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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2005年10月号

軽油価格高騰と低迷する運賃で経営危機

国政に届け! トラック事業者の声

―福岡県トラック協会専務理事  水町等氏に聞く―


 急激な軽油価格高騰と低迷する運賃で、経営努力は「もはや限界」と福岡県トラック協会は六月二十九日、経営危機突破福岡県決起大会を開き、八百名の参加者は博多駅周辺をデモ行進した。福岡県トラック協会の水町等専務理事に話を聞いた。文責編集部。


軽油高騰で百九十億円の負担増
 
 危機突破大会を開いた六月二十九日、当時の軽油価格が一リットル九十九円三十銭でした。昨年三月が七十九円でしたから、二十円(二六%)の値上がりでした。それ以降も値上がりが続き、石油情報センターによると九月五日現在、福岡県内で一リットル百六円です。昨年三月と比較すると二十七円も上がっています。大会時点で福岡県トラック協会加盟二千百十六社で百四十四億円の負担増でしたが、現在は百九十億円もの負担増です。

過当競争で運賃低迷
さらに軽油高騰が直撃


 バス、トラック、タクシーという運送業関係では規制緩和が行われました。トラック業界は平成二年、「物流二法」の改正によって、いち早く規制緩和が行われた業界です(バスやタクシーは平成十四年に規制緩和され、タクシー業界は規制緩和の新規参入で、過当競争になり運賃の引き下げ競争が起こっています)。規制緩和から十五年、新規参入が急増し、全国で約四割も事業者が増えました。一方で長期不況で貨物輸送量は増えず、業界はすさまじい過当競争になり、運賃は低迷しています。
 国内物流の九割を担っているトラック業界は、現在全国で六万社、百二十万人以上が従事しています。福岡県内でトラック協会に加盟している事業者が二千百十六社、トラック台数が約五万四千台。福岡県の場合も大部分が中小零細の事業者です。
 今回の原油高騰に対して、航空会社は運賃に転嫁しています。それは航空業界が独占状態にあるから転嫁できます。またフェリー料金も価格転嫁がされました。ところがトラック業界は大部分が中小企業、トラック台数十台以下の中小零細が半数を占めています。過当競争の中で荷主企業の力が強く、「軽油高騰分を運賃に転嫁したい」といえば、荷主から「じゃあ、ほかの会社にする」となるのが実情です。トラック事業者は荷主企業に対してきわめて弱い立場にあり、なかなか軽油高騰を運賃に転嫁できない状況です。
 全日本トラック協会の調査によると、軽油高騰を運賃に「転嫁できている」が〇・二%、「一部転嫁できている」が九・三%、つまり転嫁できているのはわずか九・五%です。「転嫁できていない」が九〇%。荷主に交渉しない理由は「交渉しても無駄、無理」「他業者に切り替えられる懸念がある」が圧倒的です。
 過当競争の中で運賃は下落傾向、排ガス対策などの負担増で各トラック事業者の経営は深刻です。さらにトラックの燃料である軽油には軽油取引税が課税されています。税率は一リットルあたり十五円ですが、「暫定措置」として徐々に引き上げられ、現在三十二円十銭にもなっています。とくに、一九九三年には七円八十銭も税率引き上げられました。トラック協会としては、「軽油取引暫定税率七円八十銭」の撤廃を要望し続けていますが、国は見直してくれません。
 トラック協会のデータによると、半数が赤字企業であり、営業利益率はわずか〇・七%です。ただでさえ経営が苦しい中で、昨年来の軽油高騰はトラック事業者の経営を直撃しており、ほとんどが赤字に転落すると思います。一リットル二十七円値上げの負担は、福岡県トラック協会二千百十六社で約百九十億円の負担増(一事業所平均で九百万円の負担増)であり、各事業所の経営努力はもはや限界に達し、存亡の危機です。

デモ行進で窮状を訴える

 福岡県トラック協会は、六月二十九日に「軽油価格値上げ阻止」「高騰した軽油価格の運賃転嫁」などを求めて、八百人が参加する「危機突破大会」を開きました。あわせて博多駅周辺でデモ行進を行いました。「軽油価格の高騰がトラック運送業界を直撃しています」「もう限界!」というプラカードを持ち、「これ以上の軽油値上げは許さない」「荷主は適正運賃を支払え」などのシュプレヒコールを上げました。表現が激しいという意見もありましたが、死活問題ですから窮状を市民にアピールしました。市民も原油高騰で怒りを持っていますから相当反響がありました。
 全日本トラック協会は、六月を「経営危機突破緊急キャンペーン月間」として取り組みました。トラック業界の窮状を世間に訴え、各事業者が交渉しやすい環境づくりになればと考えています。その先頭で国や経団連などにトラック業界の窮状を訴えていた高橋・全日本トラック協会会長が亡くなられました。まさに戦死だと思います。
 この原油高騰で多くの国民が困っているとき、石油元売りは史上空前の利益だと言われています。また石油先物市場での投機が世界的な原油高騰の一因だと言われていますが、便乗値上げではないかと疑いたくなります。石油元売りは史上空前の利益、一方でわれわれは倒産や廃業の危機に立たされています。
 国内物流の九割を担い、国民生活を日々支えているわれわれトラック業界の危機的な状況を理解していただきたい。経営を維持するために従業員にも相当な負担を強いているのが現状です。まさにわれわれは従業員と共に社会の底辺を支えています。各事業者の自主的努力で対応できる限界をこえ、このままでは安全な輸送が困難になるばかりか、倒産や廃業が多発しかねない状況です。今後もわれわれは一致団結して、経営危機突破のために頑張りたい。史上空前の利益を上げている企業もあるようですが、社会の底辺を必死で支えている多くの人たちに光を当てる政治であってほしい。 (文責編集部)