国民連合とは月刊「日本の進路」地方議員版討論の広場 集会案内 出版物案内トップ


自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』1999年10月号
 

危機に立つ日本、自主・平和・民主の日本へ
広範な国民連合への参加を訴えます

広範な国民連合代表世話人 槙枝 元文



 危険な方向へ踏み出す日本

 小渕内閣はこの1年、自民・自由・公明の連立による多数与党の形成と民主党の第2保守党化を背景に、新ガイドラインに基づく周辺事態法、通信傍受(盗聴)法、国旗・国歌法、憲法調査会の設置など、55年体制ですら成し得なかった悪法を、次から次へと成立させてきました。いよいよ来年1月から憲法改正に向けた論議も始まります。
 これに対して、アジア各国のみならず、アメリカの日本専門家やマスメディアの間からも、国産情報衛星の打ち上げ決定、日本海における不審船への発砲、民主党鳩山党首による憲法九条の改正発言などをあげて、日本はいよいよ平和主義を捨ててナショナリズムに根ざした独自路線を歩み始めた、と警戒の声があがっています。
 日米安保条約の再定義に基づく「新ガイドライン」によって、米軍がアジア太平洋地域で軍事行動を起こせば、自衛隊は後方支援の名の下に、食糧、医療、武器・弾薬及び傷病兵等の輸送のために戦場への出動を余儀なくされます。空港や港湾は米軍の優先使用となり、自治体や企業は、病院、輸送車両、物資提供等の協力を強制されます。しかも、アメリカ政府が必要とする限り、沖縄を含む日本の米軍基地は永久に容認することになるでしょう。これでは日本はもはや独立国ではなく、アメリカの軍事的属国になり下がったも同然ではないでしょうか。まさにアメリカ合衆国ジャパン州です。
 4月3日のハリス世論調査によると、日米安保条約による在日米軍の任務について、アメリカ国民の49%が「日本の軍事大国化を防ぐため」、34%が「アメリカの世界戦略達成のため」と答え、「日本を守るため」と答えたのはわずか12%でした。日米安保条約や米軍基地が何のためにあるか、明白ではないでしょうか。

 北朝鮮は本当に脅威なのか

 今年6月以来、北京、ジュネーブ、ベルリンと舞台を移して続けられてきた米朝高官協議は、9月12日に一応の合意に達しました。アメリカは朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対する経済制裁を緩和し、米朝間の対話が継続している間、北朝鮮は核ミサイルの開発・実験を留保する、という内容です。長期的には、米朝国交の正常化をめざすものと理解されます。アメリカは依然として韓国に米軍を駐留させ、硬軟両様の構えを崩していませんが、従来の対北朝鮮政策からみれば大きく軌道修正したものと言えましょう。
 その背景には、北朝鮮自壊説にもかかわらず、金成日氏が指導体制を確立し、あいつぐ豪雨や干ばつといった大災害をこうむりながらも、復興と建設、人工衛星の打ち上げなどで成果を上げている事実があります。他方で、イラクやコソボへの爆撃を強行したにもかかわらず、アメリカはそれらの国の体制変革という覇権主義の野望は果たせなかった事実があります。
 武力や経済制裁では北朝鮮の体制を崩すことはできないと見たアメリカは、現政権との対話を継続し、いずれは国交正常化の道を選択せざるを得ないという認識に立ったのではないでしょうか。
 それにしても、何につけアメリカ追随の道を歩んできた日本政府が、こと北朝鮮に関する限り、頑固に独自性を強調してるのは異常と言わざるを得ません。小渕首相は、米朝高官協議の合意で北朝鮮のミサイル再発射が遠のいたにもかかわらず、「ミサイル再発射を凍結する保障が得られない限り、ミサイル打ち上げへの対抗措置を解除するのは難しい」と繰り返しています。高村外相にいたっては、「米国がこうしたから日本もこうするという話ではない」と、これまでとはうって変わって、日本の自主性を強調しました。
 その背景は一体何でしょうか。政府は、北朝鮮の人工衛星の打ち上げを好機として北朝鮮の脅威をあおり、新ガイドライン関連法案の審議を促進し、戦域ミサイル防衛(TMD)の日米共同研究・開発に調印しました。不審船に名を借りて、日本海域への自衛艦の整備・増強を図りました。北朝鮮の脅威をあおることによって、防衛力の強化・軍事大国化への世論をつくり、自衛隊を軍隊と呼び、戦争行為を解禁する憲法改正を政治日程にのせようとしているのだと思います。

 いまこそ広範な国民運動を

 日本が危機存亡の渕に立たされている今、仮にかつてのような労働運動があり、力になる真の野党があったならば、大きな国民運動を巻き起こして数々の悪法を阻止したでしょうし、憲法改正を政治日程にのせることなど夢物語であったでしょう。国民各層の連合を促し、広範な国民運動を発展させる組織が、今ほど求められているときはありません。
 私たち「広範な国民連合」は、1991年の湾岸戦争勃発の直後、当時の自民党幹事長であった小沢一郎氏(現自由党党首)が、公然と憲法改正を提唱し、自衛隊の海外派兵に道を開こうとしたとき、日本の危機を痛感して未来を憂う有志が相集い、微力をかえりみず大衆運動を提起したことから始まりました。趣旨に賛同して集って下さった方々は、労働者、農林漁民、商工業者をはじめ、学者、文化人、各級議員から主婦、一般市民等多士済々でした。そこで2年間の準備活動を経て、93年11月に全国的な組織としての結成をみ、「自主・平和・民主のための広範な国民連合」と名付けたのであります。
 「自主」とは、日本が戦後半世紀を過ぎた今日、いまなおアメリカの占領下の名残から脱却せず、アメリカ政府追随の政策を続けていることから、自主独立の道を歩もうという趣旨です。
 「平和」とは、平和憲法を制定し、戦争放棄を内外に宣言しているにもかかわらず、冷戦構造が終えんした今日もなお日米安保条約を保持し、米軍基地を認め、軍備を増強して自衛隊の海外派兵に道を開く政策に対し、警鐘をならす意味です。
 また「民主」は、日の丸・君が代の法制化にみられるように、国民無視、官僚独善、政党の党利党略ですべてを決定し、国民に犠牲を押しつける政治に対して、主権在民の道を歩もうということです。
 以来、今日までコメの自由化問題、大店法の規制緩和・撤廃の問題、沖縄の米兵による少女暴行事件や「特措法」、米軍基地の縮小・撤去の問題、新ガイドラインの問題や北朝鮮に対する理不尽な制裁措置の問題等々、時にふれ折にふれ、中央や地方で関係当局に抗議や申し入れを行い、アピールを発表し、学習会、抗議集会等々を開き、国民各層の連合を促しながら組織の強化・拡大にも努力してきました。
 今ほど広範な国民運動が求められている時はありません。労働者、農林漁民、商工業者をはじめ国民各層の連合を促し、広範な国民運動を発展させる必要があります。広範な国民連合を為政者にとって無視できない組織にしていかなければなりません。そのために、一人でも多くの方々が賛同人に加わり、「力」になって下さるよう念願してやみません。