国民連合とは代表世話人月刊「日本の進路」地方議員版討論の広場トップ


自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2006年8月号

第4回全国地方議員交流会開かる

麻生福岡県知事が来賓スピーチ
品川正治氏、小池清彦氏が講演

政党・会派を超えて、全国から参加


 地方自治体や地域住民の声に耳を貸さず、国益を損なってまでして強引に進める米軍再編。首脳間の対話も成り立たぬほど行き詰まったアジア外交。対米従属からアジアの共生へ、国の進路の転換が深刻に求められ事態が進んでいる。小泉内閣による三位一体改革、地方交付税の大幅削減、市町村合併で、地方の疲弊が進んでいる。北海道夕張市は破たんに追い込まれ、他の自治体にとっても明日はわが身かもしれない。
 自治体の頭越しに進む国の政治が自治体に困難をもたらし、国と地方の対立が激化している。福岡では六月二十六日、三千名による地方自治危機突破県民大会が開かれた。地方議員は所属する政党や会派を超えて、住民の利益を守るために、真の地方自治を確立し、小泉内閣の内外政治と闘うことが求められている。
 そうした情勢の中で、七月二十六〜二十七日、福岡県中小企業振興センターにおいて、第四回全国地方議員交流会が開催された。開催地福岡では、一カ月前の全国四十七都道府県三百三十九名の地方議員が超党派で呼びかけたもので、約二百五十名が参加した。
 交流会では麻生渡・福岡県知事、北原守・福岡県議会副議長、原伸一・福岡県町村議長会会長が来賓挨拶を行った。品川正治・経済同友会終身幹事と小池清彦・新潟県加茂市長(元防衛庁教育訓練局長)が問題提起を含めて講演を行った。五分科会に分かれての活発な報告と討論は、それぞれの経験を学びあい、政党や会派を超えて交流、連帯を深める絶好の機会となった。
 以下はその概要(詳しくは、近く発行される第四回全国地方議員交流会報告集をご覧いただきたい)。
 まず、奴間健司・実行委員会事務局長(古賀市議)が、二日間の司会を行う太田記代子・佐賀県議、谷口重治・荒尾市議、片野令子・練馬区議、岩谷政美・大館市議の四名を紹介した後、中島健三・実行委員会副委員長(宮若市議)が開会を宣言し、交流会が開幕した。


交流会第一日

 最初に、四回にわたって全国地方議員交流会をささえてきた自主・平和・民主のための広範な国民連合の吉田伸代表世話人が挨拶を行った。
 続いて、入江種文・実行委員長(福岡県議)が実行委員会を代表して、「北海道夕張市は財政再建団体となったが、他の自治体にとっても対岸の火事ではない。全ての自治体が夕張市を他山の石として財政状況を徹底的に公開すべきである。住民は自治体財政を十分に監視する必要がある。活発な議論でそれぞれの活動内容を豊富化していきたい。私たち地方議員は思想信条、政党会派を乗り越え国民生活を守るために何をどのようにしていくべきか、大いに議論しよう」と訴えた。


 来賓あいさつ

 麻生渡福岡県知事は、「三位一体改革といわれたが、税源移譲、補助金の改革、国の過剰関与排除、これらが非常に不徹底だ。だから、地方六団体は結束し、国に対して十二年ぶりに意見書を出した。その中で、もう一度地方分権を推進するためのきちんとした法律を作り、税源移譲や国の過剰関与排除の仕組みを作っていくよう求めた。われわれの手でわれわれの地域をちゃんと作く」と力強く決意を表明した。
 北原守福岡県議会副議長は「福岡で三千人規模の県民地方自治危機突破総決起大会を開催した。目的は地方交付税の削減阻止、真に地方分権を確立する推進法の制定だ。この法律の制定をはじめとして、地方自治の確立に向けて努力したい」とあいさつした。
 原伸一福岡県町村議長会会長(赤村議会議長)は「財政再建の名のもとに地方財政にしわ寄せをする地方交付税削減に反対して、地方自治危機突破福岡県民大会を開催した。国土の七割を占める農山漁村は、水源涵養、国土の保全、食料供給など重要な役割を地方が果たしている。国に対して、地方が結束して働きかけることが一層重要となっており、全国規模での情報交換、経験交流は時宜を得たものである。成果が実り多いことを確信している」とあいさつ。


 メッセージ

 交流会に次のメッセージが寄せられ、司会より紹介された。
 全国町村会会長(添田町長)・山本文男氏/福岡県議会議長・藤田陽三氏/福岡県商工会議所会頭・田尻英幹氏/福岡市長・山崎広太郎氏/福岡市議会議長・妹尾俊見氏/社会民主党地方議員団協議会会長・武田郁三郎氏/行橋市長・八並康一氏/筑紫野市長・平原四郎氏/筑紫野市議会議長・下田淳一氏/古賀市議会議長・小山利幸氏/大阪府議会議員・田中誠太氏


