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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』1999年3月号
校長を自殺に追い込んだ国と広島県教委
全国で日の丸・君が代法制化反対の声を巻き起こそう
2月28日、広島県立世羅高校の校長が卒業式の前日に自殺した。文部省や県教委などによる日の丸掲揚と君が代斉唱の強制が、同校長を死に追いやった。今回の事件に至る経過をみてみよう。
このように、文部省、県教委、自民党県議団、右翼が歩調をあわせて、学校に日の丸・君が代を強制する異常な体制がとられていたのである。そこには、学校や生徒の自主性を尊重する姿勢はみじんも見られない。
- 98年4月、文部省が広島県を調査し、5月20日に「是正指導」。
- 12月17日、広島県教育長が県立高校校長へ通達。「卒業式及び入学式などにおける国旗掲揚及び国歌斉唱の指導が学習指導要綱に基づき適正に実施されるよう」。
- 99年2月23日、県教委が県立学校校長に、卒業式における国旗・国歌の実施状況、教師の服務状況について、式終了後直ちに報告するよう通達。「これを職務命令と受け取ってもらってよい」。
- 中国新聞によると、「県教委は各校長に対して、職員会議が終わるたびに状況報告を求め、24時間体制で指導していた」。
- 右翼勢力がつくった広島県教育会議設立準備会が、各PTA会長に国旗掲揚・国歌斉唱についての実態調査表を送りつけ、PTA会長が実施状況を監視して実態調査表に記入するよう求める。
- 自民党県議団が各県立学校の卒業式に乗り込んで実態調査を行う。調査項目は、
などと詳細に定められていた。
- 式次第に国歌斉唱が盛り込まれたか
- 国旗掲揚はなされたか、その方法はどうか
- 君が代は斉唱されたか、起立しない者がいたかどうか
- 校長が式辞の中で、過去の戦争責任や戦争における日の丸の役割についての話はなかったか
- 世羅高校の校長宅には、自殺当日の直前まで県教委の担当者が訪問していた。さらに教育部次長も「指導」に訪問する途中であった。
文部省の集計によると、広島県の県立高校の卒業式における君が代斉唱率は、94年度が25・2%(全国77・6%)で、97年度には18・6%(全国80・1%)へと下がっていた。ところが、今回98年度の斉唱率は88%と急上昇した。
この事実からも、文部省、県教委、自民党、右翼による学校への圧力が、いかにすさまじいものであったか、想像に難くない。そして、世羅高校の校長は自殺に追い込まれた。
事件直後の3月2日、野中官房長官は世羅高校校長の自殺を逆手にとって、日の丸・君が代を法制化する方針を明らかにした。それに先立つ2月18日、共産党が柔軟路線の一環として国旗・国歌の法制化を唱える見解を明らかにしていた。政府は共産党の主張にも勢いを得て、法制化に踏み込んだのである。
朝日新聞は3月2日社説で、「学校や生徒の自主性を大事にするいうのは教育行政の大きな流れと言える。それなのに、日の丸掲揚と君が代斉唱だけは、上から形式的に強制する。そこだけ逆流しているような違和感がある」と指摘している。
広島市は世界で最初に原爆が落とされた都市であり、平和問題への県民の関心が高い。また同和問題への関心も高い。それだけに日の丸・君が代問題については教職員組合と学校当局・教育現場で真剣な討論と取り組みが行われてきた。
それゆえに、君が代を強制する県教委の辰野教育長に対する教職員の反発は強く、今回の事件が起きる前に、県下の教職員の6割に当たる1万2563人の教職員が、辰野教育長不信任の署名をおこなっている。事件直後には、「第9条の会ヒロシマ」など13団体が同教育長の辞任を県教委に申し入れている。
広島県民の闘いを支持し、全国で日の丸・君が代法制化に反対する声を巻き起こそう。