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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』1999年1月号
代表世話人年頭メッセージ

「危機」の「機」の字に期待をかけよう

武者小路公秀


 昨年は、無力感にうち勝つことなしに新しい年を迎えてはいけない、という思いのうちに終わった。猛威をふるうグローバル覇権国米国のイラクに対する無法で不法なミサイル「処罰」行動、これを容認して怪しまない日本の従属的姿勢、これに対して何も役に立たない無力感。やはり、猛威をふるうグローバル賭場経済の被害者である西成のホームレスの方々に強制立ち退き命令を下す官僚の非情。これに追随する「常識」のかけらもない無感覚な世論。こんなことが許されてはならない。そんな諦めムードの年越しはしたくない。
 グローバル危機は、人が造った危機であって、天災ではない。米英両国のミサイルの発射を決定したのは、クリントン米国大統領と、彼にアングロサクソンの誼みで同調するブレア英首相であった。彼らは、冷戦後に米国が編み出したグローバル安全保障戦略を忠実にイラクに適用したに過ぎない。つまり、基地展開・処罰・監視の三原則に従って、イラクを監視する「査察」がうまくいかないということで、イラクを「処罰」した。このような覇権戦略は、米国の力が圧倒的に強いことを前提にして、はじめてできる権力の示威であるが、世界の弱小諸国からみれば、全く正当性に欠ける横暴でしかない。処罰されれば、それだけ世界の小国から同情される。ところでこんな馬鹿げた覇権安保は、米国からみれば自国のためばかりでなく、グローバル経済の大競争の安全を保障するための決定である。世界の大企業は、石油の安定供給を破りかねないフセインを処罰する決定を支持している。
 その決定は、大阪の路上にテントを張る人々と関係がないようで、実は深い関係がある。先進工業「民主主義」諸国は、ミサイルをぶっぱなしてでも、多国籍大企業の大競争を促進し、これをリードする覇権体制を敷こうとしている。日本もグローバル化した日米安保の新ガイドラインによって、その片棒をかついでいる。これに抗するものは「処罰」され、抵抗しないものは切り落とされる。どちらを選ぶかは、自由競争だからあくまでも被災者の自由。しかし、私有制社会の公道での交通、世界市場での資本移動の邪魔になる者は、ホームレスでもイラクでも許されはしない。
 そんなわけで、大競争は世界各地に貧困と失業、紛争と恐怖とを撒き散らす。その最たる被害者が、さらにこの覇権権力構造の末端にある行政の決定に苦しめられる。そんな人造のグローバル危機に対して、人間が諦めて切り落とされる道理はない。たとえば、地雷の被害に我慢できなくなった人々は、世界の国々を動かして地雷撤廃を条約化した。あまりにひどいことが繰り返されれば、世界世論は無感覚ではありえなくなる。そこに「危機」の「機」の字が生きてくる。
 今年こそ「機」の字を生かす反「グローバル」覇権の運動、「グローバル」な反覇権の広範な人々の連合を造る好機としたい。この思いを、単なる「初夢」にはおわらせたくないものである。