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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2007年9月号
アジアの共生と日朝国交正常化について、三つのテーマで、九つの質問・提起をします。提起しますので、皆さんで解決していただければと思います。
日朝国交正常化で誰が損をし、誰が得をするのか
第一は「アジアの共生と日朝国交正常化で誰が損をし、誰が得をするのか?」について三つの質問です。
第一の質問は「損をする日本人と米国人との共通点と相違点は何か?」です。
日本の中で、朝鮮を悪者にしておかないと困る人たちがいます。それは、日本の軍事化を進める人びとです。北朝鮮という敵を作って、日本の軍事化を図る。憲法の改悪を図る。あるいは、集団的自衛権行使について、勝手な解釈をする等です。日本のマスコミは、日朝国交正常化に反対する道具になっています。
一方、アメリカで、米朝国交正常化を反対している人たちがいます。彼らは金正日政権を崩壊させて、ドイツのような形で、北朝鮮をなくす形で統一させる。北朝鮮の金正日政権をつぶして、中国を民主化する。中国の経済は、アメリカの市場になっているのでいいが、共産党の支配する中国政府は変えなければならない。それを民主化と言っています。二〇〇二年の米国の国家安全保障の報告でそう書かれており、米国の戦略課題の一つです。ネオコン・新保守主義の人たちの考え方です。
しかし、この考え方ではうまく行かないとブッシュ大統領も認めて、米政府としても一応やめています。しかし、ネオコンのキリスト教関係の団体は、金正日政権を崩壊させる活動を一生懸命やり続けています。
表では六カ国協義を続け、裏では相変わらず、暗躍している人たちがいます。日本とアメリカでは、国交正常化を批判・反対するする人たちの考えは同床異夢です。
第二の質問は「得をする日本人と米国人の中で、あまりよくないのは誰か?」です。
日朝国交正常化について、財界の中で関心を持っている方がおられます。北朝鮮には教育水準が高く安い労働力がある、また稀少金属がある。経済的なうま味があるという考え方です。日本が経済制裁をしてる間に韓国やアメリカが経済的に利益を上げる、日本だけが損をするという考え方です。さらに、北朝鮮を拠点に、中国やロシアとの経済関係を強化しようとしているのではないか。
ブッシュ政権が六カ国協議に協力的になっているのは、イランの核開発阻止に全力を集中するためです。イランでは平和利用のウランの濃縮が許されていません。日本にはその権利があるのに、イランにはない、非常に不平等だとイランの人たちは怒っています。
米国ではブッシュ政権だけでなく、民主党の大統領候補も、核開発阻止のために核施設への攻撃の可能性を否定していません。民主党政権になれば共和党よりソフトかも知れないが、ネオソフトであり、いいとは言えません。
第三の質問は「本当にみんなが得をする道があるのか?」です。
長期的に平和共存、平等互恵という立場で日朝国交正常化に向かうことが、アジアの共生のために絶対に必要です。日本は明治以来、周辺の国々を植民地化し、平和に生きる権利を奪ってきました。その反省に立って、日本国憲法の平和的存在権があります。改憲しようという人たちはこれを無視している。アフガンやイランはじめアジアの人たちの平和に生きる権利を大事にすることがアジアの共生です。平和に生きる権利が大事にされる日朝国交正常化こそ、アジアの共生につながり、みんなが得をする道だと思います。
米国の「不安定の弧」と日本の「繁栄の孤」
第二のテーマは「『不安定の弧』=『繁栄の孤』で、米国と日本は何をしようとしているのか?」です。
第四の質問は「『不安定の弧』でアメリカは何をしようとしているのか?」です。
日本を基地化する米軍再編がなぜ出てきたのか。ブッシュ政権は「不安定の弧」で何をめざしているのか考える必要があります。東の日本と西のイスラエルの間の地域を「不安定の弧」と米国は言っています。朝鮮半島、台湾海峡、アフガン、イラン、イラク、パレスチナなど不安定が存在すると。不安定な中東などで軍事展開をしながら、中国やインドの市場を支配すること、グローバル時代の新植民地主義です。
かつて植民地にされていた国は独立したため、国内で競争を激化させ、勝ち組と負け組の格差が拡大してきた。グローバル時代になって、その格差が世界中に広がっています。米国は軍事展開をしながら、経済的な搾取・収奪というやり方で新しい植民地主義をめざしています。
第五の質問は「米国の『不安定の弧』という戦略にのった日本の『繁栄の孤』とはどういうことか?」をはっきりさせる必要があります。
米国の「不安定の弧」という軍事介入、あるいは経済的な収奪という新植民地主義に協力することで、日本が繁栄しようというのが「繁栄の孤」という考え方です。つまり、米国の戦略に協力しながら、「不安定の弧」地域を日本の経済圏にしていこうというのが「繁栄の孤」ではないかと思います。
第六の質問は「『不安定の弧』・『繁栄の孤』という『反テロ』戦争に対して、世界各地はどう対応しているのか?」です。
英国・オーストラリア・日本の三国のみが米国の新自由主義、新植民地主義に忠誠を尽くしています。
