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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版23号(2004年5月発行)
昨年4月の地方統一選挙で初当選後の7月17日、県内町村議長会の主催による新任議員研修会に参加しました。これまでの市民運動で経験してきた「開かれていない地方議会」のあり方(課題)などの講義に期待をしていましたが、内容は散々なものでした。
講師は『前都道府県議会議長会議事調査部長』という肩書きを持つ野村稔氏。演題は「地方議会の制度と運営」についてでした。
その道40年余と誇らしげな自己紹介と「私は議会と議員の味方と自負しています」という言葉で議員(聴衆)を引き付け、実例や経験に基づいた話しぶりには5時間を退屈しなくて済んだと思った議員は多かったに違いありません。
しかし、少なくとも私たち数人の女性議員には、苦痛そのものでした。女性でなくとも軽率な発言や地方議会の軽視とも取れる発言などに不快感を抱いた議員もきっといるはず。その例として、
(1)選挙には金がかかるという話の中で「議長選挙に1千万円を使うこともあり、地方の議長選挙 に流れる金の平均相場は22万円、あなた方に は配られていないだろう」
(2)議長権限の説明中、議長席を離れていても「議長(議場内)がいる場所」で議長権限を行使で きる、とする具体的な過去の実例として「横浜市議会において、女性議員が議長席を占拠したので、男性が女性を排除するのにセクハラを恐れ、毛布2枚を使って簀巻き状態で排除しました。皆さんの議会事務局にも毛布がありますか」「昭和29年、衆議院で『警察法改正』の審議に当たり、議場にパリケードが張られ議長席に旧 社会党の女性議員(実名で)が座っていて、議長は議長席につけなかったが採決できました。 後にその状況を記した本の中に、彼女(実名)が議長席で『キヤーキヤー』言っていると思ったら、男性議員からスカートの下に手を入れられていた事が記されていました」(会場に笑い)
(3)議員選挙について「最近の選挙は、若い・女性といっただけで当選する。政策論争で選挙をしてほしい」
(4)議員報酬に関して議員報酬は安い。女性議員はだんなの給料があるからまあいいが、男性議員はこの報酬では妻子を食べさせてはいけず、女性を働かせてそのヒモになっている。ヒモはやくざの世界だけのことではない」
(5)議会の委員会傍聴に関して「ある町で給食費の値上げが提案され、委員会傍聴にお母さん方がたくさん来ていた。選挙を間近に控えていたので議員の発言が制限され、翌日傍聴を許可せず 採決できた。市民運動で傍聴に来ているのはいいが、それで議員の発言が制限されるのはいかがなものか」
(6)意見書の取り扱いに関して、2002年から03年にかけて米国の『イラク攻撃』に反対する意見書が全国500の自治体で可決されていることに触れ「外交に関しては国会で取り扱われるもの、地方議会は地方のことだけを考えればよい。国会、都道府県議会、市町村議会にはそれぞれの役割がある」など。
これらの発言に関して、自ら何らかのフォローをされたのであれば、私たちの怒りはそれほどでもなかったと思います。ただ笑い(男性議員が圧倒的に多い中)を誘うためだけに、出す必要もない女性蔑視(同様の事例を2件も出すなど)や差別、地方議会(地方議員)軽視など問題発言のオンパレードではないか、と怒りは心頭に達していきました。
質問や意見交換の時間も取らない5時間聞きっぱなしの講義に、業を煮やした私と他町の女性議員3名は、このことを問題にしていくことを確認し後の行動につなげていきました。
講師である野村氏と講師選定を行った事務局、町村議会議長会長あてに提出した講義内容は「国が推進している男女共同参画社会に逆行する女性蔑視や差別発言、イラク攻撃反対は地方議会で論議すべきでないなど地方議会軽視発言に抗議するもの。)とりわけ新任議員には、情報公開や住民自治の確立のための課題に取り組むためにも住民からの期待が強く寄せられる中で、その議員を研鑽し啓発していかなければならない研修であるのにもかかわらず、そのような課題に答えることがなかった。講師の選定にかかわった事務局の責任と、事務局任せにした議長会長の責任も問うもの」でした。
まず、女性蔑視や差別発言などを問題とすることから福岡県内の女性議員ネットワークの協力を得ることで、8月5日50有余の参同署名を添付して、議長会長と事務局長に講師選定基準などに関する質問を添えた抗議文を提出し、講師に抗議と謝罪を求める)文書を郵送しました。
同月末、議長会長が事務局長と列席の上「自分は講演内容は聞いていない(講演録をとっていない)が問題発言の項目については、聞いていた事務局長が大筋認めているので皆さんの抗議を真摯に受け止める。特に男女平等について、男性の意識改革のためにも年内に女性講師を招いて議長会で開催したい」と誠実に対応してもらいました。後日1月末に開催。
しかし、講師本人からは回答文書は届きませんでした。事務局の話では、過言モにこのような抗議を受けたことがなく、謝罪するつもりがないということでした。そこで、9月初旬、賛同者の方々に講師への「はがき抗議」を呼びかけました。
本日まで、講師からの文書による回答はありませんが、後日はがき抗議行動を起こして下さった数人の議員さんからは、議会事務局などを通じて、講師から本人に直接電話による苦情があったということを聞きました。例えば「そちらで旅費を出せば説明に行く」とか「今までこのような抗議を受けたことはなく、数人の話を鵜呑みにして抗議することは無責任とか、言うことに事欠いてある議員の過去の職歴(教師)を調べて「教師と生徒の関係で言えばあなたは生徒の身、生徒は教師の言うことを聞くペき」といった趣旨の電話もあったと聞きます。このような官僚的発想や発言が旧態依然の議会の閉鎖性を持続させていることに気がついていらっしゃらないようです。「新人議員(女の分際で)のくせに生意気な」といった高みの発音など正にそれを象徴する言葉です。
これまで賛同していただいた議員さんからは「女性であるだけで、議会で不当な扱いを受けた経験がある、勇気ある行動に敬意を表し大いに賛成するものです」とか「女性議員だけの問題ではない男性としても許せるものではない、議会の中で議論します」など、たくさんのご支援と御協力をいただきました。一連の行動後、ある議会では、同氏の講演予定を直前でキャンセルしたり、他町の議会でも同氏の講演の冒頭で今回の問題発言について、ある議員がイラク攻撃問題の件について、質問して議論されたということです。
福岡県の地方議員交流では、(裏表紙に同第22回開催の案内参照)昨年10月に開催された「地方議員交流会」で経過報告と問題提起をさせていただきました。
今回の行動について、地方自治の根幹である住民の意志を反映した地方議会の透明性の高い「開かれた議会」の一役を担う新参議員やとりわけ女性議員のネットワークによる連携が功を奏したといえるでしょう。
今後の議員研修において、一方的に講義を聴くだけではなく、質問や意見交換の時間を設けていただくよう要請したことも申し添えます。