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月刊『日本の進路』1999年3月号
原子力空母の横須賀母港化
NEPAの会、立教大学名誉教授 服部 学
横須賀はいま3隻目の通常型空母『キティホーク』の母港になっている。しかし通常型は次第に退役し、このままでは2007年頃には原子力空母しかいなくなってしまい、横須賀が原子力空母の母港になりかねない。先のことではない。昨年8月、米会計検査院(GAO)は「通常型と原子力空母の費用対効果」と題する報告書を発表した。この中ではっきりと横須賀の名前を上げて工事費用の試算をしている。日本の外務省はまだ話はないと言っているが、米国では議論は既に公然と始まっている。
GAOは、日本政府がお金を出していろいろの付属工事を終えるには、7年乃至15年はかかると言っている。昨年の調査で鉛や砒素のひどい重金属汚染が発見されたにもかかわらず、防衛施設庁が12号バースの延長工事を強行しようとしているのはこのためとしか考え難い。
詳細は発表されていないが、原子力空母は熱出力で約90万kW(熱効率は約30%)と推定される原子炉を動力用に使っている。横須賀が原子力空母の母港になるということは、市役所から歩いてもすぐの所に原子力発電所が置かれるのと同じことである。しかも日本側は法に基づく一切の安全審査をすることができない。基地の中に日本の法律は適用できないにしても、一歩外に出た東京湾は日本の海である。おまけに東京湾は世界でも海上交通の激しいところでもある。
この報告書でGAOはまた、日本は原子力に神経質(センシティブと書いてある)だから、米国政府は日本政府と慎重に交渉すべきであるとも書いている。これは逆に読めば、私たちが神経質になれば母港化を食い止められるということでもある。皆さん大いに神経質になっていただきたい。
米海軍の準機関紙『プロシーディングス』の98年9月号によれば、97年9月に「原子力空母ニミッツが横須賀に寄港した第一の目的は将来、原子力空母が横須賀を母港とすることへ日本人を慣れ親しませることだった」と書いているそうである(99年2月10日、神奈川新聞)。
昨年11月「原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会」が発足した。現在横須賀市長に対し、1.港湾法に基づく市長の権限によって、12号バースの延長工事を認めないでください、2.原子力空母の母港計画・寄港のストップを表明し、そのために必要な行動をとってください、という署名運動を進めている。さいわい署名数はどんどん増えているが、まだまだ始まったばかりである。皆さんにも是非協力していただきたい。
なお、署名用紙、パンフレット、ちらし等は下記に揃えてあります。
<連絡先>
〒238-0008
横須賀市大滝町1−26、清水ビル3階、
呉東・小林法律事務所気付
原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会