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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2007年6月号

サトウキビは宮古の命、宮古の農業を守れ

日豪EPA交渉 重要品目の例外措置を

JA沖縄宮古地区本部長 下地 隆弘

 日豪EPA交渉が開始された。重要品目の関税撤廃となれば日本の食料・農業は深刻な打撃を受ける。五月二十三日沖縄県の宮古地区で千五百人の郡民総決起大会が開かれた。JA沖縄宮古地区の下地隆弘本部長に話を聞いた。文責編集部。


 日豪EPA(経済連携協定)で農産物の関税が撤廃された場合、沖縄県内の農業に与える影響は七百八十億円と試算されています。宮古地区はサトウキビが二百五十億円、肉用牛が二十二億円の合計二百七十二億円で県全体の三分の一に当たります。宮古の場合は、肉用牛は繁殖用で子牛を九州中心に出荷します。牛肉の関税が撤廃されれば、当然、子牛の価格も下がります。宮古島は沖縄のサトウキビ生産量の四割を占めるほどで、いずれにしてもサトウキビの影響が大きい。沖縄県は台風の常襲地帯で台風や干ばつに強い作物はサトウキビ以外になく、代替作物はありません。
 もし、日豪EPA交渉で砂糖の関税が撤廃されれば、サトウキビ農家、製糖工場、運送関係を含めて地域経済に与える影響はきわめて深刻です。サトウキビの年間生産量が二十八〜三十万トン、現在の価格の二〇四七〇円で計算すると六〇億円前後。サトウキビの地域への経済効果は約四・三倍で、二五八億円。宮古地区の農家の九割がサトウキビ農家で、残りが肉用牛と葉たばこ園芸です。農家だけでなく、製糖工場や運送関係など砂糖関連が地域経済の中心です。何としても、砂糖と牛肉は例外品目にしてもらわないと困ります。砂糖価格はこの間もいろいろと大変なことがありましたが、新たな価格制度が平成十九年度から始まります。それも含めて、日豪EPA、WTO(世界貿易機関)の動向への関心は強まっています。
 五月二十三日に約千五百人の参加で「農畜産物を守る宮古郡民総決起大会」を開催しました(写真)。主催は、自治体やJAグループで構成する宮古地区農業振興会(会長は伊志嶺亮・宮古島市長)です。国会議員の先生方も出席して現状の情勢報告をしていただきました。地域経済への影響も認識され、危機感も広がったと思います。
 宮古地区農業振興会長の伊志嶺・宮古島市長は「日豪EPA交渉の結果次第で宮古の生活に大きな影響を与えかねない。国が安易に妥協すれば地域の農業振興への努力が完全に無駄となり、地域経済への壊滅的な打撃が懸念される。砂糖や牛肉など重要品目を例外措置にするため、この大会を機に地域一体となった運動をしたい」と呼びかけました。下地昌明・多良間村長も「多良間もサトウキビと肉用牛が中心。今回の交渉で妥協されれば計り知れない影響を受ける」と例外措置を強く求めました。またサトウキビ農家や肉用牛農家の代表も「交渉の合意内容によっては、サトウキビと肉用牛は大きな打撃を受ける。キビは宮古の農家の命。例外措置を求める」「交渉結果によっては地域経済が崩壊する。宮古の将来を左右する運動の強化を決意する」「行動を起こし、連携の輪を広げ、日本の要求が通るよう総力をあげて運動を強化する」などの決意が述べられました。
 仮にオーストラリアと関税撤廃などで合意するようなことになれば、アメリカやカナダなども関税撤廃を日本に要求してくること目に見えています。
 大会では、「WTO・EPA交渉の結果が、日本の食料・農業だけでなく、宮古の地域経済全体に禍根を残さないように、重要品目の例外措置確保に向けて総力をあげた運動を展開する」との宣言文を決議しました。
 沖縄では六月十六日には那覇市で一万人規模の決起大会を準備しています。沖縄県とJAグループが主体となって、関係団体の協力をえて開催します。島ぐるみの取り組みを展開し、政府に沖縄の思いを伝えたいと考えています。


(各地の闘い)

◆栃木で三千人集会とデモ
 JAグループ栃木は、WTO農業交渉や日豪EPA交渉での重要品目の関税撤廃阻止をかかげ、五月二十八日、宇都宮市内で三千人規模の集会を開いた。本州では最大規模の集会となった。
 集会には消費者団体も参加。国民的な理解を広げながら、農業と地域経済を守る運動に総力をあげて取り組むとの決議を採択した。集会終了後、千人がデモ行進をし、「関税率の引き下げを阻止しよう」「食料自給率を高めよう」「食と農を守ろう」などと市民に呼びかけた。

◆九州の署名百万人突破へ
 WTOや日豪EPA交渉での重要品目の関税撤廃除外を求める署名活動が九州各県のJAグループで活発化している。鹿児島県は全国最大規模の三十万人署名。JAグループだけでなく経済界など四十以上の団体が取り組む。街頭署名のほか、青年部・女性部によるキャラバン隊が県内各地を巡回するなどして県民の理解を求めている。福岡も三十万人を目標に運動を展開中。佐賀、熊本、宮崎、沖縄なども十万人以上を目標に署名活動を展開しており、九州全体で百数十万を突破する見込み。

◆宮崎で千人の大会
 日豪EPA交渉で、重要品目の関税撤廃がされれば関連産業も含めて千億円以上の損害が出ると試算されている宮崎県で、宮崎県とJA宮崎グループによる緊急大会が五月十一日に開かれ千人が参加した。経済団体、消費者団体など十三団体も共催。
 横山勉JA宮崎中央会会長も「今回の大会を契機に、県民一体の運動に盛り上げよう」と呼びかけた。消費者団体からは「県内産業を守ることは地域、生活、食を守ること」などの発言が相次いだ。関税撤廃を阻止するため、県民あげて農業、地域経済を守ることを決議した。

◆佐賀で千七百人の大会
 WTO農業交渉の上限関税阻止と、日豪EPA交渉での重要品目の関税撤廃除外を求める農業政策確立緊急佐賀県大会が、六月四日佐がしないで開かれ、千七百人が参加した。中野吉實JA中央会長は「農産物が自由化されたら本県農業の打撃は大きい。できないものはできないと主張すべき」と強調した。