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月刊『日本の進路』2007年1月号
月刊『日本の進路』編集部
農業を自動車の犠牲にするな!
農民は立ち上がった
安倍政権は12月12日、自由貿易協定(FTA)交渉入りでオーストラリアと合意した。オーストラリアは世界有数の農産物輸出国。WTO(世界貿易機関)農業交渉でも、日本など食料純輸入国の大幅な関税削減を主張してきた。オーストラリアからの食糧輸入額は6048億円(2005年)で、米国、中国に次いで三番目。もし日豪FTAでオーストラリア産農産物の関税が撤廃されれば、日本農業は壊滅的な打撃を受けることになる。
JA全中と全国農政連は12月1日、「日豪EPA(経済連携協定)対策全国代表者集会」を東京で開催し、農民代表600人が参加した。宮田勇・全中会長はあいさつの中で、「農畜産物の重要品目の関税撤廃を断固拒否する。重要品目の例外措置を明確にしなければ交渉入りすべきでない」と政府に要求した。
農水省の試算によると、関税が撤廃されれば、オーストラリアからの輸入が多い牛肉、乳製品、小麦、砂糖の四品目だけで、損害は4300億円にのぼる。米などの他の作物、食品関連産業、雇用への影響も含めれば、損害は2兆円規模になり、食料自給率は現在の四〇%から大幅に低下する。オーストラリアに道を開けば、米国やカナダなども同様の要求で迫ってくるに違いない。
特に大きな影響が予想されているのは北海道と南九州である。北海道の帯広市では12月11日、「日豪FTA交渉断固反対!緊急全道農民集会」が開かれた。北海道農民連盟が主催し、連合北海道、JAグループ、食とみどり・水を守る道民の会などが後援して、全道から1700人が参加した(写真左)。
集会では、「日・豪FTA交渉断固反対」「北海道の重要農畜産物であるコメや小麦、砂糖、牛肉、乳製品などの関税撤廃は絶対行わないこと」を決議した。また、関税が撤廃されると道内の食料・農業・農村は壊滅的な影響を受けるため、道内の行政機関、経済団体、消費者団体、労働団体、農業団体との連携を強化しながら、政府・各政党・国会議員などに強力な要請運動を行うことを確認した。
参加者からは「農業を犠牲にして『美しい国づくり』ができるのか」、「北海道の製造業に占める食料品製造業の割合は全国平均の三倍。農業が打撃を受けると地方経済も成り立たない。道内の市町村を第二の夕張にしたいのか」、「農業を自動車などの犠牲にするな」との声が上がった。集会後、「農業を犠牲にするな」「地方切り捨ては許さない」「官邸主導のFTA粉砕」とシュプレヒコールを叫び、市内をデモ行進した。
北海道では百を超す市町村が、「重要品目の例外措置を求める意見書」を今月中に採択する見通しで、道議会はすでに全会一致で意見書を採択した。意見書は、重要品目の関税を撤廃すれば「北海道農業は壊滅的打撃を被り、地域社会は崩壊する」と指摘し、「交渉中断」も求めている。九州各県でも「重要品目の関税撤廃断固拒否」を求める意見書が次々と採択されている。東北、関東の各県も決議文や要請書の採択を予定している。
安倍政権の農業「改革」は
関税撤廃、農業つぶし
日豪FTA交渉反対の怒りの声が上がっているにもかかわらず、安倍政権は、2007年の年明けからFTA締結交渉を開始する。農民が強く求めている「重要品目の例外措置」はとられるのだろうか。関税撤廃の対象から重要品目は除外されるのだろうか。FTA交渉の土台となる「日豪経済関係強化のための共同研究」の最終報告書には「交渉ではあらゆる品目と課題が取り上げられる」とあり、重要品目が除外される保証は何もない。
安倍政権の農業政策は何か。安倍政権発足後、2回目の経済財政諮問会議で、日本経団連の御手洗会長らが提出した七大重点改革の中に、それが明確に打ち出されている。「アジアを中心にEPAを加速、WTO推進」であり、「輸出できる強い農業」、「国境措置に依存しない農業」をつくる農業改革である。関税(国境措置)に依存せず、弱肉強食の競争に打ち勝って生き残り、輸出できる強い農業にするということは、日本農業の実際から言えば、大部分の農家をつぶすということではないだろうか。
安倍政権は、小泉政権と同様に農民大多数の敵である。小泉政権では「改革」政治の司令部となった経済財政諮問会議をトヨタの奥田会長が牛耳り、多国籍大企業が巨額の利益を上げれるように、強いもの勝ちの「改革」を推進した。安倍政権はそれを引き継ぎ、奥田に代わって経済財政諮問会議を牛耳ったキャノンの御手洗が、小泉政権の時よりも過激な、多国籍企業のための「改革」政治をぶち上げているのだ。
農民は日本農業と農民の暮らしを守るため、日豪FTA交渉を進めて多国籍大企業に奉仕する安倍政権に反対して立ち上がった。日豪FTA交渉に反対し、農民の闘いを断固として支持しよう。連合北海道が農民の闘いを支持したことはすばらしい。韓国では米韓FTA交渉に反対して、農民と労働者が連携して闘っている。労働者が、農民が、中小企業・零細商工業者が互いの闘いを支持しあい、国民大多数の暮らしを破壊する共通の敵、安倍政権を打ち破るため、連携して闘おう。