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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版27号(2005年5月発行)

「平成の大合併」の問題点をさぐる・神奈川県津久井町

飛び地合併、「通過儀礼の場」と化した議会

神奈川県津久井町議 佐藤健一


 「平成の大合併」を媒体として、地方議会の熟度、地方議員の資質が試されている。私の住むのは、神奈川県の北西部に位置する人口3万人足らずの町だが、市町村合併を巡って、相模原市と津久井郡4町(城山、津久井、相模湖、藤野)が混迷を深めている。
 去る2月14日、津久井町議会臨時会に、相模原市と津久井、相模湖町の1市2町による法定合併協議会設置議案が提出された。合併特例法の期限である3月末までに申請を目指すという内容だ。
 昨年11月18日、城山町を含む1市3町任意合併協議会の協議が整ったとしていた矢先、突然の「飛び地」合併提案である。新市の区域を分断する「飛び地」合併は、教育、福祉、防災をはじめ、コミュニティの近接性や市民の一体感等、住民生活のあらゆる分野で問題を抱えていることから、議員の質疑が集中した。
 また、相模湖町議会でも反対、賛成双方が論議を繰り広げ、相模原市議会では市長不信任案が提出され、夜まで紛糾したが、3議会とも賛成多数で可決している。
 驚いたのは町の対応で、設置議案を提出する前から、1市2町議会において関係議案を可決し、協議会が設置されたことを知らせる広報「つくい」が用意されていたのである。合併によって、活力ある自立分権都市を目指すとしながら、議会を「通過儀礼の場」としか考えていないのだろう。「議決の道具」にされた議会も、情けない限りだ。
 驚くべきはこれだけではない。法定協議会が設置されると、1市3町任意協議会のメンバーをそのまま委員に選任し、枠組みの異なる任意協議会の合意事項を前提にして、2月17日から3月13日まで、わずか3回の猛スピードで協議を終わっている。そこにあるのは、「拙速」の2文字と強引な手法だけで、地域の将来を考える余裕も、メリット、デメリットを検証する時間も全くないのである。協議会までもが「通過儀礼の場」と化したのでは、住民はたまったものではない。ブーイングの渦の中、3月23日の本会議は、1市2町「飛び地」合併に伴う廃置分合議案が提出された。「平成の大合併」に組み込まれ、身動きできなくなった自治体が、合併特例法の申請ラッシュに乗り遅れまいとする「駆け込み」乗車である。疑問や不安を募らせる住民の手を振り払い、行く先の分からない「合併」バスに乗ろうというのだ。
 町のシナリオ通り、「議決の道具」になり下がり、議会を「駄目な組織」の代名詞にしてはならないと、町長不信任案を提出して抵抗したが、賛成多数でこれを可決、3月31日、県知事に申請している。また、4月1日、城山町を加えた1市3町及び藤野町との1市1町法定合併協議会が設置されたが、理念も展望もない「場当たり」対応に、首をかしげる住民は少なくない。
 いま、市町村合併を巡る混乱は全国的な傾向だが、これは国策と無縁ではない。特例法の期限内に合併すればとアメをぶら下げ、合併しなければとムチをちらつかせる。国の意図通りに住民が対立し、いがみ合い、地方が右往左往していないだろうか。
 この際「選択は住民」の原点に帰り、合併論議に理を尽くすべきだ。そうでなければ、住民がむなしさ、失望感を募らせ、国がほくそ笑む、奇妙な図式がどこまでも続くことになる。分権が本物か否か、地方の真価が問われているのである。