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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2005年8月号
広範な国民連合事務局長 加藤 毅
小泉首相が構造改革の本丸と位置づけた郵政民営化法案に、衆院本会議で三十七人、参院本会議で二十二人の自民党議員が造反した。法案は僅差で衆院を通過したが、参院では十七票の大差で否決された。小泉首相は衆院を解散し、造反議員には対立候補を立ててつぶしにかかった。これに対抗し、造反議員の一部が国民新党、新党日本を結成した。自民党は九三年以来の大分裂となった。
郵政民営化法案のねらいは、三四〇兆円の郵貯・簡保の金融資産を日米の金融資本に新たなもうけ口として開放すること、郵便事業の不採算部分を切り捨てることにある。公共性や国民の利便性を優先する国営事業だからこそ、過疎地の郵便局も採算を度外視して維持されてきた。利益優先の民間企業になれば、採算のとれない郵便局はいずれ廃止される。全国一律の郵便料金がいつまでも維持される保証はない。郵政民営化は国民生活に深刻な打撃を与える。だから、われわれは郵政民営化法案の否決を歓迎する。
自民党の分裂はこの党の内部矛盾の発展の結果である。国民の中では一握りに過ぎない財界のための党が長期にわたって単独政権を維持できたのは、中小商工業者や農民などの利益にもある程度配慮し(同時に犠牲も押しつけてきた)、自らの支持基盤にとりこんできたからである。つまり、自民党は大企業の利益と中小商工業者や農民の利益という対立する要因を内部にはらんでいるのである。経済が高成長を続けている間は、この矛盾はさほど激化しなかった。だが、八五年のプラザ合意以降、自民党政権は米国の対日要求に屈し、国際化、市場開放、規制緩和などの構造改革を進め、中小商工業者や農民などに犠牲を押しつけざるを得なくなった。そうしなければ、対米輸出に依存する大企業の利益を守れなかったからである。その結果、中小商工業者や農民の反発と抵抗が高まり、自民党の支持基盤の崩壊が始まった。九三年、自民党は分裂し、自民党単独政権は崩壊した。
ただし、この分裂は財界が意図したものだった。自民党単独政権の崩壊は不可避と理解した財界は、ひきつづき政治支配を維持するため、保守二大政党制を策した。政治改革=小選挙区制導入である。財界の意を受けて、自民党主流の小沢らが自民党を割って新党を結成した。
今回の分裂も、九三年と同様に、構造改革の推進による中小商工業者や農民など国民各層への犠牲の押しつけが背景にある。だが、九三年と異なり、造反議員の行動は財界の意に反したもので、支持基盤の崩壊を恐れる自然発生的なものだった。それにもかかわらず、これほど多数の議員が造反したことは、大企業と中小商工業者や農民の対立が九三年よりもはるかに深刻なものであることを示している。小泉の行動はこの支持基盤を切り捨て、構造改革反対派を党から追い出し、自民党を多国籍企業の利益に忠実な党へ純化させようとしているように思われる。
勤労諸階層に展望はあるだろうか。野党第一党の民主党も、自民党離党組が主導権を握る財界のための党である。自民党も民主党も財界が要求する構造改革の推進派であり、対米従属=日米基軸の安保外交政策、軍事大国化政策の推進派である。どちらを選んでも展望はない。それにもかかわらず、中小商工業者や農民は自民党、連合の労働者は民主党の支持基盤に組み込まれ、耐え難い痛みを押しつけられてきた。
唯一、展望の開ける道は、犠牲の押しつけに泣き寝入りせず、自分たちの力に依拠し団結して闘うこと、そして、同じように犠牲を押しつけられている他の諸階層と連帯し、労働者、農民、中小商工業者の大連合を実現することではないだろうか。広範な国民連合はこの道を進む。
勤労諸階層に基盤をおく政治家たちには、大連合して勤労諸階層の利益に忠実な政党を形成し、自民党、民主党に代わる政権をめざすことを願ってやまない。