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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』1999年11月号
 

正当な労働組合活動に不当判決
二億六千万円を損害賠償せよ

全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部長 奥薗 健児


 今年二月二十四日、大阪地裁は世界産業グループの訴えを丸飲みして、団体交渉拒否、不当解雇と闘っている全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部に対し、その組合活動を「営業妨害」だとして、約二億六千万円の損害賠償を命じる判決を下しました。労働組合つぶしをねらう不当判決を、私たちは断じて許すことはできません。

 労組敵視の世界産業グループ

 世界産業グループとは、世界産業梶A阪南産業求Aエクスプレス世界梶A太平洋生コン(以上四社の代表はいずれも榎並幸一郎)、叶逅ホ(代表・千石勅治)、大阪輸送企業組合(代表・榎並重男は榎並幸一郎の甥)など、榎並幸一郎が実権を握る企業グループです。
 一九七九年ころ、千石は生コンプラントを新設して、生コン業界に参入しようとしました。しかし、当時の生コン業界は、過剰設備の共同廃棄など構造改善事業に取り組んでいる最中で、新規参入はきわめて困難でした。そこで、千石は榎並幸一郎の政治力をたより、自社の生コンプラント全体を阪南産業にリースする形にしました。榎並はその政治力を背景に、廃業申請した箕島生コンのかわりに、阪南産業=千石のプラント新設を認めさせました。
 こうして榎並は、世界産業がセメント・骨材を千石に販売し、エクスプレス世界がセメントを輸送し、阪南産業=千石が生コンを生産するという形で、セメント・生コン業界への進出を果たしました。ノウハウを積んだ榎並は、さらに太平洋生コンを新設し、こうして世界産業グループが形成されました。
 世界産業グループは当初から労働組合を敵視していました。廃業する箕島生コンの労働者は千石が引き継ぐ約束でしたが、連帯組合員であったため、榎並自身が面接して採用を拒否しました。この事件はその後、就職を斡旋するまで賃金を支払えとの地裁判決で勝利しました。
 他方で、一六社のセメントメーカーに対して四二六二社の中小企業がひしめく生コン業界では、過当競争による業界混乱から企業や労働者を守るため、労働組合の政策闘争によって、共注・共販などの協同組合活動を進めてきました。世界産業グループはこうした協同組合活動に対しても、土曜日稼働を一方的に実施するなど、協組運営規定や役員会議を無視して勝手に振る舞いました。

 団交拒否、不当解雇の連発

 今回の事件の発端は、阪南産業=千石における生コン争議です。九三年三月十五日、千石の生コン輸送の労働者二名が連帯労組に加入して、千石生コン分会を結成しました。千石は形式上の雇い主が泣Cチモリであることを口実に団交を拒否しました。雇用責任を回避するため、輸送部門は形だけの別会社として活齔Xをつくり、さらに泣Cチモリに変え、運転手に何の説明もせずに所属を泣Cチモリに変更していたのです。
 そして、地労委の斡旋で団交を余儀なくされると、団交翌日の四月二十七日、泣Cチモリを閉鎖して、二名の組合員を解雇しました。他の運転手は大阪輸送企業組合の社員または企業組合員(形だけ個人事業主の、不安定な償却制運転手)の身分に変更し、ひきつづき千石の生コン輸送にあたらせました。
 九三年九月、今度は大阪輸送企業組合の運転手三名(社員二名、企業組合員一名)が新たに連帯労組に加入しました。千石は九四年四月、連帯労組に入っていることを理由に、この三名を解雇・除名しました。九五年三月、企業組合員の運転手一名が連帯労組に加入すると、この労働者も四日後に企業組合から除名(解雇)しました。九六年一月、今度は千石の正社員二名が連帯労組に加入しました。一名はその後脱退しましたが、連帯労組にとどまった一名は仕事を干され、職場の人間関係から隔離されました。
 このように、千石は労働者に対する雇用責任を回避するため、活齔X→泣Cチモリ→大阪輸送企業組合と輸送部門の名前だけを変え、六名の労働者を次々に解雇してきました。
 九三年と九四年の五名の不当解雇については、九七年六月に地労委が「解雇を撤回し、未払い賃金を支払え」と命令しました。現在は中労委の命令待ちです。連帯労組は地労委命令を根拠に、六名の組合員について、地裁に未払い賃金支払い請求の本訴を起こしています。

 証拠はないが、損害賠償せよ

 連帯労組は労働委員会、地裁での闘いと同時に、阪南産業=千石の取引先企業に対して、不当労働行為企業との取引自粛、ボイコットを呼びかける要請行動を行いました。この要請行動について、世界産業グループは営業妨害だと、地裁に提訴したのです。地裁は世界産業グループの主張を丸飲みして、連帯労組に二億六千万円余の損害賠償を命じる判決をくだしました。
 しかし、連帯労組がどんな「実力行使」をして、世界産業グループの「営業妨害」をしたと言うのでしょうか。世界産業グループの営業活動の現場に行ってピケを張ったりしたわけではなく、阪南産業=千石との取引をボイコットするよう呼びかけただけです。「営業妨害」を立証するものは何もありません。
 セメント・生コン業界では、構造不況業種に指定された過去の苦い経験から、労使が一体となって業界の再建・健全化に取り組んできました。その中で、不当労働行為や違法・脱法行為をくり返す企業に対しては、業界内部の自主的な取り組みとして、指導・助言・忠告を行ってきました。そういう経緯があるから、「不当労働行為を行う企業との取引は自粛してほしい」という呼びかけに、企業が自主的に協力したのです。
 判決は「メーカーに圧力をかけたことを・・・・直接証する証拠はないものの・・・・推認される。・・・・単にほのめかしただけであっても、十分圧力をかけたといいうる」と述べています。地裁は証拠もない推認で、「ほのめかしただけ」でも「営業妨害」になると、連帯労組に二億六千万円余の損害賠償を命じました。

 不当判決に反撃を

 この判決は労働組合つぶしをねらう、きわめて不当なものです。
 第一に、憲法で定められている労働者の団結権、労働組合法で定められている免責条項(労働組合の争議行為に賠償請求できない)の無視です。労働組合の活動を経済的に封じ込めるのがねらいです。
 第二に、別会社をつくって雇用責任を回避し、不当労働行為を繰り返す企業の免罪です。中小労働運動にとって、中小企業を事実上支配している背景資本や荷主に対する運動は不可欠ですが、そのような運動を阻止するねらいがあります。
 第三に、企業の枠を超えた産業別労働組合の運動を認めない姿勢です。過当競争から労働者の生活を守るため、連帯労組は産業別労働組合の運動として、中小企業による協同組合活動を促進してきましたが、そんな運動は許さないということです。
 このような不当判決の背景にあるのは、資本や権力の危機感です。中小企業の倒産続出、リストラ・首切りによる大量失業で、当然、労働者の反発は強まります。だから、闘う労働組合の運動が波及するのを恐れ、事前に押さえ込もうとしているのです。この不当判決は、中小企業と労働者全体にかけられた攻撃です。
 九月二十一日、おおさかユニオンネットワーク、生コン産業政策協議会、南大阪人権連帯会議、大阪労働者弁護団は、「組合つぶしの不当判決・弾圧を許すな」と、千五百人余の労働者・市民を結集した集会を開きました。
 私たちは全国のみなさんとの団結を一層強化して闘い、全国的な反撃の運動に発展させる決意です。