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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』1999年8月号
 

働く仲間の連携で政治の逆流に反対しよう

衆議院議員 濱田健一




 米国の世界戦略に組み込まれる

 日米防衛協力のための指針によって、日本はアメリカの世界戦略の中に組み入れられつつあります。日本をアメリカのアジア進出の最前線基地にしようとしています。日本も、アジアの中で優位な位置を占めようという気持ちが、アメリカの世界戦略の中にどんどん組み入れられていく結果になっているのではないか。世界とアジアの平和に日本がどう寄与するかということとは逆に、日米が恐ろしい共同歩調を取りつつあると思っています。
 私の地元の鹿児島では、この問題が表面化する段階の中で、沖縄の嘉手納基地に常駐する戦闘機が緊急に鹿児島空港に着陸したり、高速道路を使って模造した人工衛星を鹿児島空港から鹿児島湾まで運ぶ訓練がこっそり行われています。緊急時に沖縄の基地の補助的な役割として、鹿児島空港や鹿児島港が使われる危険性があります。いま鹿児島湾に水深30〜40メートルのバースを備えた人工島をつくろうという計画があります。へたをすると米軍艦の接岸も可能性がある。産業と観光の活性化という目的が、軍事目的に利用されることも考えざるをえません。

 憲法違反の「盗聴法」

 他人の通信の秘密を探るという通信傍受法案。これまでも、いろんな形で日常的に行われてきている事実が明らかになっています。捜査当局がいろんな機材を駆使して、電話やファックス、電子メールなどを傍受するという。4つの犯罪(銃器、薬物、集団密航、組織的殺人)対策に限ると言われていますが、もし成立することになれば、組織的犯罪対策を隠れみのにして、あらゆる活動の分野に適用されかねません。
 通信を傍受しても、それを本人や組織に対して伝える義務もほとんどない。また、捜査当局が通信を傍受するとき、NTT職員の立ち会いが義務づけられ、傍受したい中味以外は機械を止めるということになっています。しかし、立会人には被疑事実は知らされず、会話の中味を聞くこともできませんので、捜査当局の説明を確認することができません。まったく歯止めにはなりません。
 アメリカでも同様の法律がありますが、アメリカ政府のデータによると盗聴捜査のうち83%は「犯罪とは無関係な盗聴」だったと言われています。また専門家によると実際の犯罪捜査に役立っているとは検証されていないと聞きます。
 保坂議員とテレビ朝日の電話会話の内容が盗聴されたのではないかと問題になっています。東京地検が捜査に入りました。誰がやったかは別にして、盗聴が事実であれば、保坂代議士の携帯電話を盗聴していたというより、国民の日常生活のありとあらゆる場に、盗聴の危険性が存在するという一つの実証だと思います。
 通信の秘密という憲法で定められた当然の権利を保障されない国民生活を強いられることは、かつての戦前の特高や公安機関のイメージを再現するものです。盗聴されているのではないかという不安感に満ちた日常生活は、とても民主社会とは言えません。なんとしても廃案にしなければなりません。

 歴史に逆流する政治

 今日の衆議院本会議での国旗国歌法案に対する採決は、賛成が403、反対が86でした。
 小渕首相が「法制化は考えていない」と答弁したのは2月の衆議院予算委員会でした。それからまもなく、2月28日の世羅高校の校長自殺を契機に、政府は法制化へ急速に動き出した。4月の統一地方選挙以後、自自連立に公明が急接近し、事実上の自自公という体制になり、どんな法案でも通してしまおうという流れになった。本来なら通らない法案が、国会議員の数の力で通ってしまう。
 「日の丸」「君が代」が果たしてきた歴史的な役割にフタをしたまま数の力で押し切った。しかも「君が代」の「君」は「象徴天皇」であり、「代」は「国」と定義付けされています。「法で定めるのはいかがなものか」という多くの国民の意見(世論調査)がある中で、政治が数の力を背景に一気呵成に通してしまう姿は非常に恐ろしい。
 ましてや、403対86という数字が、憲法改正の発議ができる衆議院でいう3分の2をはるかにこえる数字です。設置が審議されている憲法調査会との関連性も含めて、21世紀に向けた日本の政治や国のあり方を大きく半世紀前に戻してしまうきっかけになりかねない。
 私は戦後生まれですが、親から教えられたり、学校教育で学んだり、労働運動を経験してきた中で、戦前の実体験はないにしても、過去の歴史に揺り戻す、歴史は繰り返すということを感じざるを得ない、一つの政治的な大きな事象だと思います。
 学校教育は、生身の教師と児童生徒たち、それを取り巻く保護者、地域の中で行われていくわけで、「日の丸」を掲げて「君が代」を斉唱せよ、という強制は絶対になじみません。
 しかし、法制化されれば有無を言わせず、「法律で定められた。学習指導要綱が法的拘束力をもった」ということで、入学式や卒業式だけでなく、運動会や体育祭、他の様々な行事でも「日の丸」掲揚・「君が代」斉唱が登場してくる可能性が大きくなってくると思います。
 法制化によって強制が強まれば、真面目な先生はさらに悩むことになります。一方で、教育の本質を見失い、マニュアル通りやればいい、というサラリーマン化した教員が増えていく可能性がある。そのことは、公教育の現場でのいびつな関係を拡大させてしまうと思います。
 20世紀の前半の暗い時代の流れから、後半の民主主義の時代に変わってきた。それが今、大きく変わろうとしている。ウォーマニュアルと言われるガイドライン関連法、個人のプライバシーを大きく侵害する通信傍受法案、「日の丸・君が代」法制化、そして議案提出権がないとはいえ憲法の中味を調査するという憲法調査会の設置法案等々。野中官房長官の「懸案は今世紀中に処理して21世紀を迎える」という発言。平和主義、主権在民、基本的人権の尊重という日本国憲法の柱も、取り去って国民のいろいろな価値観を一つに統制していく国家主義的な体制のための準備ではないか。私にはそういう姿に見えます。

 働く仲間は政治を意識しよう

 国民意識を一つの流れの中に組み込もうとする動きの中で、労基法の改正や労働者派遣法の問題などを通じて、戦後の労働運動が獲得してきた生活と権利が剥奪されつつあります。いま働く仲間たちがバラバラにされてきています。いまの経済の低迷の中で、経済再生や雇用改善が優先だということかも知れませんが、生産現場の働く仲間たちが政治を意識しないと、政治は国民の願いとは逆の方向に流れてしまう。
 過去の歴史も振り返りながら、現在の政治状況が来るべき21世紀に向けて、国民全体にどういう影響を与えるのか、将来の日本の姿について、多くの働く仲間と一緒に見つけだしていく学習や行動が必要だと思います。
 社民党が少ない政治勢力になってしまったことは事実ですが、国民が平和で、心豊かな21世紀を迎えるために、権力の側におもねない勢力と国会内外での運動を建て直すために全力をあげたい。
(文責編集部)