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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』1999年11月号
 


米海軍佐世保基地LCAC駐機場移転問題

佐世保市議会議員 橋本 純子


 エア・クッション型揚陸艇(LCAC)とは、水際上陸の主力となる大型揚陸艇で、一九八二年以降建造が進められ、現在九十二隻が就役している。在来型とは比較にならない高速力と水陸両用性能が特徴である。積載能力約七五トン。全長二四・七m。幅一三・一m。速力七四q/h。兵装一二・七mm単装機銃二基。乗員五名。
 佐世保基地におけるLCACのエンジンテストや湾内航行による騒音が、九四年以来問題化している。駐機場対岸における騒音測定値は、環境基準値五〇デシベルをはるかに超える最高九三デシベルという騒々しい工場なみの騒音を記録し、佐世保市は再三、米軍に対し運用中止を申し入れてきている。現在、米海軍佐世保基地にはドック型揚陸艦「ジャーマンタウン」、同じく「フォート・マクへンリー」がそれぞれ三隻、計六隻のLCACが配備されている。
 九七年度、防衛庁は駐機場の移転方針を明らかにし、佐世保湾内の五カ所を施設移転整備候補地として、騒音調査及び航路の関係等種々調査・検討を行った。結果、西海町にある米軍施設・横瀬貯油所が最有力候補地とされたが、地元住民には調査地について一切公開されていなかった。九八年十一月から九九年五月まで横瀬貯油所及び周辺海域の測量を実施。総合的見地から最適地と判断し、公式に七月西海町に伝えられた。
 整備計画によると十五年間のスケジュールで、貯油所前面を新たに八ヘクタール埋め立て、米軍の要請で十二機分の施設建設が予定されている。言うまでもなく移転整備費用はわが国の負担である。福岡防衛施設局はカラー刷りのパンフレットを作成し、地元住民説明会を開催しているが、賛成意見は皆無で、騒音問題、農業への塩害、漁業あるいは船舶の航行への影響等々、住民の反発は強い現状にある。西海町議会は移転に関する調査特別委員会を設置、来る十二月議会において結論を出す予定になっている。
 貯油所を抱える西海町の基地交付金は現在年間約七千万円。駐機場が建設されると新たに年間約九千万円が交付される計算。それは財政力の弱い自治体にとっては、無視出来ないものであり、町長は「住民や議会の意見を尊重する」としながらも、条件次第では受け入れもあり得る考えをうかがわせている。しかし佐世保港の港湾管理者である佐世保市長は言及を避けている。
 今年五月、米第五強襲上陸艦艇部隊が行った会議資料が、インターネット米国防総省関連ホームページに掲載された。それによると横瀬LCAC駐機場整備計画は、すでに九五年から計画されていたのだ。エンジンの複雑なメンテナンス機能の無い施設は、明らかに恒久的施設とは考えにくい。それでも多額の費用を投入して整備するのは、その費用を日本側が負担するからである。
 東西冷戦終結以後、米国防予算は大幅に削減され、兵員削減また内外の基地閉鎖を行っている。しかし日本は日米安保再定義で安保を強化し基地提供を続けている。また、安保条約六条に基づく地位協定に明らかに反する「思いやり予算」で、基地の維持・運営の費用まで負担している。アメリカにとって日本は好都合な国となっている。冷戦以後の日米安保のあり方について、我が国の主体性を持つべき時ではないだろうか。