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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版26号(2005年2月発行)
―浪岡町民の闘いに学ぶ―
1 全国に例のない闘いの展開
昨年10月の青森市・浪岡町両議会で、また、12月の県議会で、今年4月1日付の青森市・浪岡町の合併を正式に議決した。この議決を受けて、今年1月18日に総務省からの告示があり、法的な合併手続きは全て完了しました。
しかし、浪岡町では日増しに「合併反対」の声が高まり、ついに昨年暮、合併推進の加藤・浪岡町長はリコールとなった。読者の皆様がこの原稿に目を通す頃は、合併反対の古村一雄町長(社民党・前浪岡町議)が誕生していると思っている。
全国各地でも様々な住民運動や合併反対の闘いが広まってはいるが、正式な合併手続完了後の町長交替、そして合併取消しを求める闘いは他に例はない。全国注目の闘いとなるであろう。
2 何故青森市との合併なのか
浪岡町はかつて津軽藩主に仕えた城下町で、全国有数のりんご産地。元々生活圏は津軽であり、上下水道やゴミ処理など多くの事業は津軽地域の広域事業として行われてきたのである。当然にして合併への協議も、弘前市をはじめとした津軽地域の市町村との間で進められてきたのである。
ところが昨年の春頃、突然青森市との合併へと方針転換し、津軽地域との合併協議から離脱してしまったのである。「何故突然青森市との合併なのか!」と町民は怒り、激しい闘いへと進んでいったのである。
3 両首長の利害が一致
青森市は人口29万7000人弱の県庁所在市。様々な街づくり事業を施し、2年に1回行われる国勢調査に30万人の夢を託したが、その夢ははかなくも散り続けてきた。30万人を目指す青森市にとって、合併は天が与えた正に光明であった。
22万人の人口を有する八戸市は、当初10数町村との広域合併をめざしていた。へたすると八戸市に30万都市の座をゆずることにもなりかねない。まして、八戸市は既に新幹線も開業し、町の発展も見せつけられている。
「このままでは、県都としてのプライドが失われる」とあせった青森市長は浪岡町との合併に異常なまでにこだわったのである。
30万、それはあこがれの中核都市への仲間入りを意味している。中核市になれば、県の事業の相当数が青森市へ移管し、権限と権威が一気に高まることとなる。正に県都としてのプライドをかけた合併なのである。
浪岡町長へのラブコールはすさまじく、約10対1の人口差がある浪岡町に対し、青森市長は「合併特例債220億余円の約半分を浪岡町にやる」「国民健康保険や上下水道料などの公共料金は安い方を選択する」「浪岡の町立病院は建替えし、浪岡庁舎に農林部も置く」等々、最大限の条件を提示した。こうして両者の利害は一致し、合併実施へと向かうこととなったのである。
4 「求める会」の結成へ
このように合併は、市民・町民をないがしろにして進められたのである。
実質的には吸収合併となることで、合併機運が高まらない青森市と比べ、浪岡町民の「町が消される」との危機感は想像以上に強い。浪岡での各町会毎に行われた説明会場は、どこも町民であふれ、日増しに合併への不信感を強めていったのである。
こうした町民の声を受け、保守系の一部議員と社民党・共産党が結束し、「浪岡町住民投票を求める会」(略称「求める会」)を発足、その後本格的な合併反対運動を展開していくことになる。
5 ついに加藤町長の失職へ
「求める会」が第一に取組んだのは、「合併の是非は住民自身に決めさせるべき」と合併の是非を問う住民投票条例の制定である。
署名は法定数を大幅に上回る8千近い数が集まったが、町長と町議会はこれを否決した。これに反発を強めた「求める会」は、町長のリコールを求め再び署名運動を展開。7千名を大きく超える署名が集まり、正式に町長の解職の可否を決める住民投票の実施が決定した。そして、昨年12月末、ついに町長の解職が成立した。7千対4千の圧倒的大差での解職に、町民の強い意志が見てとれる。
いよいよ2月13日、出直し町長選が行われる。2度目の町民の合併への意見が、まもなく示されることとなる。
6 予想される徹底抵抗
国の示した合併特例法は、こうした混乱と矛盾を想定したものとはなっていない。総務省の担当者は「こんな話し、聞いたことがない」と開き直る。二度にわたる合併反対の町民の意思が示されたとしても、法的には合併の解消は不可能だという。また私が「合併後、もし、合併特例債をしっかりもらって、その後再び2つに分割することになったとすれば、特例債を返せと言えるのか!」と問い詰めたら総務省は「返還の義務は法的にはないが、そんなことは勘弁してほしい」と答えたのである。正にザル法である。
合併反対の古村一雄町長が誕生すれば、考えられるあらゆる抵抗が繰り広げられると思われる。合併に向けた全ての準備事務に手を出すな、と職員への業務命令の発動。上下水道などの共同事業の申請の拒否。そして、裁判闘争の展開…。極めつけは、合併後に行われる新青森市としての市長選(4月)で現市長が職務を離れた間隙を縫って、職務執行代理者として浪岡町長が分割決定を強行することもありえないことではない。
7 民主主義を守る闘いとして
いずれ、新青森市はこうして混乱と不信の渦巻く中で、今年4月1日誕生するであろう。
この流れを止めることは難しい。それはもはや住民の意思が踏みにじられ、本来の目的とかけ離れた合併となることは明らかである。
その責任の一端は、議会と首長にあることは当然にしても、最大の責任は国・小泉内閣にある。
国の財政破綻の責任を地方に転嫁し、そして深刻な住民の対立を生み出した責任は、選挙を通じてとってもらうしかない。
浪岡町民の合併反対の闘いは、たとえ敗北に終わったとしても、必ずや全国の地方自治体への問題提起となり、全国の闘う同志へ勇気と希望を与えるであろう。
正に日本の民主主義と地方自治体の主権を守る闘いなのである。
全国の仲間のご健闘とご支援を、心から期待する。(所属会派 社会民主党・市民連合)