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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版35号(2007年5月発行)
馬毛島(まげしま)は無人島としては日本で2番目に大きく、周囲12kmの島である。この島は、昭和末期には石油備蓄基地誘致をにらんだ土地の買占めに翻弄され、現在は島を所有する業者の意のままに乱開発が横行し、さらに今年2月、米軍関連施設の最終候補地と大きく報道された(写真は馬毛島中央部。マゲシカの繁殖地となっていた美しい森も突然に消滅。島南部から中央部は完全な裸地となっている)。
馬毛島は種子島から真西12kmに位置し、海抜70mほどの平坦な島である。全く山がないのに真水が流れる不思議な島で、渡り鳥の休憩地となっていた。数年前までは、数多くの子どもたちが夏休みに貴重な自然体験をした場所でもあった。また、この島は、種子島や屋久島と水深100mに満たない浅い海底でつながり、種子島の漁業には最高の漁場で、その関わりは数百年をさかのぼる。今でも、馬毛島を漁師たちは「宝の島」と呼ぶ。馬毛島の魚で子どもを育てたと言う。
かつて100世帯が住んでいたが、高度成長と共に出稼ぎが相次ぎ、また日本全国バブルの頃、すでに倒産した平和相銀に買収され始め、完全無人島となったのが昭和55年である。現在の地主(東京在住)に平成7年に買収され、その後平成11年ごろから採石工事などの乱開発が始まった。これまでの漁業や自然環境に対する配慮が全くなされないままの乱開発によって、漁場に土砂が流れ込み海は一変した。現在、島の99・9%をこの業者が所有している。
私たちは漁師や市民有志で、採石工事差し止め、砂利採取工事差し止め、また軽飛行場建設の差し止めを求めた裁判を鹿児島地裁に行ってきたが、採石工事差し止め仮処分で一度鹿児島地裁が工事を差し止めたものの、その後の裁判はすべて業者の主張が認められる、残念な結果となっている。
このような中で今年2月23日、朝日新聞が馬毛島が米軍の艦載機離発着訓練場の候補地であると報道した。かねてより根強く聞こえていたうわさのとおりとなった。
観光産業に将来をかける屋久島と種子島の地元自治体は早速3月10日、それぞれの首長と議長が集まり、誘致反対の決議を行っている。ところが、自治体の厳しい財政難と不景気が長引いている中で、何らかの経済効果に期待すべきで反対決議は時期尚早だと、一部住民からこの決議に批判的な声も聞こえている。特に憂慮されるのが、先に衆議院で可決された米軍再編特措法である。今後地方は補助金交付という強烈な圧力と戦わなければならない。武力はいらないという当たり前のことのために。
馬毛島は今、差し迫った危機がある。すでに馬毛島の自然は壊滅的な状況にある。具体的な事業計画が示されないまま、南北4キロ、東西2キロの滑走路2本を持つ空港建設に向け、馬毛島全島が伐採されつつある。環境アセスメントや自然環境に関する一切の調査が実施されないまま、個人の所有であることや「島」であることから、監視の目は行き届かない。ほぼ全島の森林が消滅し、また裸地となることで、漁業への影響は計り知れない。にも関わらず、行政の調整機能も業者への指導力も皆無であり、馬毛島の惨状に対する行政責任は大きい。
一方、長期的危機もある。防衛という名目のもと、国はその方針を明らかにしないまま、米軍との協力強化を推進している。わずか数十キロの範囲に大隈半島の鹿屋基地がある。今後馬毛島が何らかの形で軍事利用されるとすれば、このような周辺地域との関係が浮上してくると思われる。
いよいよ、憲法改正の動きが本格化しつつある。すべてが関連し、また相互作用してくる社会情勢にあって、私たち市民運動も連帯強化の時代ではないだろうか。