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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2007年8月号
「もうがまんできない!広がる貧困集会」が七月一日、東京で開かれ、七百人が参加し会場は熱気に包まれた。主催は、非正規雇用労働者、多重債務者、シングルマザーなど様々な課題を抱える当事者や支援者でつくる「反貧困ネットワーク準備会」。三月に続いての第二弾で、参院選を前に貧困問題に対する政治の責任を問う目的で取り組まれた。
代表あいさつした、反貧困ネットワーク準備会代表の宇都宮健児・弁護士は、「四百二十人が参加した三月の『もうがまんできない!広がる貧困―人間らしい生活と労働の保障を求める東京集会』での貧困の実態を告発した当事者の発言が、参加者の胸を打ち、社会的に大きな反響を呼びました。集会後、実行委員会は貧困問題を解決するため、抱えている問題や政治的立場を超えて『反貧困』の一点で結びついた恒常的な組織として『反貧困ネットワーク準備会』を結成した。参院選を前に貧困問題を強くアピールするために本集会を開催した。貧困の広がる日本社会の恥を知るべきだ。貧困は人間の尊厳を奪い去り、ときに命さえ奪い去る。また貧困の広がりは社会を分裂させ崩壊させる危険性がある。政治家や行政は貧困問題を解決する大きな責任がある。本集会を機に、「反貧困」のネットワークが全国的に広がり、貧困問題の解決に向けた気運を広げよう」と述べた。
第一部の「作られた対立を超えて」では、@無年金・年金と生活保護、A学校給食費を支払えない家庭と学校教師、B正規労働者と非正規労働者の三つのテーマで、本来なら団結すべき国民・市民の間に分断・対立を持ち込んでいる政府やマスコミの論調に対して、当事者からの発言を通じて真の問題がどこにあるのかが明らかにされた。
発言の一部を紹介する。
▼生活保護を受けて非常勤臨時教師
さいたま市の小学校で「少人数サポート臨時教員」として一年生から三年生の算数を担当。勤務時間は五時間、週五日の勤務で時給は千二百十円。二、三時間のサービス残業もある。四月の給料は約八万円、夏休みは仕事が切られ、年収は八十万円弱。生活できず夏休みは学童保育でアルバイト、日曜はスーパーの仕事をせざるを得ず、くたくた。昨年八月に生活保護を申請。周囲から「生活保護は安易な考え。もっと努力すべき」と言われ、自分を責めたが、川口の生活と健康を守る会の援助もあり、生活保護が認定された。非常勤教師の仕事が、なぜこれほど低い評価なのか、非常勤教師の仲間と話し合い、待遇改善を求め教育委員会と交渉した。年休の繰越や育児休暇など一定の前進。こうした中で働く者の生活と権利を守る闘いであること、子どもたちの教育改善であることを自覚できるようになった。
▼在日外国人の無年金問題
在日外国人で、一九六二年一月以前に生まれた障害者と、一九二六年四月以前に生まれた高齢者には、いまだに国民年金が支給されていない。国籍条項があったため、在日韓国・朝鮮人は国民年金に加入できたのは一九八二年から。しかし、八二年時点で三五歳以上の在日外国人は加入できるが老齢年金は支給されない、八二年時点で六〇歳以上の在日外国人は国民年金に加入できない、など様々な差別がある。年金のない生活がどんなに悲惨であるか。例えば、無年金の在日外国人障害者は生活保護から抜け出すことは不可能だ。厚労省は「在日外国人の生活は本国政府が保障すべき」といいながら、生活保護や児童扶養手当を受けている日本人が外国に居住すれば打ち切られる。まさに二枚舌だ。また学生無年金障害者には特別障害者給付金が支給されているが、在日外国人障害者は排除されている。無年金問題の解決のためには、政府の分断政策に乗せられないような大きな団結が必要だ。
▼学校給食費未納問題
今年一月文科省が二〇〇五年度の給食費滞納の調査を発表。各マスコミは「給食費滞納九万九千人」「原因の六割は親のモラル」などと報じた。また読売新聞は「保育料滞納、悪質例目立つ」と報道し、親のモラルを追及する世論が作られている。本当にそうなのか。生活苦から多重債務に陥った例や、就学援助の制度を知らなかった人もいる。国民年金の滞納率は二三%だが、給食費の滞納率はわずか〇・五%。また「過去数年で滞納が増えたか」という学校側への質問に対して、一番多いのは「変わらない」三九%、「やや増えた」三八%。さらに滞納が増えた原因は「保護者の経済的原因」三八%、「就学援助の基準が変化」もかなりある。また学校側から「払えるのに払っていない」と見える家庭でも、本当の保護者の事情はなかなか分からないのが実態だ。つまり、滞納問題は親のモラル低下・社会問題という報道は意図的であり、作られた分断・対立だ。
▼正規労働者と非正規労働者
非正規雇用が急増する中で、正規雇用の労働条件も非常に厳しくなっている。生活できない賃金で働かせる非正規雇用、家に帰れないほど長時間労働をさせられる正規雇用というのが現実だ。
▼過労死に倒れた夫
夫は外食産業大手に勤務、弱体化した店舗を回る支援担当の仕事。月平均り残業時間は一三〇時間、多い月は一八〇時間。会社の方針に対して告発して闘う準備をしていた三年前の八月に夫は過労死。私は夫の遺志を継ぎ、東部労組に加入して会社と闘い、過労死を認めさせ、未払い残業代も勝ちとった。昨年八月協定を結び、その基金を元に過労死をなくそうという基金を立ち上げた。
▼特定郵便局のアルバイト
三十代のシングルマザー、子ども二人。昨年四月から特定郵便局のアルバイトを開始。局長以外に正局員三人、私も含めたアルバイト三人という小さな特定局。業務は、貯金の入出金、新規貯金の受け入れ、為替の販売換金、簡保の取扱い、窓口を閉めた後の収支報告までと複雑。仕事を覚えようと頑張ったが、制服も支給されず、複雑な仕事をなかなか教えてもらえず、ミスをするとなじられるなど、いじめを受けた。最後は雇い止め宣告。「ゆうメイトセンター」に相談し、最終的には局長の直筆謝罪文を受け取った。今考えると、民営化を前に局員の不安の矛先を弱者であるアルバイトに向かわせた巧妙な経営戦略だったと思う。怒りの矛先は弱者いじめに徹している政治に向かうべきだと思っている。
▼派遣社員
専門学校卒業後、派遣社員。正社員と同じく働いても給与は二十万円。ボーナスも社会保障もない。給料の支給が二カ月、三カ月後という状況もある。自分の給料の二倍以上のお金が派遣元の会社から派遣先の会社に支払われていることが最近分かった。派遣元と派遣先の間にいくつもの中間会社がある、いわゆる多重派遣で違法だが、この業界はほとんどが多重派遣か偽装請負。この問題を明らかにすることが必要だ。孤立せず、正規と非正規が対立せず、誰が貧困を作っているのかを意識することが大事だ。
第二部「貧困問題に取り組まない政治家はいらない」では、様々な課題に取り組む団体・個人が活動紹介をし、背景にある政治の責任を追及した。
決議「人間らしい暮らしを求めてつながろう」が満場の拍手で採択され、集会は終了した。
集会後、参加者は国会周辺をデモ行進し、貧困問題に真剣に取り組むことを国に迫った。
三月の集会に続き、貧困問題の本質を追究し、反貧困のさらなる連携を呼びかける画期的な取り組みとなった。