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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』1999年10月号
 

原発反対の住民投票結果を受け、
原発予定地内の町有地を共同買い取り

巻原発住民投票を実行する会代表 大越 茂



 東北電力が巻原発計画を正式に発表したのは1971年です。計画そのものは60年代です。その後、原発計画が明らかになるにつれ、原発反対を決議した漁協と東北電力の交渉が続きました。90年8月の町長選で2回目の当選をした佐藤町長の選挙公約は原発凍結が公約でした。ところが4年後の94年8月の町長選で佐藤町長は、原発凍結から原発推進に公約を変え、巻原発は世界一と宣伝しました。佐藤町長は約9000票を獲得しましたが、原発反対の候補と原発慎重の候補が獲得した票の合計が約1万600票で佐藤町長より多かった。
 この結果から、原発建設に疑問をもつ町民が相当にいることは想像できます。しかし、反対する人が多いのか、賛成する人が多いのか分からない。原発建設は町政にとって重要な問題だから、住民投票をして町民の意志を確認すべきだという巻原発住民投票を実行する会ができて運動が始まりました。95年4月の町議選をへて95年6月に住民投票条例が町議会で可決され90日以内の実施が決まりました。しかし、その後も住民投票の実施時期をめぐってつばぜり合いがありました。その経過の中で佐藤町長のリコール署名が1万をこえ佐藤町長が辞職。96年1月に「住民投票を実施し、その結果を尊重する」という公約を掲げた笹口氏が町長になりました。
 巻原発の是非を問う全国初の住民投票が実施されたのは、96年8月4日です。投票率88・29%で、原発建設に反対が61・22%という結果で、町民の意志が明確になりました。
 東北電力は原発予定地の97%の土地をすでに買収しています。それでも、巻町の住民投票が大きな効力をもったのは原発予定地内に町有地があったためです。笹口町長は「住民投票の結果を尊重し、原発予定地内の町有地は売らない」と宣言ました。それでも、国や東北電力は原発建設をあきらめず、圧力をかけ今日まで来たわけです。
 私たち巻原発住民投票を実行する会のメンバーを中心した23人が、町長に町有地約740uを共同管理の形で購入を申し入れ、8月30日に買い取りました。小規模な面積ですが、この土地は原子炉の中心部付近で、原発建設の正否がかかった土地です。この規模の町有地売却は、議会の議決は必要がなく、適正な価格なら町長の判断で決済できます。
 私たち住民投票を実施する会は、原発建設という重要な問題は最終的には町民自身が決めるべきだという確認で運動をやってきました。新聞には「原発反対派」と書かれていますが原発反対派の会ではありません。私たちは建設反対が多数であった住民投票の結果を担保する意味で町有地を買いました。
 住民投票の結果を尊重するというのが、笹口町長の公約です。原発反対が多数だった町民の意志に沿って、原発建設に決着をつけるために私たちに土地を売却した。来年1月に町長選がありますが、今回の土地売却も公約を守るための措置です。
 今回の町有地売却で、原発建設は客観的に困難になったと思いますが、東北電力や国が今後どう対応するのか分かりません。
 住民投票を通じて、町民は原発に対する自分の意見を示した。町の将来にとって重要な問題について、結果が賛成であれ、反対であれ、町民の意志が直接反映した意味は非常に大きいと思います。住民投票で決着をつけたので町民は納得できる。これこそ地方自治、民主主義だと思います。
 各地で課題は様々ですが住民投票の動きが活発化しています。そういう中で、住民投票をやった私たちは誇りをもっています。同時に、住民投票の結果を最後まで実現するために努力する必要があると感じています。
(文責編集部)