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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』1999年9月号
 

沖縄サミットを利用した
ヘリ基地建設を許さない


ヘリ基地反対協議会事務局長 仲村善幸



 沖縄サミットのねらい

 来年7月の主要国首脳会議(サミット)の沖縄開催が突然決まりました。サミットとは何なのか分からないまま、お祭りというかイベントとしての受け止め方が相当ありました。また、各国の首脳が来るんだから沖縄の実態をアピールする機会にしようという考え方もあります。しかし、なぜ沖縄でサミットなのか、政治的な背景があると多くの県民が直感していました。
 案の定、サミットの沖縄開催と普天間基地の代替ヘリ基地建設をリンクさせるねらいが明白になってきました。6月25日、クリントン大統領が「基地問題が未解決な状態で沖縄(サミット)に行きたくない」と発言。さらに、7月28日、日本政府との会談でコーエン米国防長官は、クリントン大統領の発言を指摘しながら「今後数カ月以内によい進展があるよう望んでいる。来年のサミットまでに解決できるように希望している」と強く表明。野呂田防衛庁長官は「稲嶺県知事には早く決定するべきだと言っている」と説明。野中官房長官も「普天間の移設返還は早期に実現させなければならない」と発言。日米両政府の思惑は一致しています。
 しかし基地の県内移設に対して、沖縄県民や名護市民の反対が大きい。だから表向きには「サミットとはリンクさせない」「沖縄県の頭越しには決めない」「県内移設の候補地は沖縄県が自主的に決めること」という姿勢です。本質は、沖縄サミットを利用して基地建設問題を強行することです。沖縄政策協議会の中では、野中官房長官が稲嶺県知事に対してかなり脅迫的なことを言っています。移設候補地の選定作業は「来年3月頃」までにと言っていた県知事が、「年内には」となって、選定作業の動きが急になってきました。日米両政府と県が一体となってヘリ基地の県内移設を県民の頭越しに、やろうとしているわけです。
 政府のシナリオは、知事や関係自治体の首長だけの決断を迫るのではなく、周辺自治体の議会や土地連などまで巻き込んで県内移設の環境をつくるというものです。水面下では、知事や北部の市町村長を官邸に呼んで、経済振興策などをちらつかせながら、県や地元の自治体が県内移設を「自主的に決める」状況づくりをやっています。
 そういう水面下の動きの結果、8月21日、普天間基地を抱える宜野湾市議会で、「米軍普天間飛行場の移設先早期決定に関する要請決議・意見書」が決議されました。採決では可否が14対14の同数、議長採決で可決されました。県内移設という文言はありませんが、県内移設を前提とした「日米特別行動委員会(SACO)の方針通り」の文言が入っています。
 移設先として最も有力と言われているのが名護市辺野古のキャンプシュワブ沖です。米政府の元高官も発言しています。私たちが「住民投票の結論はヘリ基地建設反対だ」と県に迫ったところ、知事公室長は「住民投票で反対となったのは政府の海上ヘリ基地案。陸上案や一部埋め立て案は別」という言い方でした。これは新たな事態だと感じました。地元新聞には官邸サイドの未確認情報として名護市東海岸に決まったかのような報道がされています。

 沖縄県全体の運動に

 サミットとヘリ基地問題が絡んでくることに対して反発や危機感が広がってきています。サミットを推進している各団体の中にも基地建設反対派がたくさんいます。例えば婦人会長はクリントン発言を聞いて「冗談じゃない、サミットとヘリ基地問題がリンクしないと言ったじゃないか」と非常に憤慨しておられました。とくに候補地と言われる名護では不満が強まっています。
 政府による水面下の動き、名護市内でも一部の誘致派が動き出したこともあり、市民の中で危機感が広がってきました。市民の声をあげていく時期だと判断し、8月13日「サミットを利用した基地建設を許さない市民決起集会」を800名で開きました。集会では、サミットを利用した基地の県内移設を求める日米両政府の動きに批判が出され、「基地の県内移設に反対が県民世論。稲嶺知事は県民世論を尊重し政府の圧力を跳ね返すべきだ」「ヘリ基地と引き換えのサミットならいらない」という声が相次ぎました。また、11日の東村の運動公園への米軍ヘリ不時着事故への抗議も行いました。
 この運動は名護の運動だけでは解決しません。全県に広げていこうと「沖縄から基地をなくし世界の平和を求める市民連絡会」を8月14日に発足しました。サミットとリンクさせた基地の県内移設に反対する全県組織で、ヘリ基地反対協や浦添市民の会など30の市民、民主団体が加わりました。結成総会では「戦争を進めてきたサミット主要国の国々が会議をするからといって沖縄のプラスになるのか」「沖縄サミットはきわめて政治的な選択であり、基地の永続的な存続につながる」などの発言がありました。政党や労組とも共闘して、全県的な運動をめざすことが確認されました。
 さらに、平和運動センターは、市民団体や政党(社民、社大、共産それに公明)も含めて全県的なヘリ基地反対協のような運動体を作っていこ準備しています。基地の県内移設の動きに対抗する運動体として、9月か10月には結成しようという話になっています。
 サミットの沖縄開催が決まってから、元中国大使の講演がありました。「サミットは主要国八カ国の会議で、主役は各国首脳で市民は主役じゃありませんよ」「市民が首脳と対話をしたくても、会議が終われば首脳はすぐ帰ります」と率直に言われました。また「サミットは警備が大変です。東京サミットでも高速道路をストップするし、ベネチアサミットでも船の底までチェックした。警備に万全を期すので、地元の皆さんには迷惑をかけます。皆さんが我慢することが最大のサミットへの協力です」と言われました。
 サミットが何かよく分からず歓迎しなければという雰囲気はだんだんなくなり、冷静に受け止めつつあると思います。基地建設に利用されるんじゃないかという警戒心、あるいは沖縄サミットのねらいはやはり基地建設だったという雰囲気がだんだん強まっています。警備のために交通渋滞など生活に影響が出るのは困ると、生活の確保を県に申し入れた地域もあります。
 宜野湾市議会の次は、名護市議会で動きがあるかもしれません。名護市議会の勢力は、与党が18、野党が12です。勢力的には向こう側の数が多い。知事の候補地発表や県議会の追認決議が先か、候補地と言われている名護市議会が動き出すのか。いずれにしても大きな山場が迫っていることは間違いないと思います。
 ですから、われわれとしても全県組織をできるだけ早く作り、全県的な運動を展開したいと思っています。国会で、ガイドライン関連法をはじめ、次々と反動的な法案が通りました。基地の県内移設を前提にしたSACO合意は、沖縄基地の再編強化であり、ガイドライン関連法と一体のものです。日本の反動化のなかで、沖縄の基地の県内移設・再編強化が一気に行われるのではないかという危機感をもっています。
 ガイドラインや日本の反動化に反対する全国各地の運動と連動してやっていかない限り問題の解決はないと思います。全国的な運動の連携が、一番必要だと思います。
(談・文責編集部)