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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版23号(2004年5月発行)

壁が厚い介護保険の改善

岩手県滝沢村議会議員 川原 清


 私は、介護保険制度が始まる以前の新ゴールドプランの頃から改善策を提言してきたが、周辺自治体との横並び主義の行政の姿勢の中では改善の壁は厚かった。

滝沢村の状況
 滝沢村は盛岡市の北西に位置する人口52,652人(04年2月末現在)の村である。県都盛岡市のベットタウンとして1970年頃から急激に人口が増え、住民の平均年齢は37.2歳で県内一番若く、一方の高齢化率は11.1%でこれまた県内一比率が低い。
 介護保険料は2,835円で低いがこれには訳がある。
 本村の場合の老人福祉は従前から「民活」と言う名の民間任せである。多くの事業を民間に委託をしてきた歴史的経過がある。これまでは老人比率の低さからそれでも充分対応が出来た。
本村には特養ホームが1箇所、老健施設が2箇所、療養型医療施設が1箇所のほかにデイサービスセンター3箇所が民間で運営をされており、村はその事業に委託費を支払っているだけで独自の施策はほとんど無い。施設入所などは周辺の広域自治体にも多くお世話になっているのが実態である。

改善策への提言
 私は、介護保険制度の発足当時・以前から次のような提言している。
1、介護保険の広域化
本村の特殊事情として人口移動が激しく、特に周辺市町村からの移入が多く、サービス内容や料金体系を均一化すべきとの考えから「介護保険の広域化」を提言してきた。
 それに対する答弁は広域化については考えていない。理由は周辺自治体では単独実施に向けて準備をすすめているからと言うものであった。がその後に村は路線変更をして隣町の雫石町と共同事務を行なっている。
 私は共同事務を「広域化」の第一歩と位置付けて今日でも「広域化」発言を続けている。
2、介護のメニュー化と選択性
介護保険のメニュー化を実現し、そのメニューの中から加入者が支払い能力や希望するサービスに応じてメニューの中から希望するサービスの選択をするという内容である。
制度上難しい事は知りつつも提言をしてきたが、答弁は案の定、「制度上難点があるが、発足時期が迫っており、実務的に不可能」と言う理由で退けられた。
 村の方針として、顧客に一番近い行政を目指しているのであれば、横並び主義でなくして一人ひとりの満足のいくサービスにすべきであると言うのが私の主張である。
3、特養ホームや老健施設と保育園の併設。
 老健施設及び特養ホームを建設の際は保育園と併設をするか、又は隣りに建て日常的に幼児と高齢者が「世代間交流」が出来るようすべきである。
 園児達は老人達と日常的に交わる事によって、老人をいたわることを学び、一方の老人達も幼児と接触をして生きがいを持ち、長時間保育が必要な時は老人の知恵と経験を生かして保護者が来るまで保育してもらえば一石二鳥である。
 私の意見に対して、賛意は示してくれるものの実現となれば制度上の困難がつきまとうという事で実現をしていない。

低所得者保険料の減額は実現
 私は介護保険制度発足以来、保険料を低所得者に配慮をした6段階方式を採用するよう繰り返し発言してきた。
 先にも記したように独自性の薄い本村行政は現行の5段階体系に落ち着いた。何度も保険料減額を発言した結果、01年10月から一定の条件はつくものの低所得者に対する減額は実現をする事が出来た。

今後の課題
 わが国の介護保険制度は短時日で発足し、走りながら陣立てをする事を余儀無くされた。その為に制度に不備が多く、そこで5年を経過した段階で給付内容などを見直す事になっている。その年を来年に迎える。だが、聞こえてくるのは決して良い話ばかりではない。
 一例を挙げれば保険料徴収年齢を20歳に引き下げる動きとか昨年4月から支援費制度に移行した身障者福祉と介護保険との統合などが検討をされている。

1.国は、「要支援」「要介護1」などの軽度の利用者を介護保険から外す動きがある。受け皿が無い段階での除外は負担が家庭にのしかかり、介護の社会化の目的が大きく後退をする。

2.国は施設サービスから在宅サービスへとシフトを移行する計画であり、ホームヘルパーの確保など自治体は対応出来ない。ホームヘルパーは時間給が安くなり手がない。

3.施設入所も軽度者排除の動きがあり、排除をされた方々は「介護難民」となって行き着く先は「社会的入院」である。老人医療会計の破綻から介護保険制度を発足させたものが5年の経過で元の木阿弥になる。

4.給付内容基準の引き下げよりも現行の制度で短期入所の日数制限など、使い勝手が悪く利用控えが起きている部分の手直しが緊急課題である。

5.身障者福祉と介護保険との制度統合は「水と油」を一緒にするようなものである。老人と身障者介護は方式も違う。身障者介護の基本は「自立と社会参画」を促すという視点での介護でなければならない。

6.介護予防・認定漏れ「非該当」判定者・元気老人対策として各自治体ではアィデァを駆使して色々な事業を行なっている。昨今の財政難から事業が縮小傾向にある。予防に力点を置く方が負担が少なくて済むことにもっと注目をすべきである。