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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2005年10月号
広範な国民連合常任世話人 竹田四郎
九月十一日の総選挙で、小泉自民党は衆院の過半数を、自公の与党では三分の二の多数を占めるにいたった。特別国会に再提出される郵政民営化関連法案の成立は確定的と見られている。郵政民営化を構造改革の始まりと言う小泉首相は、郵政民営化の次に、政府系金融機関の統廃合、民営化を射程に入れている。
小泉首相は九月二十一日の記者会見で、次のように述べた。
「各省庁は今まで、政府系金融機関は必要だということで、その統廃合や民営化に抵抗してきた。だが、民間の活力を阻害しないような金融体制をとっていかなければならない。私は政府系金融機関の統廃合、民営化についても、しっかりとした方針を打ち出して、今後だれが私の後を継いでも、その方向を実現していくような路線は敷いていきたい」。
この「統廃合、民営化」の対象にねらわれているのが、中小企業の「駆け込み寺」といわれる、中小企業金融公庫、国民生活金融公庫、商工組合中央金庫などである。奥田日本経団連会長が事実上指揮している経済財政諮問会議がアドバルーン的にあげた青写真では、政府関係金融機関八公庫を、海外向けの国際協力銀行と国内向けの政策投資銀行の二機関に統廃合すると描いている。中小企業金融公庫や国民生活金融公庫は当然に廃止される。今まで行ってきた中小企業に対する融資は民間銀行に移す。ただ起業のための金融(ベンチャー企業設立の融資など)だけは、政府金融機関から貸出をするという構想のようだ。
当面、郵貯銀行からの融資があるかもしれないが、融資のノウハウをほとんど持っていない郵貯銀行が、普通銀行に切り捨てられていた中小企業金融で順調にやっていけるとは考えられない。普通銀行も従来の不動産担保主義の融資から、企業の採算性や将来性重視の融資に転換している。もうかる企業には大小を問わず、蜜にたかるアリのように集まってくるが、大企業にしぼられてギリギリの経営を続けている中小零細企業の方には見向きもしないだろう。中小零細企業が、これまで「貸し渋り」や「貸しはがし」でどれだけ苦しめられてきたか、衆知のことではないか。
この「失われた一〇年」、中小零細企業は政府系三機関によってかろうじて助けられてきた。「命綱」とも言うべき中小企業対象の政府金融機関がなくなれば、中小零細企業の「突然死」が頻発すると識者は警告を発している。
わが国では、中小企業が企業の九九%を占めている。苦労の多い下請けの仕事をし、あるいは末端の流通をにない、多くの労働者に職を提供している。それだけでなく、地域社会の末端の担い手でもある。だが、近年は中小零細企業の将来への不安から家業をつぐ子弟が減っている。商店街は「シャッター通り」となり、地域の文化、祭、防犯、消防を担う若者も減少し、活動できる単位以下になってしまい、地域コミュニティの崩壊が進んでいる。政府金融機関の統廃合、民営化は、これをさらに加速するものとなる。これを許してはならない。
小泉自民党の構造改革は、これだけではない。社会保障改革、三位一体改革、公務員改革、農協改革、消費税引き上げや低所得者増税による財政改革など、どれも国民大多数を犠牲にして、多国籍大企業の利益をはかるための改革である。中小零細企業も労働者も農民も、力をあわせて「改革政治」と闘い、これを打ち破らなければならない。