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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』1999年9月号
国の自治体で、地方財政危機を理由にした地方行革が進んでいる。最初は職員の賃金や人員削減攻撃である。この攻撃を許せば、次は福祉など住民サービスの削減・切り捨てが待っている。地方財政を食い物にしてきた大企業や政府の責任をあいまいにして、自治体労働者と住民の犠牲で乗り切ろうとしている。賃金カット等の攻撃に立ち上がった福岡県地公労の伊藤事務局長にお話を伺った。
今年の3月頃、福岡県当局から緊急財政改革委員会を設置して、財政全般を見直したいと、協力要請がありました。6月になって、平成11年度末の累積赤字は1兆8000億円くらいになる。平成14年度まで3年間にわたって、事務事業、人件費の総額、建設事業の3つをそれぞれ約400億円削減したい、あわせて収入を40億円程度増やして、約1300億円分を改善しないと赤字再建団体になるという提案がありました。
6月28日の県議会で、財政危機だから職員の人件費にも手をつけるべきではないかという自民党県議の質問に対して、麻生県知事が、職員の賃金を3年間3%削減、特別昇給凍結、5年間にわたる5%の定数(人員)削減をしたいと答弁しました。
具体的な金額で言いますと、平均が40才として年間33万円くらいです。対象となるのは、県の職員、小中高の教員、それに警察官です。全部で6万人くらいになると思います。昨年度の調整手当が0.5%カット、過去3年間で旅費などのカットされてきました。また、定数削減は毎年2%ずつ削減してきましたが、さらに5年間延長してやるというのが県知事の考えです。この間の定数削減によって仕事に追われて三六協定を無視せざるを得ない状況があります。それでも仕事が処理しきれないという状況があります。
この問題に対する私たちの態度は、人件費抑制策には基本的には反対です。財政危機の当局責任とか背景や原因を明らかにすることが先です。ただし赤字再建団体に落ちることだけは避けなければならない。そうするとある程度の人件費への影響は避けられないにしても、組合員の負担を出来るだけ軽くしようということを基本的な態度として持っています。具体的な闘いについては人件費というのは最後の最後だ、いわゆる土木事業とか建設事業の削減をやるべきだと臨みました。
財政赤字の原因については、法人税の税収が減ったという一点張りです。歳入が減っているのに右肩上がりの県予算を組んでいたではないか、必要経費以外の事業費を中心に予算規模を大きくして、足りない分は起債(借金)でまかなってきた責任があると追及しました。確かに責任はあるが、私の責任ではないという意識が強くあります。県のこれからの大型プロジェクトについては、第2関門橋や新北九州空港の取り付け道路という計画はあるが、ここ3年間に具体的に予算化するかどうか未定だ、と言っています。
起債が伴う大型事業の見直しが決して十分でなかったことや、国の景気対策に安易に迎合して公共事業を拡大していったことなど、県当局の財政運営にも原因があったことは否定できません。その責任があいまいなままでそのしわ寄せだけが私たち一般職員や県民に転嫁されることに大きな怒りを感じます。
私たちは7月2日に県当局に申し入れをやりました。財政改革にあたっては福岡県の将来の展望を切り開くものにせよ、財政危機の原因と当局責任を明確にせよ、当局の基本姿勢として人勧制度を尊重することを明らかにせよ、人件費については地公労と協議して合意の上で実施せよ、という要求書を出していたわけです。それに対する回答が8月5日に出されるということになりました。
その8月5日に、「地方財政危機突破、地公労総決起集会」を県庁前の広場で開きました。知事交渉の前段として抗議集会、知事交渉(休会・待機)、そして報告集会という内容でした。参加者は約3500人で、この規模の決起集会を県庁前でやるのは、亀井県政時代以来で17年ぶりでした。
知事交渉前に、2万1383名の署名を提出し交渉に入りました。知事交渉で回答の一つは、交渉途中でありながら知事が具体的な数字を提示したことで各職場で混乱をきたしたことのお詫びがありました。財政の将来展望については、県の単独事業の見直しだけでなく、国の補助金事業についても見直したいという回答。県職員の賃金削減はできるだけ負担にならないようにしたいとの回答でした。
今後については、再度副知事交渉を設定して、最終回答を引き出したい。完全撤回は難しいにしても、賃金削減の率をへらすこと、実施時期を遅らせる、特別昇給の問題など、職員の負担が出来るだけ少なくなるように全力をあげたい。福岡県の財政改革を職員の人件費の削減、県民サービスの低下や県民の負担増にならないように、県民も職員も展望のもてるものにするために引き続き努力したいと思っています。
(談・文責編集部)