しかし、「不安定な弧」での反テロ戦争という新植民地主義に対する反対が世界各地で広がっています。中東地域やイスラム圏では、反「反テロ戦争」という動きが広がっています。上海協力機構における中国とロシアの提携、対米自立の動きも強まっています。ラテンアメリカでは、ベネズエラ、ボリビアなど、反米自立政権が次々と誕生しています。アルゼンチンやブラジルなどでも同様の動きが進んでいます。
世界中でそういう動きが広がっているのに、日本やオーストラリアだけが、アメリカと心中するのか。それがアジアとの共生に関係があるし、日朝国交正常化にも関係があるのではないかと思います。
日本にとっての「アジアの共生」とは
第三のテーマは「日本にとって『アジアの共生』とは、日朝韓関係、日米関係、日中関係、アジア諸国との関係をどうすることなのか?」です。
第七の質問は「朝韓関係、米中関係、アジア共同体(ASEAN+3)は日本によってどう影響され、日本にどんな影響をしようとしているのか?」です。
アメリカは日本に対して、韓国や中国と仲良くしてもらっては困る、アメリカ抜きの東アジア共同体などをつくられたら困ると、いろんな人が来て説得、あるいは邪魔をした。当時の小泉首相は、アメリカの意を汲み、靖国参拝をして、中国や韓国と対立を作り出した。そのためだけに参拝したとは言いませんが、少なくとも米国が日中対立を望んでいたので強行に参拝を繰り返した。
しかし、北朝鮮の核実験がありましたので、アメリカは政策転換して、北朝鮮をなんとか押さえ込まなければと、中国を利用することにした。誕生したばかりの安倍内閣に、日本と中国が仲良くすることを奨励した。安倍首相はそれに乗っかって、中国と韓国を訪問した。そういういきさつがあると思います。
私たちは、アジアの共生を誰がどういう狙いでするのかを考える必要があると思います。日朝国交正常化を考えると、南北朝鮮の和解や統一に協力する方向で進める必要があると思います。
それからもう一つ、日本はどういう日中関係をめざすのか。中国の人たちから「日本はアメリカの走狗(手先)になってしまっては損だ」と言われました。米国から、日中が仲良くなっては困ると言われたら中国と敵対し、北朝鮮の核問題があるから中国と仲良くしろと言われたら日中関係を改善する。そういう日中関係は正常ではないし、本当のアジアの共生にはならないと思います。
朝鮮半島の南北関係、中ロ関係、あるいは東南アジアを中心とする東アジア共同体の動きなど、これには米国覇権に対抗するという側面があります。本当のアジアの共生のために日本はどうするのか、検討する必要があります。
第八の質問は「『アジアの共生』の範囲とその意味をどの程度はっきりさせることができるのか、また望ましいのか?」です。
日本の中でアジアの共生を実現しないで、国際的にアジアの共生と言っても意味がないと思います。在日朝鮮人の方たちを痛めつけておいて、日朝国交正常化もあり得ません。在日朝鮮・韓国人や中国人の人権を無視したり、アジアのいわゆる非合法入国の人びとの権利を無視している日本の状況をそのままにして、アジアの共生はありません。まず日本国内での在日外国人の人たちとの共生を実現しなければ、アジアの共生は口先だけになってしまうのではないでしょうか。
第九の質問は「国家レベルでの日朝国交正常化と市民レベルでの対話・協力とは、どのように相互に強め合うことができるのか?」です。
日本が本当にアジアの共生を考えるのであれば、国家のレベルでの日朝国交正常化と、市民レベルでの日朝の対話、協力を進めていく必要があります。つまり「不安定な弧」を「繁栄の弧」に変えて金儲けをするとういう形ではなく、過去の植民地主義の反省をするだけでなく、いま米国が進めている新植民地主義的な反テロ戦争に加担する姿勢を改めることが必要です。
本当の意味での平和的生存権や人間の安全保障を大事にすることです。米国のグローバル主義、植民地主義には絶対に協力しない。すべての人が平和に生きる権利があるという立場で日本外交を進める。軍隊は人間の安全を保障しない、だから平和的生存権を実現するために軍隊を持たない。つまり、過去の植民地主義を反省した日本国憲法の初心に戻ることが、アジアとの共生と日朝国交正常化を考える時に、やはり、一番大事なことだと思います。
もう一つ課題は、グローバル時代の新自由主義の中で、格差社会から出てきた余剰を吸い上げて、大企業を中心としてつくられてきたローバルな市場主義に対抗することが、平和に生きる権利につながるのではないかと思います。
最後に結論として地方議員の皆さんに申し上げたいのは、国際問題と国内の格差問題を別にするのではなく、米国の反テロ戦争や新自由主義こそが、格差や貧困を拡大している元凶であると考えていただきたい。そしてわれわれは米国がやっている反テロ戦争に反対する。私たちのめざすアジアの共生と日朝国交正常化問題は、日本国内の貧困や格差問題と切っても切れない。そういう視点で議論していただきたい。
昨日、名古屋に行きました。中部地域はトヨタの拠点があることも含めて、全国的には金持ちの地域です。しかし、中部地域の中での貧富の格差も広がっています。地域格差問題と、アジアの共生は切っても切れない関係にあります。地方経済の問題、崩壊する医療問題、教育の問題、これらは本当は反テロ戦争やっている人たち、ネオコンの人たちが、日本の経済や社会を作り変える。グローバルな市場主義で利益を上げる大企業が、経済や社会、憲法も変えようとしている。そういう視点をはっきりさせる必要があります。そのこととアジアの共生は切っても切れない関係にある。そのことを皆さんにお訴えしまして、私の問題提起にさせていただきます。
(文責編集部)