 講演

 経済同友会終身幹事の品川正治氏は「日本の進路と憲法九条」と題する講演を行った。
 品川氏は「市民社会のために全力をふるっておられる方々をお相手にお話しするわけですから私も、本当の意味で心の底から訴えたい」と前置きして、自らの戦争体験を語った。高校二年生のときに戦争にとられ、戦闘部隊として中国戦線での攻撃に参加し、その時の銃弾が今も足に残っている。その戦争体験を通じて、「戦争を起こすのも人間ならば、戦争を止めるのも人間」という考えに気づき、それが「一生を貫いている考え方、座標軸」となった。
 戦争の恐ろしさは、第一に「戦争に勝つことが、人間の命も含めあらゆる価値に優先する」こと。第二に「戦争にあらゆるものを動員する」こと。第三に「戦争を指導する部門が最高の権力者になる」こと。だから「戦争をしている国アメリカの価値観と、平和憲法を持っている日本の価値観は違う」。価値観が一緒だと考えるからいろいろな誤りが起こる。さらに「改革政治」の名でアメリカ型の経済構造に日本が組み込まれていくことの危険性を訴えた。
 新潟県加茂市長の小池清彦氏は、「小泉政権下で進んだ地方切り捨て」と題する講演を行った。
 自治体の首長の立場から、三位一体改革も市町村合併も「小泉改革は虚偽である」と言い切った。「加茂市は自由にできる地方交付税を平成十七年度までに七億五千万円削られ、十八年度でさらに一億七千万円、あわせて九億二千万円減らされた」。
 市町村合併も、政府のねらいは地方交付税の削減であり、地方交付税のしくみから、一時的な猶予措置の後には地方交付税が半減することを、新潟県下の実例で明らかにした。市町村合併は同時に、市民中心の民主政治を困難にし、民主主義の基盤を掘り崩すもので「百害あって一利なし」と断言した。
 小池氏は「国土の均衡ある発展」という哲学を放棄し、太平洋ベルト地帯の裕福な大都市だけに目を向け、地方を切り捨てる小泉改革を、時にユーモアをまじえながらも、烈々たる気迫で厳しく批判した。

 懇親交流会

 懇親交流会会は大庭きみ子・福岡県朝倉市議と茅野勝・福岡県宮若市議が司会。講師の品川氏、小池氏も交え、各ブロック毎の参加者紹介など、交流の輪が広がった。


交流会第二日

 朝九時から、五つの分科会に分かれて、交流と討論が行われた。午後の全体会議で各座長が分科会の報告を行った(※は報告した座長)。


第一分科会「米軍再編と自治体・ 議会の役割」

座長 森一敏・石川県金沢市議
  ※田中建一・福岡県行橋市議
助言者 新川秀清・沖縄県議


 秋山かほる・埼玉県上尾市議が、米軍再編推進関連法案に反対する五百二十二名の共同署名、対政府省庁交渉と米軍等基地問題議員懇談会との意見交換会の経験を報告。原田さやか・福岡県みやこ町議が、築城基地における毎月二の日の行動について報告。道下勝・鹿児島県鹿屋市議が空中給油機の移駐に反対する闘いを報告。助言者である新川秀清・沖縄県議も沖縄における闘いを報告した。さらに、築城基地、新田原基地、横須賀基地の地元自治体議員、築城基地周辺区長からも報告や発言が行われ、活発な議論が行われた。


第二分科会 「地方財政危機と民 営化・合併の行方」

座長 石澤秀夫・山形市議
  ※高ア新八・福岡県朝倉市議


 小池・加茂市長の講演をベースにして、活発な議論が行われた。「平成の大合併」の検証として、そのモデルともてはやされた兵庫県篠山市の財政破綻、その深刻な実体が報告された。さらに、三位一体改革の欺瞞性が明らかにされた。
 民営化問題では、特に指定管理者制度の問題点についての発言があいついだ。これらの課題を解決していくために、議会や行政の改革・活性化が重要。とりわけ議員は、議会のチェック機能と議員の政策立案能力を高めることが求められている。


第三分科会 「社会保障の切り下 げと住民の暮らし」

座長 篠原茂・福岡県宮若市議
  ※大野喜子・広島県呉市議
助言者 岡崎誠・福岡県歯科保険医協会事務局長


 渡辺美穂・福岡県太宰府市議が、広域で行う障害者自立支援法実施の利点と課題について報告。助言者の岡崎氏は地方議会での論戦に役立つ資料を配布し、六月国会でまともな審議もせずに国民に負担を強いる行革推進法や医療制度改悪を可決・成立したことを批判。このような悪法や改悪が国民の福祉を切り下げる。「共感と連帯と代弁」と表現される地方議員の役割として、積極的な取り組みが求められている。


第四分科会「健康・安全を脅かす 環境破壊の諸問題」

座長 秋岡宏昌・福岡県筑紫野市議
  ※堂下建一・石川県志賀町議
助言・報告者 増本亨・佐賀県議


 藤本寿子・水俣市議と辻本美恵子・元筑紫野市議が産廃問題の現状と課題について報告。特に水俣市では今年二月の市長選で、産廃推進の現職をうち破り、産廃反対を掲げる新市長が当選した。堂下健一・石川県志賀町議は「能登原発二号機運転差し止め訴訟」の勝訴報告を行った。増本亨・佐賀県議は佐賀県のプルサーマル反対運動の現状と課題、県民投票条例の報告を行った。


第五分科会「国政と地方政治の矛盾、地方からの発信」

座長 江頭晶子・福岡県前原市議
  ※中村すみ代・長崎市議
助言者 品川正治・経済同友会終身幹事


 斉藤ゆうこ・東京都荒川区議が、「日米関係を背景に地方を犠牲にする国の改革政治、特に社会保障構造改革などに対して国政にもの申していく、行動する地方議員交流会を」と問題提起。中島健三・福岡県宮若市議が、十年にわたる福岡県地方議員交流会の経験を報告。助言者の品川氏は「ある一点に向かって日本のエネルギーの再結集が可能ではないか。そのための道筋を考えていこう。そういう意味でこの分科会は成功した」とまとめた。

 アピール採択

 全体会議は、各分科会の報告を受けた後、第四回全国地方議員交流会の成果を確認し、対米一辺倒でないわが国の政治、地方自治の確立をめざす幅広い共同行動の発展を訴えるアピールを満場の拍手で採択した。
 最後に、原田さやか・実行委員会副委員長(みやこ町議)が閉会の挨拶を述べた。中間選挙や来春の統一地方選挙での勝利と再会を誓いあって、二日間にわたる交流会は成功裏に終了した。