する食料自給率の目標が達成できるように、農地の確 保、積極的な水田の活用等についての目標値を定めるものとする。
6 市長は、基本計画を定めるときは、あらかじめ上越市食料・農業・ 農村政策審議会の意見を聴かなければならない。
7 市長は、基本計画を定めたときは、速やかにこれを公表しなければ ならない。
8 市長は、食料、農業及び農村をめぐる情勢の変化並びに施策の評価 を踏まえ、おおむね五年ごとに基本計画を見直すものとする。
9 第六項及び第七項の規定は、基本計画の見直しについて準用する。
第二節 食科に関する施策
(食料の安全性の確保等)
第九条 市は、市民が安心して消費できるように食料の安全性の確保及 び品質の改善を図るため、品質に関する認証制度の普及その他必要な 施策を講ずるものとする。
2 市は、農業者及び農業に関する団体が遺伝子組換えその他の先端技 術を利用する際には、食料の安全性が確保され、及び環境に及ぼす影 響等について配慮されるように必要な施策を講ずるものとする。
3 市は、事業者が遺伝子組換えその他の先端技術が利用された食料を 使用し、及び取り扱う際には、市民の健康に及ぼす影響等について配 慮され、及び消費者の合理的な選択が行われるように必要な施策を講 ずるものとする。
(流通の活発化)
第十条 市は、食料自給率の向上及び食料の安定的な供給を図るため、 朝市の活性化、契約栽培の推進その他流通の活発化に必要な施策を講 ずるものとする。
(食品産業の健全な発展)
第十一条 市は、食品産業が食料の供給において果たす役割の重要性に かんがみ、その健全な発展を図るため、食品産業と農業、流通、試験 研究機関等との連携に必要な施策を講ずるものとする。
第三節 農業に関する施策
(自然循環機能の維持増進等)
第十二条 市は、循環型で持続的に発展する農業を確立するため、有機 栽培農法の推進、輪作体系の確立、環境の保全に貢献する作物の栽培 の推進その他農業の自然循環機能の維持増進に必要な施策を講ずるも のとする。
2 市は、環境の保全の重要性にかんがみ、農業による環境への負荷(上 越市環境基本条例第二条第一項に規定する環境への負荷をいう。)の 低減を図るため、農薬の使用縮減の推進その他必要な施策を講ずるも のとする。
(担い手の育成及び確保等)
第十三条 市は、認定農業者(農業経営基盤強化促進法(昭和五十五年 法律第六十五号)第十三条第一項に規定定する認定農業者をいう。以 下同じ。)その他農業経営に意欲のある農業者が農業の中心的役割を 担うような農業構造を確立するため、誇りを持って農業に従事し、か つ、安定した収入が確保できるように必要な施策を講ずるものとする。
2 市は、社会の変化に対応できる多様な農業の担い手の育成及び確保 を図るため、次に掲げる施策を講ずるものとする。
一 市が参画し、又は関与する農業の経営体の設定及びその活動の推進
二 農業経営の法人化の推進
三 家族農業経営の活性化及び集落を基礎とした農業経営の推進
四 新たに就農しようとする者への支援
五 都市住民が農業を体験し、及び農業に参加する取組の推進
六 農村における女性の地位の向上を基本とした女性の農業経営への参 画の推進
七 高齢者が生きがいを持って農業に携わることができる環境整備の推 進
(農地の確保等)
第十四条 市は、市内の農業生産に必要な農地の確保及びその有効利用 を図るため、計画的かつ効率的な土地の利用の促進に必要な施策を講 ずるものとする。
2 市は、作業効率及び地力が高く、汎用利用が可能な優良農地の確保 を図るため、地域の特性に応じた農業生産の基盤の準備に必要な施策 を講ずるものとする。
3 市は、市街地にある農地が防災及び環境の保全に果たす役割の重要 性にかんがみ、その保全その他必要な施策を講ずるものとする。
(生産の振興及び調整)
第十五条 市は、食料の安定的な供給に必要な農業生産の確保及び振興 を図るため、高速交通施設、港湾施設等を活用した産地化の推進及び 農業に関する団体と連携した全国的な調整による適地適産の推進に必 要な施策を講ずるものとする。
2 市は、食料自給率の向上を図るため、大豆栽培等による積極的な水 田の活用及び地域内調整の推進に必要な施策を講ずるものとする。
(研究及び技術開発の推進)
第十六条 市は、関係機関等との連携を強化し、地域の特性をいかした 農業並びに食品の加工及び流通に関する研究及び技術開発の推進に必 要な施策を議ずるものとする。
(農業経営の安定)
第十七条 市は、農産物の価格の著しい変動等が認定農業者、新たに就 農しようとする者等の農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な 施策を講ずるものとする。
2 市は、産地化の推進を図るべき作物の栽培、新たな農業技術の導入 等による収量、価格等の不安定さが農業経営に及ぼす影響を緩和する ために必要な施策を議ずるものとする。
第四節 農村に関する施策
(農村の総合的な振興)
第十八条 市は、市内の秩序ある土地の利用並びに良好な景観の保全及 び創造に配慮しつつ、農業集落排水及び並木道の整備等地域の特性に 応じた農村における快適な生活環境の整備その他農村の総合的な振興 に必要な施策を講ずるものとする。
(良好な定住の場の形成)
第十九条 市は、優良田園住宅の建設の促進に関する法律(平成十年法 律第四十一号)第三条第一項の規定により定めた基本方針にのっとり、 農村における良好な定住の場の形成を図るため、人と自然が共生でき る優良な住宅の建設の推進その他必要な施策を講ずるものとする。
(良好な交流の場の形成)
第二十条 市は、都市住民及び次代を担う子どもと農村との交流の機会 を増進するとともに、市民が農業及び農村に対する理解と関心を深め、 自然を守り、はぐくんでいく基盤の整備を図るため、山里自然公園、 市民農園等の整備の推進その他必要な施策を講ずるものとする。
(中山間地域等への支接)
第二十一条 市は、中山間地域等(法第三十五条第一項に規定する中山 間地域等をいう。)の多面的機能の確保を図るため、適切な土地利用 の調整及び生産調整における地域内調整に配慮し、農業生産活動が持 続的に行われるようにするための支援その他必要な施策を講ずるもの とする。
第五節 農業に関する団体への支援
第二十二条 市は、農業に関する団体が基本理念の実現に資することが できるように、その組織の効率化の支援その他農業に関する団体の健 全な発展を図るために必要な施策を講ずるものとする。
第三章 上越市食料・農業・農村政策審議会
(設置)
第二十三条 食料、農業及び農村に関する基本的事項及び重要事項を調 査審議するため、上越市食料・農業・農村政策審議会(以下「審議会」 という。)を置く。
2 審議会は、市長の諮問に応じ調査審議するほか、食料、農業及び農 村に関し市長に意見を述べることができる。
(組織)
第二十四条 審議会は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱する二十五 人以内の委員をもって組織する。
一 農業者
二 消費者
三 事業者
四 都市住民
五 農業に関する団体の職員
六 関係行政機関の職員
七 学識経験者
(委員の任期)
第二十五条 審議会の委員の任期は、二年とし、再任は妨げない。ただ し、委員が欠けた場合の補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
(委任)
第二十六条 前三条に定めるもののほか、審議会に関し必要な事項は、 市長が規則で定める。
附則
この条例は、公布の日から施行する。