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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2007年4月号

日豪EPA交渉、関税撤廃を許さぬ国民運動を


写真提供:全十勝地区農民連盟


北海道十勝で三千五百人が決起

 三月三日、北海道音更町で、「日豪EPA(経済連携協定)交渉・食料と地域の将来を考える十勝大会」が開かれた(写真)。主催は、JA北海道の十勝地区農協組合長会と全十勝地区農民連盟、十勝支庁。生産者や消費者、商工関係者など三千五百人が参加、日豪EPA交渉ではこれまで最大規模の大会。 
 北海道十勝支庁の試算によると、日豪EPA交渉で牛肉、乳製品、小麦、砂糖の重要品目の関税が撤廃されると、十勝地域だけで四四三四億円の打撃を受ける。二万九千人の雇用、十五万ヘクタール以上の農地が失われる。就業者の二割、耕地面積の六割に相当し、地域経済は壊滅する。
 主催者あいさつで、組合長会の有塚利宣会長は「重要性を共に認識し、オール十勝で農業と経済を守っていこう」と述べた。意見表明で、帯広商工会議所の岩野洋一会頭は「これは地域全体の問題だ」、十勝消費者協会連合会の中野益男会長は「食料は命。命は大地。消費者も立ち上がって食料を守ろう」と訴えた。
 大会アピールは、重要品目が例外扱いに出来ない場合は「交渉の中断」を政府に求めることも盛り込んだ。
 この大会の主催団体の一つである全十勝地区農民連盟の橋本孝男書記長に話を聞いた。

例外措置できなければ交渉打ち切りを
  
     全十勝地区農民連盟書記長  橋本孝男さん

 北海道は農業を中心とする第一次産業が基幹産業で、農産物加工や運輸など関連産業も多くあります。もし、日豪EPA交渉で、乳製品、小麦、砂糖、牛肉など重要品目の関税が撤廃されれば、農家だけでなく、関連産業にも壊滅的な打撃を与えます。十勝支庁の試算では四千四百三十四億円の打撃で、地域経済全体が深刻な影響を受けます。
 十勝地域の農業は小麦、てんさい、ジャガイモなど畑作が中心です。てんさいは砂糖の原料です。畑作は一つでも関税撤廃になれば、経営的にやっていけなくなります。
 昨年十二月、交渉入りに反対して帯広市で千七百人の緊急集会(主催は北海道農民連盟)を開きました。今回は四月から交渉が開始されると報道されています。オーストラリアは他の国とのFTA交渉で、例外扱いをしたことがほとんどなく、アメリカとのFTAで例外扱いしたのは砂糖だけだと言われています。また日本の経済界も「EPA交渉を促進」を掲げており、そのために農産物が犠牲されるのではないか、何としても阻止しなければという生産者、消費者など危機感が高まっています。
 三月三日の大会は、全十勝地区農民連盟とJAグループ、十勝支庁の共催です。商工会議所や消費者団体など四十四団体の後援で、参加者約三千五百人、道内でも最大規模の集会でした。大会では重要品目の例外措置がなければ「交渉打ち切り」を求めることが確認されました。
 世界有数の農業大国オーストラリアと日本では規模からして問題になりません。関税(国境措置)がなくなれば、とても競争になりません。国際競争力をつけるために、十勝地域でもコスト削減や規模拡大を進めてましたが、オーストラリアなどと比較するととても問題になりません。農地購入や大型機械購入などで農家は相当の負債を抱えて厳しい状況です。燃料や資材代金は増え、農産物価格は下げるばかりで規模拡大の効果がなかなか上がっていません。
 酪農関係も非常に苦しい状況です。酪農の飼料は大部分が輸入ですが、バイオエタノールということでトウモロコシが燃料に回され、トウモロコシ価格が高騰しています。しかも搾乳は生産調整で生産を伸ばせず、酪農も非常に苦しい経営です。
 その上、日豪EPA交渉で関税撤廃ということになれば、将来への展望がもてなくなります。日豪EPA交渉でオーストラリアに譲歩すれば、必ずアメリカはじめ他の国から同様の譲歩を迫られます。そんな事態になれば大変なことです。重要品目(米、小麦、乳製品、砂糖、牛肉)の関税撤廃などという譲歩は絶対に許せません。
 安倍首相がオーストラリアとの関係を重視するあまり、農業を犠牲にするのではないかと心配しています。農業は食料の問題です。日本の食料自給率は下がり続け、四〇%という異常な状況です。自然環境の破壊で異常気象がひんぱつする中で、将来にわたって国民の食料を確保できるか。自給率の向上は国策のはずです。国民の食料安全保障という立場からも、自給率低下につながる動きは断固拒否すべきです。
 この問題は消費者も含めて国民全体の問題です。四月から日豪EPAの交渉が開始されるということですから、今後もその動きを見ながら、農産物の重要品目を守る運動を展開したい。日本農業を守り、自給率向上のために国民的な世論や運動が必要だと思います。 (文責編集部)


鹿児島でも千百人が決起

 鹿児島県とJAグループ鹿児島は三月二十三日、「日豪EPA交渉対策緊急かごしま総決起大会」を鹿児島市内で開いた。農業団体、漁業団体、経済同友会や経営者協会や商工団体など経済団体、医師会、消費者団体、市長会や町村会など四十四団体が共催し、千百人が参加した(写真)。
 県の試算によると、日豪EPA交渉で関税が撤廃された場合、県内ではサトウキビの生産の壊滅も予想され、農業生産額で五百五十八億円、関連産業も含めて県内経済に千七百二十七億円の影響がある。
 伊藤知事は「県内の農業や地域経済を守るため、牛肉や砂糖などの重要品目は関税撤廃の対象から除外する必要がある」と、JA県中央会の川井田幸一会長は「日本の食を外国にゆだねるか、国産を守りきるか、その瀬戸際にある」と訴えました。
 JA県中央会では重要品目の例外扱いを求めるため来月から三十万人を目標に署名活動を行い、国に提出する予定。