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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版23号(2004年5月発行)
イラクにおける3人の救出において日本の一部世論やマスコミがが「自己責任論」を持ち出しあたかも勝手な行動した3人に責任があるかのような報道を繰り返しました。
私はこの主張に対し強い憤りを覚えます。憲法違反の自衛隊の派遣が正しく、本当の人道支援を示した彼らが何故非難されなければならないのでしょう。
どこの国の人間の人権も尊重されなければなりません。人権侵害の最たるものが戦争だという事実をしっかり受け止めインドで行なった人権ツアーの報告をしたいと思います。
インドのチェンナイ空港に降り立った私たち一行をタミルナドゥ女性フォーラム(TNWF)と農村教育開発協会(SRED)の面々が花のレイを持って迎えてくれました。チェンナイで2箇所のスラムを訪れ、その後アナコラムにある農村教育開発協会(SRED)の事務所に向かいました。
おりしも1月16日から開かれていたインド西岸のムンバイで開かれた世界社会フォーラムが終わったばかりでSREDのメンバーやダリットの指導者のメンバーも大勢参加したということもあってその熱気がまだ残っている時期の訪問となりました。
この世界社会フォーラムは日本のマスコミは全く取り上げていませんが全世界から10万を越す人々が参加し破壊的なグローバル化と戦争の支配する世界に抗い「もう一つの世界は可能だ」という合言葉のもとに集まった集会でした。今回の特長はインドに住む大勢の被差別の人々(ダリットも含め)が声を上げ、全世界の人々に訴えたことだったそうです。
さて、ダリットの実態はファティマさんの講演を聞いていたのである程度の予備知識をもって望んでいたのですがSREDについては全く予備知識がなかったため説明を聞いて改めて勉強になることばかりでした。
SREDは1979年に結成され、ダリット、女性、子ども、先住民、レンガ造りの労働者、石砕工、マタマ、土地をもたない農民等組織されていない人々の権利を守るためにつくられた組織です。協会では36名の方が仕事をされており、子ども達への教育、村々を回ってドラマや寸劇をしながら団結を呼びかけるといった啓発活動、有機野菜を栽培しCOOPを通じて販売し自立を促すとともに農業の能力向上を図るといった多目的な活動をしています。
私たちが宿泊したのはそういったSREDの拠点のセンターでした。ファティマさんが国際会議等で実情を訴えているということもあり世界から人権団体が訪れているということで快適な宿泊施設も備えていました。
時間に追われるほどの過密なスケジュールでしたが子ども達との交流、村を回っての啓発活動への同行、セックスワーカーとの話し合い、マサマの方への聞き取り、先住民族の村での交流、ダリットの村への訪問、レンガ造り工場の労働者との交流など本当に実のある研修をさせていただきました。
一つひとつの研修があまりにも深い内容だったため何からレポートしていいのか迷いましたが自分なりに整理し進めたいと思います。
部落問題に取り組み、日本における解放運動の道すじは自分ながらに捉えているところですが、インドにおける差別の実態や差別に抗う人々への弾圧が似通っている点からまとめていきたいと考えました。
インドにおけるカーストによる差別は1950年に制定されたインドの憲法で禁止されているにもかかわらずインドの政治や生活と深く結びついています。ダリットが不浄の民として扱われ、触ってはならないものとして位置付けられています。職業も部落の行なってきたものと大変似ており排出物や動物死体の処理、皮革業、清掃業また、人の死や結婚の時などには無償で一定の儀式やサービスを行なうなど低賃金重労働を強いられています。
また、差別に抗う人に対しては家の焼き討ち、殺人・暴力、女性へのレイプ、などが実際現実に行なわれています。ダリットは人外の人という扱いで殺されても文句も言えないという状況が続いています。
日本の部落の歴史とあまりにも似ていることに愕然とさせられます。日本でも1864年解放令が出されますがその後も部落に対する厳しい差別は続きました。筆舌に尽くしがたい差別に部落の人々が立ち上がったのが1922年。この間60年余り、ようやく水平社が結成されます。部落問題の解決は国の責務であると認めた同和対策審議会答申が出されたのが1969年ということを踏まえると、部落問題を解決の道筋ができるまで100年あまりが経過したことになります。
2004年の現在でもなお差別事件が続発している現実を考えると人権を取り戻す道のりがいかに厳しく多くの犠牲を払わなければならないか。
しかし、今回インドで出会った人たちはどの方も元気で明るく人間的な魅力にあふれた方ばかりでした。人間の尊厳を取り戻すために行動すべきことがわかっている方の力強さを感じることができました。
現在インドにおいて政府の政策も進めています。一つはダリットの持ち家制度を進めていくといった政策。ただこれは誰にでも平等に持ち家が割り当てられるというものではなく、よくある賄賂がはばを利かせています。また、もう一つの大きな政策は留保制度です。これは学校や政治の中にダリットの枠をとっていこうというものです。ダリット出身の政治家の枠が18%、ダリットの政治的影響力を担っておられるということでした。しかし、差別は依然厳しくSREDのメンバーも警察に拘留されることもあり命をかけた運動をされているのだと実感しました。
これからの運動の展望についてお伺いすると、今の現実が差別であるということに気づくことだと話されました。次に生活の改善のための地道な運動を進めていくこと。解放運動を通じて人々の意識を高める。そのために各村に入りスキット等で訴え、動機づけをしているとのことでした。
最後に政治に参加し、自分達の権利を訴え行動を起こしていく。政治に参加する力をつけるための教育をつけていくと熱く語ってくれました。
誇り高く人間の尊厳を取り戻すため一歩一歩力強く生きている人々との出会いは私にとって貴重な体験となりました。
また、再び機会があれば訪れたいインドとなりましたが、最初は今回のインドツアーほど心配したことはありませんでした。
寝袋を持参すること、水は絶対に口にしないこと、トイレに紙がないので忘れないようになど説明を聞くにつれファティマさんにお会いしたいという気持ちも強かったけれど本当に大丈夫なのだろうかといつになく気弱になったことも事実でした。
でもやっぱり案ずるより生むがやすし、今ではこんな素晴らしい研修旅行を企画し機会を与えてくれた子ども会に、お世話をしてくれた我が子ども会出身でIMADRの坂東望さんに感謝の気持ちでいっぱいです。
今日もマスコミは悪質なニュースをこれ見たことかと垂れ流し続けています。今私たちがしなければいけない事は本当の真実を見極める目だと思います。そういった意味でも今回のツアーは実り多いものとなりました。