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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版26号(2005年2月発行)

地方は交付税削減に反撃できるのか?

香川県議会議員 梶 正治


交付税削減は国と地方の財政戦争

 平成16年度(2004年度)の予算編成が山場を迎えていた2003年末、政府は一方的に交付税の削減を発表しました。臨時財政対策債を含む削減額は全国で2.9兆円、県の予算担当者はもちろん、自治体職員全員に激震が走りました。香川県でも普通交付税で80億円(6.6%)の減、臨時財政対策債で111億円(27.8%)の減という莫大な金額でした。あらゆる名目の基金取り崩しはもちろん、病院事業への貸付を水道事業に肩代わりさせるなど、対策といえないテクニックで16年度予算をなんとか編成したというのが実情です。県内のすべての市町(香川には村がない)が「もうこれ以上は無理です」と悲鳴を上げておりました。財政赤字のつけを地方に(住民に)押し付けて乗り切ろうとする小泉内閣の本質が明らかになりました。
 そして2004年10月22日の経済財政諮問会議で、谷垣財務大臣は「(1)地方財政計画に過大計上が7〜8兆円あるので、05・06年度で交付税をそれだけ減らす。(2)交付税に頼らない自治体になれ。(3)交付税総額を保証することはできない」と一方的な主張を持ち出しました。そもそも2.9兆円の交付税削減は、「三位一体改革」の一部として、先に地方が痛みを受けたはずで、本来は税源移譲があってしかるべきところです。少なくとも2年間は、これ以上の削減はゆるされないものです。さらに2年で8兆円の削減ができるはずがありません。

「国の優等生」も反発した交付税削減

 これまで、香川県は国の優等生で「赤字県債での不況対策にも熱心に協力。単独事業や補助事業も、よその県で断られても香川県なら受ける。国の天下り職員もたくさん引き受け、総務部長(今は政策部長)や土木部長は長年指定席。(少し前までは財政部長と教育長も指定席だったのに、社民党や組合で追求し、影でコントロールするようになった)」というありさまです。ところが、11月10日、県予算調整室(財政課)が地方交付税額がいかに削減されるかを発表して、谷垣財務大臣案に反対しようと呼びかけたのです。県のインターネットホームページにも「16年度当初予算(一般会計)の義務的経費(人件費、公債費)に充当された一般財源2369億円に対して、地方交付税等1451億円と県税等1222億円の計から532億円を差し引くと、2141億円になり、義務的経費さえ賄えない状況になる!」と、「!」つきで発表し、「谷垣財務大臣の案は、県民のニーズに応じた県の行政サービスの提供を不可能にするだけでなく、地方財政そのものを破綻させるものと言わざるを得ない」は太字で強調してあり、「不合理な削減の阻止に向けて行動していく必要がある」と過激に呼びかけているのには驚きました。
 市町への影響は県内全体で約251億円。市で最大の削減となるのは高松市の73%減(83億円)、町では宇多津町の83%減(8億円)となり、義務的経費が地方税と地方交付税の合計を超えるのが4つの市と4つの町(香川は37市町)になると試算しています。「地方税と地方交付税が義務的経費にとられ、住民のニーズに応じた地域独自の行政サービスを提供することができなくなるおそれがある」とし、地方交付税の総額確保に行動せよ、と呼びかけています。
 総務省からの天下りが政策部長(財政担当部長)になっている影響でしょうが、それにしても危機感が強いことは確かなようです。

しかし、行動は変わらない

 口先では勇ましいのですが、本当に国と闘う腹構えはないようです。なぜなら、県が作った「平成17年度国への重点要望項目」(16年6月作成)では、相変わらず大型公共事業の陳情が目白押しであり、従来とまったく同じ行動パターンを繰り返しているからです。国と対決するなら、直轄事業は返上するぐらいの構えは必要です。「自分のところだけは予算をもらいたい」というスト破りのような姿勢では相手に足元を見られて当然です。重点要望が実現したら、それこそ香川県財政はパンクするはずです。
 10月に発表した「香川県財政再建方策」には今までの財政運営に対する総括はなく、財政破綻を避けるため、ひたすら職員と県民に犠牲を求めようとする中身です。再建方策では当面3年間で予想される財源不足886億円を捻出するために(1)職員の賃金カットで198億円(3年間)、(2)県独自の福祉政策カットで約5億円、(3)市町等への補助金カットで数億円、(4)一部の公共事業休止と投資的経費の単独事業10%、直轄事業3%削減で約80億円の歳出を削減する計画です。さらに不足する財源は300億円の財源対策債(これは建設事業にしか使えない)を発行予定。その上、公共事業カットの見返りに、70億円の新規枠単事業(工事箇所を決めずに予算を確保しておく)など、根本的解決には程遠い提案です。しかも、日本一狭く、川もない香川県に新規ダム事業が4つとも見直しされずに残っており、まったく理解できません。借金によって損失を先に飛ばしてしまおうという、ひどい内容であり、再建策が実行されても3年後にはまた新しい対策が必要だということになります。
 
身の丈にあった財政運営を目指して

 これまで、私たちが県議会で一貫して主張してきたのは「身の丈にあった財政運営」でした。県の財政事情が急激に悪化したのは平成7年度から10年度にかけて、国の景気対策にあわせて箱物施設を乱発し、県単独公共事業を大幅に増額してきたことが原因です。サポート開発事業の大失敗、歴史博物館や県民ホール、レベル最低の東山魁偉美術館、ぜんぜん売れない東ファクトリー工業団地、5つもの健康生きがい中核施設…いまさら「国にだまされた」と言っても、言い訳にもなりません。国自身が財政破綻しているのに、「必ず交付税で返ってくる」などという空手形を本気にしていたなら、先を見る力はゼロだということです。むしろ、財政破綻を承知の上で放漫経営を続け、最後には債権者(職員や県民)に泣いてもらおうという、計画倒産のような手法ではないでしょうか。
 そんな不正を許すわけにはいきません。今、香川県職労や自治労香川県本部が中心になり、県民の皆さんへの宣伝キャンペーンを行っています。大量の宣伝ビラと議員による街頭宣伝、四国新聞と朝日新聞に1頁全面の意見広告などを掲載しています。県職労は各部長との交渉を積み重ね、幹部の責任追及を行い、財政運営のあり方を変えさせようと取り組んでいます。1月28日には1時間の時間内集会も構え、組合員の熱意は高まっています。賃金カットで困難に直面し、県政運営のあり方を変えようとする意識の高まりを感じます。それぞれの職場で、事業の必要性ややり方について、あるいは目的について、これまで以上に突っ込んだ議論が出てくるようになっています。
 県議会(45名中、自民30・公明2・社民7・その他6)は、自民党独裁状態ですが、自民党の内部矛盾も拡大しています。再建方策で事業休止とされた「琴電連続立体交差事業」や「基幹林道事業」などを復活させようと必死です。こんな財政状況を作った張本人が自民党政府であることははっきりしており、批判はそのまま自分たちに跳ね返っているはずですが…そう理解できないところに限界があります。
 財政再建の論争は、これまでの県政運営のあり方全体を問い直す中から、県民の期待にこたえられる新しい自治体のあり方を問う闘いだと考えています。住民と市町の立場に立って国と対決できる香川県政づくりをめざしてがんばります。